4 同級生
嫌なヤツに会ってしまった。真美は逃げ出したい気持ちを必死に抑えた。
明日香は学校一の美女で、男子や先生からの評判はいいが、性格は最悪だ。何かとマウントを取ってくる。
明日香がニコニコしながら真美に話しかけてきた。
「真美の私服姿、初めて見たけど、そんな安っぽい服が似合うなんてある意味スゴイよね」
明日香が真美の服装を一瞥して言った。明日香の取り巻きがクスクス笑う。真美は顔を真っ赤にして俯いた。
明日香がジュニアを見て大袈裟に驚く。
「ねえねえ、その隣の人って、まさか真美の彼氏?」
「あ、ゴメン。そんな訳ないか。真美にこんなカッコイイ彼氏がいる訳ないもんね」
そう言って明日香が笑った。
真美が黙って俯いていると、ジュニアが真美に聞いた。
「真美さん、この人って誰ですか?」
「……同じクラスの村下明日香さんよ」
真美が俯いたまま答えた。明日香が笑顔でジュニアに声を掛ける。
「初めまして。真美と同じクラスの明日香です。これから私たち有名なパンケーキのお店に行くんだけど、一緒にどう?」
「真美さんも行くんですか?」
ジュニアが真美に聞く。真美が頭を横に振る。
「ううん。私は行かない」
それを聞いた明日香が、ジュニアに近づく。
「そんな地味で大して可愛くもない子なんか放っておいて、私たちと遊びに行きましょうよ」
明日香がジュニアにそう言うと、お目当ての男子によくやるカワイイ笑顔でジュニアの顔を見た。
ジュニアは面倒そうに明日香に答えた。
「真美さんが行かないなら、小生も行きません」
そう言うと、ジュニアが真美の方を向いてニッコリと微笑んだ。
「それに、真美さんは美しいですよ」
真美が驚いて口をパクパクしていると、ジュニアが真美の手を取った。
「さあ真美さん、そろそろ行きましょう。小生、今の話を聞いてパンケーキが食べたくなってきました」
ジュニアは、呆気にとられる明日香に目もくれず、真美の手を引っ張りスタスタと近くのカフェに向かって歩き出した。
† † †
「うーん、このパンケーキ絶品ですね!」
カフェのテーブル席。ジュニアはメイプルシロップをタップリかけたパンケーキを美味しそうに食べながら言った。
真美は、ジュニアの向かいに座り、ホットココアを一口飲んだ。
『それに、真美さんは美しいですよ』
さっきのジュニアの言葉が頭に浮かんだ。
真美は、明日香のように美人ではなく明るくもない。
そんな自分のことを、まさかジュニアが美しいと言ってくれるなんて思ってもみなかった。
「あの、さっきはありがとう……」
真美が小さな声でジュニアに言った。ジュニアがキョトンとした顔で言う。
「え、何のことですか?」
「ほら、さっき会った女子のグループの誘いを断ってくれたでしょ」
「ああ、あれですか。小生が真美さんから離れる訳ないですよ」
ジュニアがパンケーキを口に運び、モグモグしながら言った。契約上の義務みたいなものだろうが、そう言ってくれてちょっと嬉しかった。
「あと、お世辞でも私のことをあんな風に言ってくれてありがとう」
真美が少し照れながら言った。ジュニアが不思議そうな顔をした。
「え? お世辞じゃないですよ。真美さんは美しいですよ」
ジュニアはそう言うとニッコリ笑った。
悪魔のくせに天使のようなジュニアの笑顔に、真美は頬を赤らめた。
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