#40 ギルドマスターはTS美少女について思案する。
あの少女は一体どれだけの力を持っているのだろうか。
それが俺が彼女と少し話してみた感想だった。
◇
彼女と会ったとき、俺が最初に思ったのは「若い」ということだった。
話には聞いていたが、なにぶん「魔女」と聞いて想像するのは年寄りのババばかり。それが実際に会ってみればうら若い、いや寧ろ幼いと言った方が適切に思えるほどの少女。
そして何よりもかわいい。美少女という言葉がこれほどまでに似合う人を俺はこれまで見たことがなかった。
俺が彼女に挨拶すると、彼女も律儀に挨拶を返してくる。
それから少し話をしても、彼女の受け答えはしっかりしたもので特に悪意などは感じられなかった。
だから俺はとりあえず彼女のことを認めることにした。
彼女に魔物大暴走の戦いへの参加を頼むと、彼女は二つ返事で承諾してくれた。
本来なら冒険者以外が参加することは出来ない決まりになっている。しかし街を守るためにはどうしても回復治癒系の魔法使いが必要だ。だから今回は俺の権限でなんとかすることにしたのだ。
今回の件については純粋に街を守りたいという気持ちが大きい。
……まぁ「東の森の魔女」の実力を見れるのではと期待する気持ちや、上手く行けば我がギルドで囲めないか……というように考える気持ちも無いわけじゃないがな。
そこで俺は彼女の後ろに大量に置いてあるものが気になった。尋ねてみると、なんと自作した治癒ポーションと回復ポーションだという。
鑑定させてもらったところ、確かに高品質の回復と治癒のポーション。今1番必要で、1番不足しているもの。それが、すぐ脇に大量に。
俺は息が止まりそうになった。
感極まって泣きそうになるのを堪えながら、俺は彼女に向かって勢いよく深々と頭を下げた。
「本当にありがたい!これがあれば、誰も死なせずに済むかもしれない……!」
そう言った言葉は、心からの本心だった。
◇
俺は彼女に礼を言うと、一旦街の中へ入りギルドに向かう。無論、このことを報告するためだ。
走りながら俺は先程のことを考える。
あの品質のポーションならば、それなりの怪我までならばなんとかなるだろう。それに、彼女に実力があることもわかった。
ポーションというものは、作り手の魔力と魔法の取り扱いの上手さで出来が決まる。俺は魔法は少し使える程度で魔力も少ないため、もしポーションを作ったとしても低品質のものが数個出来るだけだろう。
それを、だ。彼女は「高品質のポーション」を「短時間で」「大量に」作ったのだ。しかも、それだけのことをしていて全く疲れた様子が見られない。それはつまり、彼女は相当の魔法の使い手であり、莫大な魔力量を持っているということだ。それもあの年で。
彼女は一体何者なのだろうか。
漠然とした疑問が俺の中に湧いてくる。
これから彼女はもっと成長し、強くなるということだ。なぜあそこまで前途有能なのに今まで何処のギルドでもノーマークだったのか不思議だ……
そう考えて、そういえば彼女は住民記録に無登録だったことを思い出す。
ただ、いきなり高品質のポーションを初対面の人に金銭の要求もせずに渡すなど確かに少し常識がない部分もあるが、普通に会話できるどころかむしろ律儀で、礼儀正しいと感じた。それに清潔感もある。……ギルドの野郎共にも見習って欲しいものだ……おっといかん、話が逸れたな。
先程ノスティらから聞いた話では、森の中にしっかりとした造りの家があり、自作したのであろう様々な魔道具や、ソファー、暖炉、風呂、そしてふかふかのベッドがあったと言っていた。
彼女はかなり文化的な生活をしている。それは即ち、彼女が森で育ったという可能性を否定するものだ。孤児とかでもはないであろう。
つまり何が言いたいかと言うと、俺は「彼女はどこか名家の生まれであるが、なにかの事情でそこを離れざるを得なくなり、森で生活をしている」のではないかと思っているということだ。それなら「ユナ」が住民登録に登録されていない理由も、人里離れた深い森の中で暮らしているのにも納得がいく。
……まぁ、あくまでもそれらは俺の憶測だ。
今のところは、彼女は彼女が名乗った「ユナ」であり「東の森の魔女」なのだ。それ以上でもそれ以下でもないだろう。
それにもし予想通りなにか訳アリだった場合、こちらから無理に理由を聞くことは信用を失いかねない。それだったら「凄腕魔法使い、ユナ」をギルドに取り込んだ方が利点が大きい。
……この戦いが終わったらギルドに勧誘しよう。
そう思ったところで、俺は丁度ギルドへと到着した。
◆
俺が冒険者ギルドの中で準備をしていると、ギルマスが扉を凄い勢いで開けながら飛び込んできた。
「おい喜べ!!治癒と回復のポーションが手に入りそうだぞ!!」
ギルマスがそう叫んだ瞬間、ギルド内で歓声が沸き起こる。
実のところ、俺も回復薬の在庫が掻き集めたにしろ乏しかったこともあり、この報せは非常に嬉しいものだった。
「おいやったな!!」
そう言って俺の肩を掴んで来るのは同期の仲間たち。
「あぁ。ありがたい」
そう言って俺は笑みを零す。
しばらく話した後、仲間のひとりが呟いた。
「しかし、まぁギルマスはよくポーションを確保できたな」
と。確かにそれは俺も思っていたところだ。
この街ではいくら探そうと何処も在庫は殆ど無かった筈だし、隣街から運ぶにしろ1週間はかかるだろうから間に合わない。だと言うのにだ。
俺がギルマスにそのことを訪ねようとした、その時だった。
ギルドの扉がまたもや勢いよく開き、青髪の女性が飛び込んで来ると、開口一番こう叫んだ。
「魔物たちが動きはじめました!!」
エドさんが勝手に思ってるだけです。
ゆのさんよりFAを頂きました!ありがとうございます!!!
早速21話の該当箇所に購入させて頂きましたd('∀'*)
ゆのさんもご自身で小説を書いておられ、なろうで「TS巫女の祈りが世界に届くまで」を連載中です。面白いので是非読んでみてください!
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