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#31 TS美少女は大魔物の後始末をする。

タイトルは某映画のパクリです()

 倒したレッドベアを前にして、私たちは困っていた。

「レッドベアのあとしまつ」をどうするか迷っているのである。


「どうしよっか、これ……」


「うーん……ボクもベアの解体をしたことはないからなぁ……」


「俺もだ……。ただ肉を剥ぐのなら出来ると思うが、ここまで綺麗に倒してるのなら毛皮も取った方がいいだろうからなぁ」


「でもよぉ……それじゃぁ結局だれも解体できねぇじゃんかよ」


 その場にいるだれもが匙を投げる。

そんな時、マリンがポツリと言った。


「それならいっその事解体しなければいいんじゃない?」



「それだ!」







「収納!」


 そう叫ぶと、レッドベアが虚空に消える。私が確認すると、ちゃんとアイテムボックスに入っていた。

うんうん。上手くいったようでよかった。


「やっぱユナの魔法はすごいね〜」


「やっぱりすごい……。ありえないと思うけど、流石にちょっと慣れてきたわね」


 マリンとノスティが口々に褒めてくる。ふふふ。私凄いでしょ?もっと褒めてくれていいんだよ?


 マリンとノスティが褒め、私が若干天狗になっていたその一方で、アランとハンスはなんだか難しい顔をしていた。


「難しい顔をして、どうしたの?」


「ん?あ、ああ。レッドベアなんてそうそう人里に降りてこない上にこの地域は普段生息していないはずなんだ……。」


 その言葉にハンスも続ける。


「だからよぉ、これはなにか良くない予兆なんじゃねぇか、って話してたところなんだ」


 なるほど……確かにそう言われてみればそうかもしれない。

それに……


「そういえば、村を出発する時にケインも忠告してくれてたよね」


「ああ。どうやらそれは正しいようだな。」


「でもよぉ、それだったらまずいんじゃねぇのか……?」


「確かにな……これは早くギルドに報告した方が良さそうだ。少し急ぐことにしよう」


 そう言うと、アランは向こうの方で喋っていたマリンとノスティを呼び寄せて状況を説明する。


 状況が説明されると、マリンとノスティも少し険しい顔になって問いかける。


「ねぇ、この先大丈夫なのかな?」


「わからない。だけど、時間を追うごとに悪くなっているのは間違いないだろう。とにかく今は急ぎめで街へ戻ろう。」


 それを確認した私たちは、足早に歩き出す。


 警戒してのことだろうけど、さっきまでもよりも極端に会話が少なくなったので私は少し寂しいなと思うのだった。





 あれからも何回か軽い戦闘を重ね日没まで歩き続けた私たちは、宿営地に到着した。宿営地とは、街道脇に定期的に設置されているキャンプができる広場みたいなものだ。


 どうやら今日はここで野宿するらしい。


 隅の方で準備を始めるアランたち。

なんだかキャンプみたいで結構ワクワクするね。

 やることの無い私は夜ご飯でも作ろうかとアイテムボックスの中を漁る。


 創造魔法で出してもいいんだけど、作って微妙に余ったやつとか入れてるから、そっちを先に使っちゃわないと。

アイテムボックス内は時間が止まるから、冷蔵庫とかよりも保存が効くんだよね。


 えぇっと、これと……あれと……

……ん?あっ!いいのあるじゃん!



 私は周囲に人がいないことを確認すると、未来機械狸(ドラ○もん)の独特の抑揚を真似しながら、アイテムボックスからとある物を取り出す。



「テーンートー!」



 そう。私が取り出したのはキャンプグッズのテントだ。小さめだけど、小柄な私が寝るのには十分だ。

 ……そう言えばアイテムボックス自体が、四次元のポケットと似てる気もするけどきっと気のせいだろう。


 ちなみにこのテント私が家を創る時に創ったやつだったりする。たしか第3話ぐらいだったかな?


 存在をすっかり忘れてアイテムボックスの隅に死蔵されてたんだけど、野宿ってなんだかキャンプみたいだなぁと思った時に思い出したのだ。


 あ……!テントで寝るならアレもいるよね。


「創造!ウレタンマット、寝袋!」


 そう、テント必須アイテムセットだ。

本当なら他にもライトとかいるんだろうけど、私には魔法があるから要らない。


 魔法ってこういうところでも役に立つからほんと便利なんだよねぇ……



 テントの設営を終えると、ちょうど冒険者組の設営も終わったようで、こちらにやってくる。


「わーすごい!小さいけどちゃんとテントじゃん!」

「これ1人じゃ建てるの大変だったんじゃない?

