#58 TS美少女に神は論説する。
お待たせしました。
「あれ、わたし……」
「やっぱり思った通りだ」
身体がまた光に包まれたかと思うと、さっきの女の子の姿になったレイ。たぶん人格も切り替わったのだろう、雰囲気の変化を感じさせる。
その様子をミライは私の隣に立ちながら、いかにも予想通り、といった顔で見ていた。
さっきミライから聞いた話では、レイはいわゆる二重人格の状態になっているらしい。
だから魂……?がなんかヤバくなっていて、それが良くないからミライが直接直しに来た、という訳のようで。
……私には正直魂がどうのこうの〜とか全然わからないから、その辺の専門家?のミライにお任せしちゃおうと思う。
ミライが言っているのだからたぶんきっとそんなもんなのだろう。この人……?だったら信用出来る。
……今回の事態は、私が招いたことだ。私が軽率に魔法を使ったりしなければ、今そう思っても仕方ないってわかってるけど、どうしても思ってしまう。
ミライは「僕だって想像してないイレギュラーなんだ。仕方ないさ」って言ってくれたけど、だからと言ってなにも出来ない私が変わるわけじゃない。
ミライは今回のようにイレギュラーが発生しても、対処方法を知っていて、実際に対処出来る。でも私は出来ない。なぜなら知らないから。
例えるなら、バイクとかロードバイクに乗るけど、メンテナンスや壊れたときの対処法は知らない……そんな感じなのかな。
もしミライが来てくれなかったら、私は今も途方に暮れていたに違いない。
とにかく、今回のことは私が招いたにも関わらず、最後まで私がなんとかすることが出来ないというのがすごく歯がゆくて、惨めで。
そんな無力感を胸に、私はミライの様子を見守るのだった。
◇◇
私はこのことを期にして魔法の使い方を見直すと同時に理論の研究も行うようになる。
◇◇
◆
ユナの心の中を読心で覗いていた僕は思う。
(そこまで思い詰めなくてもいいのに)
と。
確かに自分のせいで……と思う気持ちもわかる。
だけど、目の前にいる今は少女の姿の彼(彼女)のことは、どうしようもなくイレギュラーなのだ。
それこそ、神である僕が降臨するレベルで。
というか今この世界でユナ以上に魔法が使える人なんてほんの数人程度しかいないというのに。
そもそもだ。ユナになる前の彼が死んだときに、詳しい説明もなにもなしでいきなり送り出した僕が悪いだろう。
いや、言い訳させて欲しい。あのときはいろいろな処理に追われていて余裕がなかったんだよ。
……なんて言っても許される訳じゃないのはわかってるけどさ。
とにかくあのダ○ソとかいう地球のゲームもびっくりな説明不足と理不尽具合。
ユナはなんとなくで魔法を使いこなして上手く暮らしていたけど、それだって彼女の適応能力が高く何気に器用だからにすぎないのだ。
……あとで取扱説明書的なのでも作って渡そうか?
……いや、それよりも効率的に出来ることがあるじゃないか。
うん。それがいい。そうしよう。
きっとユナも喜ぶはずだ――――――
◇
以上の思考を0.1秒適度で行う。
なんせ僕は神だからね。そんなことは造作もない。なんならもっと早くもできるけど、別に今必要ないし。
さて、とりあえず目の前の彼(彼女)のことをなんとかしてしまうとしよう。
やっぱり見たところ僕の予想通りに魂が分離していて、それぞれに人格が宿ってるよう。
どうやら今は2つ目の魂の方が表層に出てきているみちいだね。便宜的に、今の彼女のことを「レイちゃん」とでも呼ぼうか。となると、さっきのは「レイくん」になるのかな?
えっ、魂が新しいものだとしたら個人も別になるはずでは……って?
