#34 TS美少女はスタンピードに備える。
ユナ視点です。
ノスティの後に続いて走ること数分。
街の入口?が見えてきた。
街の感じははいかにもなみんな大好き中世ナーロッパ。これもまたお約束なのか、街の周りを頑強そうな防壁が囲んでいる。
街への入口は大きな門になっているんだけど、その門は閉ざされていて入れないようになっていた。
「よかった……」
前を走るノスティが何かを察したのか、そう呟く。
私が不思議に思っていると、ノスティが説明してくれた。
「普段昼間はあの門は開いてるんだ。それが閉じてるってことは、街側も異常を察知したんだと思う。」
なるほど。でもそれって……
「門が閉じてたら、私たち街に入れなくない?」
そう問いかける私に、今度は右隣を走っていたアランが答える。
「実はあの門は下の方にギルドカード持ってないと開かない小さな扉があってな、そこからも入れるんだよ。トラブルで帰るのが夜になっちまった時に使ったりするんだけどな?」
「すご」
私は素直に感心した。
魔道具的なものだろうか。そうだとしたら、それなりに魔法文明が発達しているのかもしれない。
そういえば私が魔法を使った時は驚かれたけど、地球の道具を「魔道具」って言って紹介した時はあんまり驚かれなかったし、魔道具は結構あるのかも。
「それって、私に教えちゃっていいものなの?」
「ん?別に隠してるわけじゃないし、寧ろ常識としてちいさな子供でも知ってることなんだがなぁ……」
「そっか。ならいいや」
……私たちがそんなことを話している後ろで、マリンとハンスが何やらひそひそと話をしていた。
「なぁマリン?……ユナって、もしかして常識なかったりするか……?」
「うーん……常識ないってよりは世界を知らないって感じに見えるわね……」
……聞こえてるよ!
そしてマリンが意外といい線行っててすごい。
たしかに私はこの世界の「常識」をあまり知らない。
1回どこかで学ばないと……そう思ったのであった。
◇
街に着いてすぐにアランとノスティのふたりは街の中へと入って行った。どうやらギルドに報告して、すぐにでも冒険者を出すよう言うらしい。
ちなみに門の鍵を見せてもらったけどはギルドカードを差し込むと鍵が解除される仕組みだった。
うん。まんまビジネスホテルとかの部屋の照明点けるやつ。
ならば別のもの差し込んでも開くんじゃ……?と思ったけど、そこはちゃんと開かなかった。ギルドカードにICチップでも付いているのかな?
私とマリンとハンスは門の前に残って、魔物を警戒しながら休憩していた。
私はちょうどいいところにあった岩に座り込んで、魔法を展開する。
「うわぁ……多いなぁ……」
私が索敵を使うと、半径5キロ圏内にはものすごい数の魔物がいた。数にして200-300ぐらいだろうか。
街の近くは草原になっているんだけど、そこにはまだ魔物はいなくて、数キロ先の森の中を闊歩しているようだった。
試しに索敵範囲を10キロまで広げてみると、明らかに1000を超える反応がある。もしかしたら、今後もっと増えるかもしれない。
「今索敵してるんだけど、10キロ圏内で1000体以上の反応がある。全部来るのかはわからないけど、相当な数なはずだよ。」
私がそう言うと、隣で聞いていたハンスとマリンも顔をしかめる。そりゃそうだ。普段は多くても数体なのに、数十どころか数百の大群が来るかもしれないのだから。
ファンタジーの定番である襲撃イベントにワクワクしないわけじゃないけど、これから起きるらしいのは「魔物大暴走」。文字通りに、今反応がある魔物たちが街に押し寄せてくるというのだ。
ただ、今回の戦闘で私が役に立つかはわからない。
出来るだけ貢献したいし、人が死ぬところなんか見たくないからさっさと終わらせるに越したことはないんだけど。
確かにこの数日の間に私は沢山の魔物を倒してきたし、単純な戦闘力だったらこの場の誰よりも上だろうけど、私は魔物と闘ったここ数日しかなくて経験がめちゃくちゃ浅いし、魔法だって便利だと思ってるものを使ってるだけであまり実践向きとは言えないものなんだよね。
ちゃんと練習しなきゃ。そう思っても、今からでは圧倒的に時間が足りない。それが、すごくもどかしく感じる。
少しでも何かしようと、私は新しい魔法をいくつか創った。
それから、回復のポーションと治癒のポーションを創った。それも大量に。
特に治癒のポーションはハイ・ヒールぐらいの治癒力があるから効果は抜群だ。これを飲めばよっぽど重症じゃなければ死ぬことはないだろう。
味は私がわかりやすいように翼が生えるやつに近づけておいた。あとでハンスに飲んでもらったところ、最初は驚いていたけど普通に飲んでいたからたぶん問題ない。
ハンスに「んな高級なものをポンポンと……」って言われたけど、創造魔法で作ったものだから元手は0。だから問題ない!
出来るのにしないってのはあまりしたくないんだよね。今回の場合はそうすると誰かが死んじゃうかもしれないし、それが私がしなかったからだったら後味が悪すぎる。
そう思って私は過剰なぐらいにポーションを創っておいた。後から合流したアラン達にめちゃくちゃ驚かれたのは言うまでもないだろう。
ほら、備えあれば憂いなしっていうじゃん?
◇
動きがあったのはかなり日が傾いてきたときだった。
森から飛び出してきた魔物たちは、一直線にこちらへと向かってくる。
索敵でしかわからなかったそれは、次第に目視でも確認できるようになる。
「総員戦闘用意ッ!!」
街のギルドマスターの号令に、さっき合流した街の冒険者たちがいっせいに身構えた。
後に、史上稀に見る規模だったと言われる魔物大暴走が始まった……!
多分明日も更新すると思います。
次話は時系列が戻ります。




