あれが過ぎると申します 傀
シリーズ『妖異譚 あれが過ぎると申します』 その廿七
初出:カクヨム https://kakuyomu.jp/my/works/16816452219772069292/episodes/16817330657638445953
袋徑なる傀儡嬪
ちくとおぢやれや 傀儡嬪
泣いておぢやるか さてはまた――
烏の豌豆散果てゝ
いげどろ茨咲く徑は
藪くろ深く閉ざゝれし杣人も通はぬ袋徑
藪亦藪の奧も奧 姉と妹の癲狂が
二人ながらに住まひする邸ありとぞ野衾の鳴く
圍み繁れる槇垣のその蟲喰の枝の末に
漫ろ鈴生る人形は妹の業か姉なるか
吊られ朽ちゆく傀儡嬪
皈らぬ女中の骸にや
泣きの淚の溜息に千載盡きぬさゝめごと
古りてけさめし白絹の曇る顏苔じみて
昔榮華の綾錦 今は襤褸とわゝけたり
垣內見れば破屋は人の氣配も梛の木の
ほとりに立てる祠には
怪しや點る燈明と新しげなる供物
菝葜の葉を皿としてか黑に熟るゝ狗枇杷の
あるかなきかにあえかなるその實も僅かふたつみつ