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13 襲撃

 突然、猛烈な炎がジュニアを襲った。ジュニアの姿が炎に包まれる。


「ジュニア君!」


 真美が叫んだ。炎が消えると、そこにジュニアはいなかった。


「なんだ、呆気ない」


 真美の前に、ごく普通の中年男性が現れた。バーコード頭で灰色のスーツを着ている。何故か()の長いフライパンのようなものを持っていた。


 バーコード男が営業スマイルで真美に話し掛ける。


「お嬢ちゃん、あんたの契約者はもういなくなった。俺様と(ちぎ)りを結ぼう。あんなヒヨッコよりも、もっともっと凄い願いを叶えてやるぞ」


 真美は何も答えない。バーコード男が満面の笑みで真美に話し続ける。


「さあ、そこから出ておいで。怖がらなくていい。おじさんは優しいからね」


「イヤ!」


 真美は叫んだ。バーコード男がため息をついたかと思うと、突然フライパンのようなもので真美の周りを囲む光の壁を殴り付けた。


 ガキンッ!


 光の壁から輝く粒子が飛び散ったが、壁はびくともしなかった。


 バーコード男が舌打ちをした。


「チッ、あのヒヨッコ。どんだけ強い想いなんだよ……ほら、出ておいで。悪いようにはしないから」


「ジュニア君……」


 真美はその場にしゃがみこんだ。バーコード男が笑う。


「あいつはもう消えたぞ。俺様の炎に勝てる奴はそうそういないからな。ほら、早く出ておいで。おじさん、そろそろ怒っちゃうぞ……ん?」


 バーコード男が何かに気づいて上を見ると、空から長槍が飛んできて、男の胸から背中の腰の辺りを貫き通し、そのまま地面に突き刺さった。


 バーコード男の頭上には、黒い大きな翼を広げて空に浮かぶジュニアの姿があった。その姿は、羽の色を除けば、まるで絵画の天使のように感じられた。


「お前は……まさか!」


 バーコード男が驚き叫ぶと、空から大剣を手にしたジュニアが舞い降りた。男の背後に立つ。


 ジュニアは大剣を重そうに振り上げた。


「魔界にお帰りください。先輩」


 ジュニアが大剣を振り下ろし、バーコード男を袈裟斬(けさぎ)りにした。


「くそっ、くそー!」


 バーコード男が叫びながら消えていった。


「あ、危ないところでした……」


 ジュニアが肩で息をしながら(つぶや)いた。天使のような黒い翼が消え、大剣や長槍もいつの間にか消えていた。


 ジュニアが指をパチンと鳴らすと、真美の周りを囲んでいた光の壁が消えた。


 その直後、ジュニアはその場にへたり込んでしまった。


「ジュニア君!」


 真美がジュニアに駆け寄り体を支える。


「す、すみません。真美さん。今日は力を使い切ってしまって……お母さんのご飯を食べればすぐに元気になりますので」


「ジュニア君、ありがとう!」


 真美が泣きながらジュニアにお礼を言った。ジュニアが申し訳なさそうに答える。


「怖い思いをさせてすみませんでした。もう少ししたら立ち上がれますので、家に帰ってモリモリご飯を食べましょう」


「うん!」


 真美が涙を拭きながら笑顔で(うなず)いた。


 辺りの霧はいつの間にか消えており、通行人が不思議そうに真美とジュニアを見ながら通り過ぎていった。

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