#54 TS美少女はもうひとりのTS美少女を生み出す。
レイは私の出した姿見の前で立ち尽くすと、うっとりとした表情を浮かべていた。
きっと鏡に映る自分の姿に見とれているのだろう。
なにせ今のレイは美少女なのだ。
レイはおもむろに右手をあげる。
すると、鏡の中のその美少女も右手をあげる。
左手をあげれば、左手が。
「これが……俺?」
ふと呟いたその声も、まるで鈴のようにかわいらしく、透き通るような声。
「俺……かわいい……!」
そう言ってはしゃぐレイを、私はスマホのカメラでばっちりと記録しながら微笑ましく見守っていた。
◆
「じゃあ、試してみる?」
俺がぽつりと漏らした空想
それにユナが反応する。
……今、なんつった……?
「そんなこと、できるのか……?」
言ってみたはいいものの、まさか本当に出来るなんて夢にも思っていなかったんだ。
そもそも、俺は男だぞ?
死んで転生して新しい身体になったユナならまだしも俺が本当にTSなんてできるのか?
「できるよ?」
俺の表情を読み取ったのか、ユナが言う。
……というかそんなにフッ軽でいいのかよ?
「うどんをそばに変更できます」ぐらいのノリでTSできるとか逆に大丈夫なのか?
「大丈夫大丈夫。それにほら、もう既に1人性転換させたげてるしさ。……まぁノスティの場合は事情がちょっと特殊なんだけどね。」
そう言いながらユナはスマホを取り出すと、1枚の写真を見せてくる。
そこに写っていたのはボブっぽい黒髪の女の子。格好からして冒険者というやつだろうか。結構かわいい。
俺もTSしたらこんなにかわいい女の子になれるのかなぁ……
…………
……
まっまぁ、いろいろ聞きたいことはあるが?
既に実績があるなら悪くないんじゃないか?
それよりも創作でしかないと思っていたTSを体験できるなんてまたとないチャンス。
それをみすみす逃すなんていうことはあってはならないよな!
「俺を女の子にしてくれっ!」
◆
その言葉を待っていたとばかりに私は準備に取り掛かる。
……とは言っても、魔法でチャチャッとやればいいだけだから準備という準備はないんだけどね。
なんでそんな張り切ってるのかって?
そりゃあ面白そうだからに決まってるじゃん。
「ショートカット」でいつもの魔女服に着替え、アイテムボックスから杖を取り出して構える。
……別に必要はないんだけど、まぁ、気分的な問題だ。ほら、この方がなんとなくテンション上がるじゃん?
「それじゃあ、いくよー?」
「あ、あぁ……!」
私が魔法をかけると、レイの身体を光が包み込んでいく。
そして冒頭に至る、という訳だ。
◆
俺が鏡を眺めながらぼーっとしていると、ユナが声をかけてきた。
「とりあえず服脱いで?」
「…………はぁ!?」
俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
……その声でさえも、ものすごくかわいかった……じゃなくて!
「いやだって、自分の格好もう一度よく見てごらんよ」
そう言うとユナは再度俺の方に姿見を向けてくる。
そこに写っていたのは端正な顔立ちをした美少女。
……だぼだぼの、男物の服を着た。
……
……
……あー、確かにこれはいかんな。けしからん。
今の俺の格好は、まるで彼シャツを着てるみたいになっていて、これはこれで需要はありそうだが今は求めているのはそれじゃない。
せっかく美少女になったのだ。せめて普段は着られないようなかわいい服を着たい。
「……わかった」
そう言って俺は着ていた服を脱いでいく。
ズボンとTシャツ、それに履いていたトランクスを脱いだところで、俺はついに全裸になった。
全裸ってことは、つまり、いろんなところが見えちゃう訳で。
色白で日焼けひとつしていないきめ細やかな肌。
触ってみると柔らかく、もちもちですべすべしている。
目線をもう少し下げるとそこには、ふたつの慎ましくも存在を主張するモノが。
俺は―――
「ストップそれ以上はR18だからっ!!」
◇
◇
◇
服を着るのにはユナのかけた魔法で一瞬だった。
やっぱり魔法って便利すぎない……?
というか、着せることができるなら脱ぐ時だって魔法でできたんじゃ……一瞬そう思ったけど、それはそれで自堕落すぎる気がして口には出さないことにした。
え……?さっきはどうしたかって……?
……したよ。いろいろと。
……正直、めっちゃ良かった。
いや、なにがとは言わないけどさ!!
……そうじゃなくて。
ちなみに今着ているのは、噂に聞くワンピースと言うやつなのだろう。
下がスカートになっているのが慣れない感覚で少し落ち着かない。
いつの間にか付いていたブラジャーとパンツは、最初こそ慣れなかったものの、今では逆になんだか安心感を与えてくれる。
ちなみに胸はユナいわくCだそう。
オレにそのことを伝えるときに、ユナが小さな声で「負けた……ちっ」って呟いていたのは聞かなかったことにする。
身長は、男の時からだいたい10センチぐらい低くなっている気がするから、155〜160センチぐらいだろうか?
隣にいるユナよりも、少しだけ背が高い。
そういえば、ユナの髪は綺麗な白銀だがオレのは黒髪だ。お互いの性癖が透けて見える。
色は変わらないされど、さらさらとしたロングヘアで触っていると気持ちいい。
オレは改めて姿見を覗き込む。
そこに写っているのは美少女。
自分で言うのもなんだけど、それぐらいには美しい。ちゃんとした服を着たお陰で、より一層愛らしさが増している。
オレは思わずくるりと一回転してみる。
スカートの布と共に、
女の子特有の甘い香りがふわりと広がった。
いいねや評価頂けますと嬉しいのでお願いします。
来週末までには次話更新したい




