#44 TS美少女は魔法の力で蹂躙する。
お待たせしました。
私は今、未だかつて無いほどに焦っていた。
目の前で起きているのは大災害。
まだ死者こそ出てないものの怪我人も大勢出ている。
さっきの話からして、ほぼほぼ100パーセントこれは私のせいだろう。
そりゃ毎日爆裂魔法のような魔法を打っていたんだから、確かに言われてみればそりゃそうなるよねとしか言いようがない。
このまま何もしなくてもいずれ戦いは終わるだろう。
もし、これが私のせいだってみんなにバレたらなんて言われるのだろうか。許してくれるだろうか。
『……みんながこれのために失った装備は?時間はどうなる?怪我をしたら?』
……私がいるからには即死でなきゃ対処出来る。
『……じゃあ、もし誰かが即死したら……?』
怖い。
もし許してくれなかったら?
「お前のせいだ」と罵られたら?
ノスティやマリンたちに軽蔑した目を向けられたら?
嫌だ
嫌だ嫌だっ!
そんなの嫌だっ!!
じゃあどうする?
私に何が出来る?
決まってる。
終わらそう。
私の手で。
全てを。
◆
「おいユナ?どうしたんだ……?」
少し話をしたと思ったら突然動かなくなって、かと思ったらゆらりと動き出した彼女に、オレは声をかけた。
「……ます。」
「……って?」
「終わらせます」
「……は?」
そう言うと、ユナは空に垂直に浮き上がり、凄い勢いで加速していく。
「おい……それはどうい…うわッ!?」
それがどういうことか聞く前に、彼女が飛んで行った衝撃波でオレは思わず顔を顰めてしまった。
再度目を開けた時には、彼女は既にかなり遠くを飛んでいた。
彼女の身に一体なにがあったのだろうか……。
◆
「……まったくキリがないな……」
前線に出て他の冒険者たちと一緒に戦っていた俺、エドは、あるとき奇妙なものを目にした。
「なんだ……あれは?」
それは夜空を高速で飛翔してくるなにか。
後ろから飛んでくるということは敵では無いのだろうが、一体……
それが近づくにつれて、だんだんとそれの輪郭が見えてくる。人……女の子……?
「ユナ……なのか?」
それは俺の目の前へと降り立つと、開口一番に、低い声でこう言った。
「エドさん、前線を下げてください」
「そんな無茶な!?」そう言おうと彼女の方を向いて、俺は絶句した。
そこに立っていたのはつい数時間前に話した朗らかで天真爛漫そうな少女ではなく、まさしく魔女と呼ぶのにふさわしいような、冷たい目をした少女だった。
周りの冒険者たちは既に彼女の雰囲気に飲まれてしまっている。
「……どうする気だ?」
「終わらせます。私が」
それこそ無茶、そう言おうとしたが、彼女のその言葉には有無を言わさぬ決意があった。……いや、これは「恐れ」か……?
開戦後1度補給に下がった時はまだ普通だった彼女。
それがどうしたらこの短時間でこうなってしまうのか。
「……勝算は、あるのか……?」
そう問いかけた俺に、彼女は黙って頷く。
もし、彼女がなにかやることによって冒険者たちの負担が少しでも減らせるのならば。
……俺は考えた末、苦渋の決断を下した。
「総員、後退ー!!」
◆
エドさんと話すと、私は前線の上空へと飛び上がった。
しばらくすると、前線の冒険者が後ろに下がって行った。
今私より前には誰もいない。
これは索敵でも確認したから間違いないだろう。
これで、思う存分力が出せる。
今度は魔力を乱さないように、なるべく大規模な魔法は控えよう。
でも、自重しない。
私が、殺る。
◇
「魔法創造。照明弾」
「等間隔で発射」
ヒュゥゥゥゥゥ……
カッッッッッッッッ
バババババンンンンンンンンッッッ!!!!!!
これで明るくなった。
魔物たちが丸見えだ。
「次。魔法創造―――――――」
魔法創造で創るのは、実験でやってきた様々な魔法。
それらをそのままだったり、アレンジしたりしながら、次々に打っていく。
普段は抑えていた魔力も解放して、私は魔物を屠るマシーンと化した。
……あぁっ……最高で最低な気分だ。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
索敵と組み合わせることで誘導ができると気づいてからは、その頻度はさらに上がった。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
魔法を創り出して、それを下の魔物に落とす。
…………
……
◇
何時間たっただろうか。
空がしらみ始めてきた頃、私は魔物たちをほぼ完全に消し飛ばしていた。
空に浮かびながら確認すると、生き残った魔物たちも徐々に森の中へと引き返しはじめ、魔物が溢れてくることはなくなった。
スタンピードが、終わったのだ。
「おわっ……た……?」
私は消えそうな声でそう呟く。
そこで私の意識はぷつりと途切れた。
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