#53 TS美少女と親友は再会する。
お待たせしました。
なんか以前と似たようなタイトルになってしまった……。
RAINのメッセージを見てすぐ俺は○○公園に向かって走り出した。
○○公園とは、近所にある大きな公園だ。
俺たちが小さいころよく一緒に遊んだ、思い出の場所でもある。そういえば最近は幽霊が出たって噂もあるな。
……それにしても、さっきからの出来事は本当に現実なのだろうか。
もしかして、これは夢なのでは?
そう思った俺は走りながら自分の頬を思いっきり抓る。
「いってえぇっ!!」
うん、普通に痛かったわ。
……いい加減認めるしかないな。
さっきからの一連の出来事は、紛れもない、現実なのだと。
俺は考えることをやめると、ただひたすらに、あの丘の向こうにある公園を目指した。
◇
俺が公園に着いたのは約束の時間の10分前。
ちょっと早く着きすぎたかな。
一瞬そう思うも、まだ心構えが出来てないし、やっぱり早めにきて良かったと思い直す。
俺は近くにあったベンチに座るとその時を待つ。
15時20分。約束の時間になった。
……だけどあいつは姿を現さない。
騙された……?いや、この公園はそれなりに大きいから、俺のいる場所がわからないだけかもな。
あらかじめ集合場所とか決めておけば……そういえば昔からあいつ、こういう細かいところがちょっと抜けてたっけ。
懐かしさを感じると同時に、やっぱりあいつなんだなと確信する。
その時だった。
「玲……?」
俺の後ろから、声が聞こえた。
俺は体を捩って、後ろを振り向く。
そこには、思わず息をのむぐらいの美少女が立っていた。
◇
「久しぶりだね。玲」
その少女はゆっくりと口を開く。
……ん?今なんて言った!?
「まさか……■■なのか!?」
俺の知ってる■■は、確かに少しかわいらしいところはあったにせよ普通に男。
ましてやこんな美少女などではなかったはずだ。
「当たり。……ここだとちょっと話しずらいかな?私の家まで一緒に来てくれない?」
少女はそう言って俺の方を不安げに見つめてくる。
身長差から自然に上目遣いになって、それがまたあざとくかわいい。
「……わかった。とりあえず話を聞くよ。
どこに行こうと言うんだ?」
「異世界にある私の家だよ」
そう言うと、手招きして俺を近くまで呼び寄せる。
俺が近くまで行くと、何やら左右を確認する少女。
「よし、いないね……転移っ!」
パシュン…
◇
視界が一気に切り替わる。
辺りは一面緑、緑、緑。
俺はどうやら森の中にいるらしい。
ここはどこなんだ……いや、異世界と言っていたか。
数秒前まで確かに近所の公園にいたはずなのに全く違う場所いるとなると、どうやら俺は本当に異世界に来てしまったようだ。
「玲ー!」
俺を呼ぶ声がした方に振り向いて、驚いた。
「すげぇ……」
そこには木造の立派な二階建の家が建っていたのだ。
ログハウス風のその家はかなりの大きさで、俺の家の1.5倍くらいはありそうだ。しかも建っているのが鬱蒼とした森の中。見渡す限り周囲には何も無い中で、こんな大きな家をどうやって建てたのだろう。
「こっちこっちっ!」
その大きな家の玄関で、あの少女が俺を呼んでいる。
俺は少女の方へと歩み寄ると、玄関をくぐって家の中に入って行った。
◇
「悪い、もう1回いいか?」
向き合ったふかふかのソファに座って出されたお茶を飲みながら、俺は話を聞いていた。
話し方や話の内容から、この少女が■■だってことはすぐにわかった。
そもそも外見からして、■■がいつも熱く語っていた理想の女の子像に同じなのである。
……そこまでは良かったんだが、その後に話されたことが怒涛すぎて俺は理解しきれなかった。
「まず、登校中だった私はトラックに突っ込まれて死亡。そうしたら、それは神様の手違いだったって訳」
「おーけー、とりあえずその神とやらをぶん殴ればいいんだな?」
神様め……人の親友の命をなんだと思ってるんだ。
「いやいや、もう全然気にしてないから!
むしろこの「美少女」の身体とほぼ無敵スキル、それにこれ「創造」」
そう言って、虚空から「お茶の入ったティーカップ」が出てくる。
彼女はそれをひと口すすると、こう続けた。
「この通り万物を創造できるチート魔法、その名も「創造魔法」を手に入れて、今は悠々自適に好き勝手生活してるんだ」
「ということは、だ。もしかしてだが、この家もその魔法で創ったのか……?」
「ご明察」
俺は改めて部屋の中を見渡す。
シンプルながらも落ち着いた空間。
うん、確かに■■が好きそうな感じだな。
それにしても造りはしっかりしている上にあそこにはコンセントまでついて……コンセント?
聞くと、地球の電化製品を動かすためにこれも創ったのだそう。創造魔法ハンパないな。
俺はふと思う。
……なろう系ライトノベルかよ。
「俺TUEEE」じゃん。いや、この場合「私TUEEE」?
「それは私も思ってたけど」
あっ、声に出てたか。
◇
ひと通り説明が終わり、俺は溢れ出す感情を抑えるため出されたお茶をグイッと飲みきると、こう言った。
「なんにせよ、■■が生きててよかった……」
これは俺の本心だった。
しかし、目の前の少女は難しい顔をしてこう続ける。
「うーん……。私が思うに、■■はあの場で死んだんだよ。今、この場で喋ってる私は、「■■の記憶を持った、ユナという美少女」なんじゃないかなと思うんだ」
「関係ない。■■は死んでいなくなったとしても、この世界で生まれ変わって楽しくやってるんだろ?それなら俺も安心した。よければ今後も親友でいてくれ、■■……いや、ユナ」
俺がそう言うと、ユナは涙を滲ませた。
「……違うの、これは、嬉しくて……」
そう言われずとも、俺にはそのことがわかった。
なんせ、泣きながら笑っていたからな。
……その姿が可愛すぎて死にかけたのは内緒だ。
◇
「しかし、TS転生か……」
俺は向かい側に座る美少女、ユナを見て呟く。
TS
それは俺たちの一種の夢であった。俺もそうだが、■■は特にこういうのが大好きで、かつては小説やマンガ、イラストなど様々な媒体を読み漁っていた。
1年ぐらい前、こっそり覗き見た■■のついたーのいいね欄はそれ系ばかりで埋まっていて、さすがの俺もほんのちょっとだけ引いた覚えがある。
そんな■■はTS転生をして、美少女となって今俺の目の前にいた。
そういえば■■の一人称は「僕」だったはずが、ユナの一人称は「私」。些細な変化だと思うかもしれないけど、俺にとっては結構衝撃だった。
それに、いちいち仕草がかわいらしい。
そのことを言うと、少し頬を赤らめて「ありがとうっ」と言う。
……うーん、これは完全にもう堕ちてるな。
TSの醍醐味と言えば、外見とあっていない言動や自分の身体にドキドキするお約束だが、ユナからはそれが全く感じられなかった。完全に女の子に染まりきってる。
「もし俺がTSしたら、どうなるのかな……?」
ふとポツリと呟いた独り言。
それを、ユナは聞いていた。
「じゃあ、試してみる?」
「え」
いいねと感想頂けますと執筆速度が早くなります。
【宣伝】
ふと思いついて何をトチ狂ったか新作書いてしまったので、良かったら読んでみてください。