……えっ!?魔法で出しただけなの!?」

「なんだそれ……凄すぎるだろ……」

「今までの俺たちの設営の苦労は……」


 マリンとノスティはかなり興味を持ってくれている見たいで、これは嬉しい。


 やっぱり「すごい」とか言われて褒められると心に余裕が出来て人をさらに好きになることが出来る。

 あ、勿論自分だけじゃなくて他の人も、ってことね?誰だって優しくされれば優しくしてくれた人に優しく接するでしょ。


 一方でアランとハンスはそれもあるけどそれ以上に「今までの苦労は……」と嘆いていた。

 それもそうだ。さっきもちらっと見てたけど、テントの設営はほとんど二人でやっていた。アランたちのテントは骨組みを組みたて、地面に固定し、布を被せて何箇所も固定しなきゃいけないタイプだ。そりゃ疲れるだろう。


「「「私(俺)(ボク)も、その魔法が使えれば……!」」」


「一応……アイテムボックスの魔法なら、教えてもいいんだけど……」


 私のその言葉に3人が反応する。


「えっ!?!?!?」

「是非教えてくれ!!!!」

「ユナ、ボクが言うのもなんだけど、それって教えて大丈夫なの……?」


「あーうん。教えるのは全然大丈夫だし、むしろ教えていいなら教えるんだけど……えっと、まぁやってみればわかるかな。


まず最初は、ここをこうして……」






それから数分後。


「これっ……けっこうっ……キツいわねっ……」

「む、無理だぁ……」

「」


「あー……やっぱりか()」


 そう。私はこの事態をある程度予見していた。

 何故ならば理由は簡単で、この魔法って単純に消費魔力がバカ高い上に、使ってる間は常時発動型だから一瞬も気が抜けないという魔法なんだよね……。

 だがら発動できたとしても相当な精神力と膨大な魔力が必要となるのだ。


 それにこの魔法は私オリジナルだから、スマホとかで言う「最適化」が殆ど行われていないのだ。だから対応してない端末、つまり人だと上手く発動することが出来ないってことになるのだ。


 えっ私?

ほら、私にはスキル「無尽蔵な魔力」があるから。



 まず初めに挑戦したアランは、そもそもアイテムボックスの発動すらでなかった。

 それが悪いわけじゃない。むしろそれが普通なんだ。


 続くノスティは、誰よりも早くアイテムボックスを発動することは出来たんだけど、使った瞬間魔力を食い尽くしたのか、目を回して倒れてしまった。命に別状はないけど、もう少ししないと目は覚めないだろう。


 意外だったのは3番手、マリンだ。

 発動してから今まで、アイテムボックスを開いたまま維持できている。これは私もちょっと想像してなかったぐらいにすごい。伊達に冒険者やってないな……と感じる。

そうだ!なら、もう一歩踏み込んでみよう。


「マリン〜!じゃあ次はアイテムボックスの中に物を入れて閉じるとこをやるよ〜」


「ええっ!?わっまっ……ちょっあっ……きゃあぎぇ゛!?!?!?」


 私はマリンのアイテムボックスの中に足元に落ちてた小石を入れて、マリンにアイテムボックスを閉じるよう促し……たんだけど、その途中で失敗したのか魔力と集中力が切れたのか、あるいはその両方かでマリンも力尽きてしまったのだった。


「あー……まぁ、そりゃそうなるよね……」


 私の視線の先には、3人の倒れた姿があった。



 ちなみに奥の方ではハンスが心配そうにこっちを見ながら夕食の準備をしていた。ちなみにさっき3人はって言ったんだけど、それはハンスが「俺は魔法全くできねぇからな」と最初から参加しなかったんだよね。


 いくら私オリジナルの難しい魔法だとしても、使ったら全員倒れるようじゃなぁ……。

 マリンはあと少しで出来そうだったし、私がこの魔法を改良した上でならもう1回チャレンジしても価値があるだろう。


 私はそう心に決めるとハンスの近くに行き、夕ご飯の準備に取り掛かるのだった。

今更すぎるんですが、なろうに「いいね」機能が搭載されました!1話につき1人1いいね押すことができるので、是非押していただけますと嬉しいです。執筆のモチベになります。

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