なかなかいいところを突いてくれるじゃないか。
確かに、それの場合もあるよ?ただ今回のはそれじゃない。
見たところどうやらレイくんちゃんの場合、もともと1つだった魂が別れて2つになった、かなり特殊なケースの様なんだよね。わかりやすく言えば一卵性双生児みたいなものだ。
ただ、それだけならかなり稀だけどまだあることなんだ。問題はここから。
ほとんどの場合魂は容器の中に入っている。また地球にあるもので例えるならば、ガチャガチャのカプセルを想像してくれればわかりやすいかな?
「魂が抜けた」とか「幽体離脱」とかはこれが開いてしまったり緩んでしまったりして起きる。
レイくんちゃんはなんらかの理由によって、その空カプセル、魂の容器がもともと2つ入っていたんだ。そして、1つめに入っていた魂が分離したときに2つめの容器に入ってしまい、今回の事態になった訳なのである。
この2つの「稀」が重なり合った結果が今回の顛末なのだ――――――――
◇
ふと僕の横にいるユナに目を向けると、彼女は何やら難しげな顔をしていた。あ、ちなみにユナも(脳内に直接)聞かせてたから、内容はあらかた把握はしているはず。
「だいたいわかった。それで、ひとつ聞いてもいい?」
「なんだい?」
「私の魔法が失敗?した原因。あれがなんなのか知りたいの。今まで魔法が私の意思に反して、制御が効かないなんてことはなかった……」
そう言って俯くユナ。これは本気で気にしているらしい。……いや、それもそうか。この世界を魔法の力だけで生きてきたのだ。ユナ自身も、自分の強大な力を認識している。だからこそ、恐れているのだろう。
僕は答えを知ってる。そして、ユナも知っている。ただ、ピースの向きが違うだけなのだ。
「「私の意思に」これが全てさ。魔法というものは、その結果をもたらさんとする意思が重要な役割を果たすんだ。だから、強く結果を意識すればするほど、効果はより忠実なものになる。
願掛けだったり祈りだったり詠唱だったりするのは、その補助をするためだね」
「その意思があまりにも強大だった場合には、既に発動された魔法に干渉しえる。おそらくは、彼、そして彼女の意思、それが介入したとみて間違いないだろう。」
「僕には詳しいことまではわからないけど、たぶん「戻りたくない」とでも強く思ったんだろうね。ユナは意思を持って魔法を発動させた。でもその意思が意思によって上書きされた、そういうことなんだと思うよ。その上書きによって、魔法の結果がねじ曲がった、そういうことなんだ。」
「それって、普段から起こりえることなの……?」
「いや、そうそう起こらないとは思うよ?ただ、レイくんちゃんの場合、魂2つ分の干渉だったからね。元々の思いが強力だったのに加えて、これはあんまり知られてないんだけど、魂が2つあると×2じゃなくて^2になるんだ。だから、今回のことが起こった」
「精神系魔法の抵抗と似てるかな?
但しユナの場合だと基礎スペックが高いから、相手も相当の手練じゃないとそれは難しいと思うけどね。普通の使い方をしてればそうそう起きることじゃないのさ。実際、レイくんちゃんのだって魔法を消すんじゃなくてあくまで結果をちょっとねじ曲げただけにすぎない」
「だから今はあまり気にしなくていいんじゃないかな?」
僕がそう言い終えると、ユナの表情がちょっとだけ和らいだような気がした。
◇
さて、長くなっちゃったけどいよいよ取り掛かるとしよう。
まずは、ちょっと強引だけど今は隠れている「レイくん」の人格も引っ張り出さなくては、話が進まない。
どうでもいい存在なら僕が勝手に「修正」してもいいんだけど、なにせイレギュラーな上にユナのかけがえのないもの友だちなのだから慎重に行わないといけない。 まぁ僕は神だし、圧倒的ごっどぱわーでねじ伏せることも出来ると思うけど、やっぱりヒトの意思は尊重したいしね。
そのためには一旦両方に出てきて貰って話をするのが早いのだ。双方が納得の上であれば、抵抗もなくスムーズに作業が捗るだろう。
たとえどんな決断をしたとしても。
またまた説明回でした。
次回には終わらせたいね。
矛盾があったりしたら教えてください┏○ペコッ




