15 相談①
翌朝、真美とジュニア、優花が一緒に登校すると、教室で人だかりが出来ていた。
「ねえ、何かあったの?」
優花がクラスメイトに聞くと、クラスメイトが興奮した様子で答える。
「明日香ちゃんが新しいアイドルグループのセンターに選ばれたんだって。今度テレビに出るらしいよ。凄いよね!」
明日香が真美たちに気づいた。明日香は真美を見て鼻で笑うと、ジュニアの前に歩いて来た。
「ねえ、ジュニア君。私アイドルになったんだ」
「そうなのですね。おめでとうございます」
ジュニアが何故か少し悲しそうな顔をして言った。明日香が話を続ける。
「今度、私のグループと一緒に活動する男性アイドルグループのオーディションがあるの。ジュニア君、受けてみない? 絶対にセンター取れるよ?」
「いえ、小生は遠慮しておきます」
ジュニアがちらりと真美を見て言った。明日香が怒った顔で言う。
「そんなに真美のことが気になるの?」
「はい。小生は真美さんを大切に思っています。離れる訳にはいきません」
ジュニアがごく自然に答えた。男子の誰かが「ヒューヒュー、お熱いねえ!」と茶々を入れた。
それを聞いた明日香が、真美を睨み付けた。真美は慌てて目をそらす。
明日香が真美に何か言おうとしたとき、担任が教室に入ってきた。明日香は舌打ちをすると、自席に戻って行った。
† † †
昼休み。真美は優花と机を向かい合わせにして弁当を食べ始めた。先日同様、2人の机の横にジュニアが机をくっつけてきた。
優花が教室内を見渡し、明日香とその取り巻きがいないことを確認すると、小声で真美に話し掛ける。
「明日香はジュニア君を真美に取られたと思ってるのかも。あの睨み、凄かったもん」
「困ったなあ。こっちはそんな気ないのに……」
「まあ、相思相愛とはいえ、親が決めた許婚だもんね。真美に責任はないよね」
「だから、そういうのじゃないんだって! ジュニア君もちゃんと言ってよ……あれ、ジュニア君?」
真美が不思議そうにジュニアを見た。いつもならニコニコお弁当を食べるジュニアだったが、今日は浮かない顔をしていた。
「ジュニア君、またトイレに行きたいの?」
真美が心配そうに聞いた。ジュニアがハッと気づくと、ニッコリ笑って答える。
「トイレは今のところ大丈夫です。ですが、少し気になることがありまして……」
そう言うと、ジュニアは再び浮かない顔で弁当を食べ始めた。
† † †
放課後、真美がジュニアと一緒に部活を終えて学校から駅へ向かっていると、ジュニアが真美に声を掛けた。
「真美さん、エノク先生の連絡先って分かりますか?」
「エノク先生? ああ、あの強面だけど優しい天使さんね。うん、スマホに登録してるから分かるよ」
「ちょっと相談したいことがあるって連絡してもらってもいいですか?」
「え? 悪魔が天使に相談してもいいの?」
驚く真美に、ジュニアが申し訳なさそうに答える。
「小生から連絡すると怒られそうなので、真美さんからの相談ということにしてもらえれば」
「もう……分かったよ。何て言えばいいの?」
真美は苦笑ながら鞄からスマホを取り出した。
真美がジュニアに言われたとおり「悪魔の契約更改のことで相談がありまして」と天使にメールすると、すぐに返事が来た。前回と同じ喫茶店で待ち合わせすることになった。
真美とジュニアは、駅前通りの喫茶店へ向かった。
続きは明日投稿予定です。




