#05 TS美少女は黒歴史を回収する。
主人公が4話目にして現実世界に戻ってくる異世界モノが果たしてあるのだろうか。
転移で戻ってきたのは私の拠点だ。
どうやらとっさの時はここに戻ってくるらしい。便利。
それにしてもさっきは失敗したなぁ……
とりあえず服と髪だ。これをどうにかしないといけない。
「魔法創造!身体の汚れとか全部取ってくれるやつ!」
こんなアバウトな注文でも問題ないのが創造魔法のすごいところ。
出来上がった魔法は「クリーン」。
ファンタジーではお馴染みの、汚れとかを取ってくれる魔法だ。
私は早速試そうと服を脱いで魔法を唱える。
「クリーン!」
すると、淡い光が私を包んで、汚れを落としてくれたらしい。すごく便利である。
◇
それから私は創造魔法で服を創ったり、新たなスキルを創ったりして時間を潰した。
さっきは昼間に行ったのがダメだったんだ。次は深夜に行こうと思う。
それらが一通り終わる頃には、日が暮れてちょうどいい時間になった。
私が新しく創ったスキルは3つ。
◇
名前……no name
種族……人間
性別……女
年齢……15
魔法適性……全属性
称号……「転生者」「不老」
スキル……
「創造魔法」
・想像したものを魔力を消費して創る。
・魔法を作ることも出来る。
「強靭な身体」
・例えばトラックに跳ね飛ばされたぐらいなら平気。
「無尽蔵の魔力」
・魔力が尽きない
「転移」
・地球と異世界を行き来出来る。
転移場所は任意に選択できるが、自分がよく知っている場所でないといけない。
「クリーン」new
・汚れを分解し、綺麗な状態にする。
「アイテムボックス」new
・ものを亜空間に収納出来る。容量無制限
「ハイド」new
・相手の意識を逸らすことで相対的に隠れる
◇
とりあえず、異世界系でありがちなものを創ってみた。アイテムボックスは絶対に使える。
玄関前に放置していたテントは邪魔なのでアイテムボックスに収納しておいた。
とりあえず入れたけど、使い道は思い浮かばない。
……キャンプとかで使えるかも……?
そしてハイドは、もし見つかったときに隠れるためだ。今からやろうとしていることはよく考えたら不法侵入である。
いくら私が説明したところで、信じてもらえなければおしまいだ。
だから隠れる能力がいる。
……本当は会って話をして「いきなり死んじゃってごめんね。私は異世界で楽しくやってるよ」ってことを伝えたい。
でも、もし「誰だお前!お前なんかうちの子じゃない」なんて言われたら、と思うと怖くて言えないのだ。
私にも、どうしたらいいのかわからない。
◇
深夜になった。いよいよ決行の時である。
親はもう寝てるだろうから、私の部屋に直接転移する。
「……転移」
シュパ
◇
体感で数日ぶりの私の部屋。特に今のところ漁られた様子はなく一安心である。
というか、私が死んだ日の部屋から何も変わってない。
もしかしたら、両親はまだ心の整理ができてなくて、部屋はそのままにしてるのかもしれない。そう思うと、心が少し締め付けられる。
「…………あ」
そうだ。私がなんのために危険を冒してまで来たかって、私の黒歴史を回収するためである。
早くしないと親が起きてしまう。急がないと!
私は黒歴史の回収に向かうのだった。
◇
とりあえずスマホや見られては困るものは一通りアイテムボックスに収納し、見落としがないかチェックをする。
「うーん……もうないかなぁ……おっ?」
そこには、私が前世で読んでいたラノベ達があった。
……お気に入りのやつ、何冊か持っていってもバレないよな……?
ということで15冊ぐらいアイテムボックスに入れて持っていく。
これ以上だと怪しまれそうだしね。
それにこっちの世界に来れるようになったのだから、お金はかかるけど、新しく買い直す、という手もあるだろう。
一通り確認し終わって、帰ろうかとも思ったけど、最後に両親の顔が見たくなった。
危ないのを承知で両親の部屋に行くと、2人は寄り添って寝ていた。紛れもなく私の両親だったけど、その顔は少し疲れているようで、記憶よりなんだか老けて見える。
「……っ心配かけてごめんね……」
私は1人、声にならない声で呟き、その場を去るのだった。
◇
自分部屋に戻ってきた私は、メモ帳を取りだした。
帰る前にメモを遺す事にしたのだ。
両親がこの部屋を整理した時に見つかるように、わかりやすい位置に挟んでおいた。
◇
やることをやり尽くした私は、転移で家の外に出てきた。
もちろん、部屋から直接帰っても良かったのだけど、少し歩きたくなったのである。
慣れた道をしばらく歩くと、昼間来た公園に着いた。日中と違って静まり返り、風の音のみが響く公園は、どこか不気味にさえ感じる。
街灯の下のベンチに腰掛けると、私は息をついた。
これでもう、思い残す事はない。
……
……なんで、私、泣いてるの……?
この身体は泣き虫だ。
悲しくなったら、涙を我慢できない。
私の静かな嗚咽は、風の音に掻き消されるのだった。
◇
「君、ちょっといいかな?」
私が下を向いていたら、誰かに声をかけられた。
……えっだれ?なに?
「……?今関わらないでほしいんですけど……」
「いやそんなこと言われてもねぇ……」
なにこいつ。怪しい人だろうか?
「そもそもあなただれですk…………!?」
そこまで言いながら私は顔を上げ、そして絶句する。
なんということだ!「怪しい人」は私だったのだ!!
「警察だよ?○○県警××交番の。
君こそ名前は?住所は?なんでこんな時間に一人でいるの?」
「あっ……あのぉ……えぇっと……」
……まずいまずいまずいまずい!!
今の私には名乗る名前も住所も保護者もないし……!えっーとえっーと……
……
私は逃げだした。
しかし、回り込まれてしまった!
「君、止まりなさい!!」
止まりなさい!!で止まる人なんていないでしょ!?
「てっ……転移ぃっ!!」
シュパッ
「きっ消えた……?今の少女、なんだったんだ……?」
◇
それからしばらくの間、その公園には幽霊が出るとの噂が流れたという。




