#56 TS美少女は意図しない魔法に戸惑う。
おまたせしました。
今回で親友編終わるとか言っておいて全然終わらなかったです
気が済むまでレイの撮影を楽しんだ私は、今は写真のチェックを行っている。
「レイかわいいなぁ……あ、後で現像しようかな」
そうして一通りチェックが終わった私は顔を上げ、壁に掛けてある時計を見て驚愕した。
「もうこんな時間じゃん!?」
慌てて窓の外を見てみると、外は既に日が沈み、森の中ということもあって辺りはもうかなり暗い。
うわぁ……やらかした……。
レイを撮るのに夢中になっていて時間が経っていたことに全然気づかなかったよ……。
「時間的にも、そろそろお開きかな」
私はひとりそう呟く。
たしかレイの家は両親が共働きで、両親ともに帰ってくるのは20時頃だったはずだから、今ならたぶん親はまだ帰ってきてないはず。
「どこ行ってたの?」「異世界」なんて言ったっては?ってなるだけだろうし、ここは両親が帰ってくる前に帰るべきだろう。
……とにかく、レイにそろそろ帰る時間だということを伝えなきゃ。
そう思って私はレイの方に向き直る。
そこには、さっき着せられたふりふりのスカートをつまんで持ち上げながら、鏡に向かってポーズを取るレイの姿があった。
「うーんオレ、かわいいっ☆」
「そうだった忘れてた」
◇
「えっ……もう終わりなの……?」
私が帰る時間だということをレイに伝えると、レイは涙目になってふてくされていた。
……かわいい!かわいい、けど、だめ!
「やだ。帰りたくない」
「でも、ほら、そろそろ帰らないと親帰ってきちゃうし……」
「それはわかってるけど……」
「そもそもなんで帰りたくないの?」
私はレイにそう聞いてみる。
対してレイから帰ってきた答えは、だいたい私の予想通りのものだった。
「……帰るってことは、終わりってことでしょ……?この姿……嫌だ……戻りたくない!!」
そう言うとレイはまたぐすぐすと泣いてしまった。その姿は女の子そのもの。
思ったより深刻に染まってしまったらしい。こうなるかなーなんて思ってはいたけど、まさかここまでとは。
……まぁ、正直気持ちはわかるけどね。私だって、もう絶対に戻りたくないしさ。
……でも、向こうで死んで転生した私と違って、レイには日本での生活がある。
残念だけど、元に戻ってもらわないといけない。
今のレイは、頭まで女の子になっちゃってる。完全に染まり切る前に戻さないと危ないだろう。
「ごめん、レイ」
そう呟いた私は、魔法を唱えた。
眩い光がレイの身体を包み込んでいき――――――
◆
戻らなきゃいけないって、わかってた。
でも、オレは戻りたくなかった。
楽しかったんだ。女の子でいることが。
◇
ユナが魔法を唱えた。
オレは「オレ」に戻るらしい。
それはそれでいいんだ。向こうでの生活もある。
「オレ」はそう思っていた。
だけど、オレの中に芽生えた「わたし」は、そうではなかったみたい。
ユナの魔法が身体を包み込んでいく。
あぁ、これで終わり。戻るんだな。
「オレ」はそう思う。
「わたし」は思った。
「嫌だ!消えたくない」
その時だった。
バチッ……
バチッバチッ……!
バチッバチッバチッ……!!
◆
「うそ……」
私はポツリと呟く。
魔法がレイを包み込んだかと思うと、魔法が音を立ててバチバチ言い出した。
……まさか、失敗した?いや、そんなことはありえない。だって私の創造魔法は「望んだ結果になる」魔法なのだ。
私が意志を持って発動した以上、その結果は間違いなく想像したものになるはず。それなのに。
そう考えている間にも、バチバチ音は更に強さを増していき、レイを包み込む光も眩いばかりのものとなっていた。
「……これって……魔力のうねり……?」
私はこれと同じような現象を知っている。前に爆裂魔法を打った時のような、魔力が昂ったときに空間をも振動させる、その現象にとてもよく似ていた。
危ない。そう思って私は魔法をキャンセルしようとする。しかし、何故か止めることが出来ない。
まるで魔法が私の意志を離れているようなのだ。
こうなってしまっては、私にはできることがない。あるとして、せいぜい成り行きを見守るぐらい。
下手に触った結果レイの身になにかあっては元も子もないしね。
「レイ……」
未だ魔法に包まれたレイを見て呟く。
……もし、レイの身に何かあったら、私がなんとかしなきゃ。レイをTSさせたのは私なのだ。……こんなことになるなら、軽率にTSなどさせなければ良かったかもしれない。
私は未だ煌々と輝き続ける魔法の光を、じっと見つめていた。
◆
「レイ!レイ!!」
数分後。
魔法の光が消えたあと、レイは男の姿に戻ってぐったりとしていた。
私はレイに駆け寄る。幸いにして、程なくレイは目を覚ました。
「ユナ……」
「大丈夫!?なんか変なとことかない!?」
そう言いながら、レイの身体を見回す。
……外見的に、変わったところはない。
私の意に介し無い魔法の変化があったんだし、絶対になにかが起こったはずなんだけど。
「そうだ」
あることを思いついた私は、レイに魔法を唱える。
「ステータスオープン。ターゲット、レイ」
私はそう言うと、レイのステータスを見る。
うーん、別に変わった様子はなさそうなんだよなぁ……
「え……」
……めちゃくちゃあったわ。
……どうやら、再TSという点では、一応は成功したみたい。
……この意図せぬ結果が成功と呼べるのかはさておいて。
「おい……なにがあったんだ?」
レイが少し怯えた表情で聞いてくる。
このことを伝えたらどんな顔をするだろう。
……まぁ今のレイなら、きっと喜ぶんじゃないかな。
私は意を決してレイに伝える。
レイのステータスに、「自由意志可逆TS」が追加されていたことを。




