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#43 TS美少女はスタンピードの理由を知る。

 スタンピードが始まってから数時間が経過した。


 私は後方で支援や治癒をしているのだけど、さっきから運ばれてくる人や下がってくる人が増えてるような気がする。

 そう思っていたらまた次の患者さんがやってきた。


「うわっ…」


 私は一目見て、ついそう声を出してしまう。

 だってしょうがないじゃん、誰だって脇腹がぽっかりと抉られて出血しているのを見たらそう思うでしょ……?吐かなかっただけまだマシな方だと思う。


「うぅ……」


 担架に乗せられたその冒険者は、苦しそうに呻く。

大丈夫。今、私が楽にしてあげるから。


「マリンさん、行けますか!?」


 後輩の駆け出しプーリストの子が聞いてくる。

確かに彼女じゃ無理だろう。前の私でもダメだったはずだ。

 でも、今の私にはユナから教わった力がある。


「行けます!処置をしますから離れて」


 後輩ちゃんが1歩下がったのを見て、私は改めて患者の方を向き直す。傷口からいろいろ入っちゃってるだろうなぁ…。


「鎮痛、殺菌、消毒、止血、輸血、再生。

この者を癒せ!ハイ・ヒール!!」


 手際よく魔法を使って処置を行った私は、最後に詠唱をほぼ省略してハイ・ヒールを放つ。ちなみにだけど、本来のハイ・ヒールの詠唱は魔法教本1ページまるまるぐらいの長さがある。だから今の詠唱はほんと自分でも信じられないぐらい短いんだよね。


 患者の冒険者を光が包み込んだかと思うと、傷口から肉が徐々に再生していくのがわかる。……正直ちょっとグロい。


 数分後、光が消えたときにはすっかり傷口は塞がっていた。

起き上がろうとする冒険者に、マリンがそれを制止する。


「傷を治したとはいえ、あれだけの怪我をしていたのだからムリに動かない方がいいわよ」


「あぁ…わかった。……正直もうダメだと思ってたんだ……直してくれてありがとな。」


 再び横になってそう言う冒険者に、私は


「今度は絶対私が治してみせるって決めてたからね。」



 そう言うと私は次の患者の元へと駆けつけた。










 開始から既に数時間は経っただろうか。

さっき遂にやらかしちまった。


 ソロでの戦闘中に油断して左手を怪我してしまい、なんと運が悪いことに使い物にならなくなっちまった。今は少しだけ後方の岩陰に隠れているが、ここも危険な前線であることに変わりはないだろう。


 ……一旦戻って診てもらうか?だがそれだと前線からの往復分でかなりのタイムロスになる。


 そう思った時、俺は左腰にポーションをぶら下げていたことを思い出す。ただ、この怪我なら普通の治癒ポーションは効かないだろう。


 そう、普通の(・・・)ならな。


 俺は右手で左腰をまさぐると、幾つかあるうちの1つを手に取って蓋を開ける。


「これなら、あるいは……」


 そう。さっき開始前に謎の少女から貰った高品質なポーション。それを俺は一気に飲み干す。


 今まで飲んだことの無いような不思議な味を感じたと思うと、急に体が熱くなる。これは効いているんだろうか……?


 少しすると熱が体全体から左手に集中する。

まるで左手だけ燃えているようだ。もちろん熱を持ってるだけで痛くも痒くもないのだがな……



 そして数分後。


「動く……動くぞ……!」


 俺はまるで何事も無かったかのように傷口が塞がり、再び動くようになった左手を見て感動すら覚えていた。


 あの少女の実力は本物だったって訳だ。

後でもう一度感謝しないとな。


 とにかく、これでまだ俺は戦える。

大切な街を、故郷を守るためだ。もう油断はしない。


 そう思うと俺は立ち上がり、再び最前線へと飛び込んで行った。









 スタンピードが始まってから数時間、私は後方で支援や治癒の手伝い、ポーションの増産をしたりしていた。


「ユナ、回復ポーションが切れちまってな……まだあるか?」


 そう声をかけて来たのは、ギースさん。エドさんと一緒にいるのかと思ったんだけど……


「別に同期だからって一緒に戦ってばかりってことはないさ。オレはオレ、あいつはあいつでやった方がお互い自由に動ける」


 私はギースさん用に回復ポーションを創りながら相槌を打つ。


「なるほど……はい。出来ました」


 そう言ってポーションを渡すついでに、私はギースさんに1つ気になっていたことを聞いてみることにした。


「あの、ギースさん。1つ聞きたいことがあるんですけど……」


「おう、なんだ?」


「どうも、話を聞いてると今回のスタンピードはかなり異例なことらしいんですけど、なんで起こったんでしょうかね?」


 そう言ってギースさんを見上げると、ギースさんもよく分からんと言うような顔をしていた。



「詳しい原因はオレにもさっぱりなんだが……どうも北東の方角でなにかあったようでな……?」


 北東……丁度私の家がある森の方角だね。




「どうも数ヶ月から度々大規模な魔力の動きがあったらしいんだ……」




 んんん……??


 ……どうも雲行きが怪しくなってきた気がするのは多分気のせいだよね。



「オレはなにか天変地異でも起きたんじゃないかって思ってるんだが……そう言えばユナはそっちの方から来たんだっけな。なにか知らないか?」


「し、知らないですよ?なんにも。ほんとに」


「そうか?ならしょうがないんだが……今回のスタンピードでは東部辺境の森や岩場にしか生息していないはずの魔物が多く交じってるんだ……」


ギクッ……


「へ、へぇー……あ、あのちなみになんですけど……その、何らかの天変地異で魔物が追われてスタンピードが起きるってこと……あります……?」


「お、オレの言いたいことよくわかったな。そうだ。多分俺はそうなんじゃないかと見ている。」


「…………」




絶句。杜甫












 ……あ、これ私のせいだわ。


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新作連載始めました!こちらもよろしくお願いします!! TSして女の子になったけどいつでも戻れる僕の日常
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