#30 TS美少女は魔物と遭遇する。
「ユナッ!!危ないっ!!!!」
ノスティが叫んだその言葉。
私は咄嗟に左に避ける。
ビュン…!
その横を、なにかが物凄い速さで通り過ぎていく。
それは私たちから10mぐらい離れたところで止まると、振り返りこちらを見てくる。
「あれは……イノシシ?」
「そうだが、目が赤い。魔物化したボアだな」
「魔物化?」
「あぁ、普通の動物でも魔力を持ち過ぎた個体はたまに魔物化するんだ……っと、来るぞ!」
見るとボアはこちらに向かって突進してくる。
どうしよう……これ私が出た方がいいやつ?
そう思っていると、ハンスとアランが前に出て
「「俺たちに任せろ!」」
と言うので、私は後ろに下がる。
まずタンクのハンスが突進してきたボアを受け止めると、アランが首筋に斬り掛かる。
「ーーー!?!?」
アランの斬撃は首に傷を作り、ボアは苦しそうな声を上げる。
しかし完全に仕留めきれなかったようで、ボアはハンスを蹴り上げると走ってアランたちから少し距離をとると、再びこちらに向かって走ってくる。
アランは剣を降り下ろしながら血を払うと、迫り来るボアに向かって地を蹴る。
シュバ…!!
両者はそのまま数歩進む。
そしてボアの首が落ちた。
おーすごい。
首チョンパと言うのは、確かかなり技術が要るはずだ。剣の切れ味もそうだけど、使い手の技術によるところがかなり大きいらしい。
私が前世で通っていた道場のジジi……んん…おじい様方が、耳にタコができるほど「ただ力任せに振り下ろすのでは無くて手首のスナップを使うんだよ!!わからんやつだなぁ!!」と言っていたのを思い出した。
……それはそうと。
アランの方を見るとドヤ顔で剣を鞘に収めながらこちらを見てくるので、私は素直に賞賛の言葉を口にする。
「お疲れ様。凄いね」
「ははは!凄いだろ?」
「ユナー!あんまり調子に乗らせちゃダメだよー!調子に乗ったアランってロクな事しないから!」
後ろの方でノスティが叫んでる。
「それによぉ、ボアっつーのはD級モンスターだからこいつなら余裕だろぅに」
「それ言うなよぉ!」
それにハンスも付け加えてくる。
どうやら今のはパーティ内ではあんまり凄くなかったらしい。それでも私からしたら凄いなぁとは思うんだけどね。ところで
「その、D級モンスターってなに?」
「ん?あぁユナは冒険者登録してないんだっけな。D級モンスターってのはギルドで決まってる目安のようなもんでな、D級の冒険者が1人で倒せる、もしくはE級の冒険者が複数人で倒せるレベルのことだ。」
「なるほど。ちなみにアランは?」
「C級。」
あーね。まぁカッコつけたくなる気持ちはわかるよ。
「ユナー!血抜き手伝って〜!」
少し離れたところで、マリンとノスティが呼んでくる。
グロいの大丈夫なのかと思ったけど、そう言えば冒険者なんだし、これぐらい見慣れてるのだろう。
2人は慣れた手つきで血抜きをしていく。
ちなみに猪は血抜きをしっかりしないと臭みが強くて美味しくない。なんというか、獣臭い肉になってしまうのだ。ただきちんと血抜きをすれば、美味しいジビエになる。死んだひいじいちゃんが言ってた。
「私は何すればいい?」
「えっとね、内蔵を取り出してくれるかな?」
「わかった」
……とは言ったものの、実際にやったことはないから結構うろ覚えだ。調べよ。
えーっと、スマホを取り出して
「猪 解体 方法」検索
…………(恐竜)
まぁそうだよね!!
なんで私圏外なの気づかないだろうね!!
しょうがない……確か……えっと……こうかな?
グサッ!
あっ……
「……。」
「ユナ」
「はい」
「……変わって?」
「はい」
◇
戦力外通告された私は、慣れた手つきで解体をしていくノスティの後ろに下がると、手順をじっと見る。
この身体は物覚えがいいようで1度見た事なら大抵は思い出せる。だからここでしっかり見ておけばやり方を覚えて次の時は出来るだろう。
ふむふむ……なるほど……こうやるのか。
「\\テテテテーテッテッテー♪//
ユナ は ボア を解体できるようになった!!」
「何言ってんの……?」
「ごめん」
◇
イノシシ……じゃなかった、ボアを解体し終わった私たちは、移動を再開する。
ちなみに肉や毛皮は私のアイテムボックスに入れた。アイテムボックスなら痛まないしね。
何もしてない私が持っていていいのかな?と思ったけど、何もしてないからこそ私が持つべきだろう。
そうして、歩くこと数時間。
それを見つけたのは、日が少し傾きかけた頃だった。
「ん?あれは……?」
「どうかしたのか?」
先頭を歩くアランが私の方を振り返ってそう尋ねる。
「あそこに居るのって熊?」
「熊?あー、ベアか。厄介だな……」
「……熊にしては赤くない……?」
「なに?どこだ!?」
アランが血相を変えて私の方を掴む。顔がすごく怖い。あと肩をがしってやられたからちょっとびっくりした。
私は恐る恐る熊のいる方を指差すと、アランもそっちを向いて眉をひそめ、
そして見開く。
「大変だ!レッドベアがいるぞ!!!」
「「「な、なんだってー!?」」」
「レッドベアって……なに?」
どうやら知らないのは私だけのようだ。
「レッドベアは普通のベアに比べると格段に鋭い爪、強い力、そして敏捷性を併せ持つA級モンスターだ。正直俺らでも厳しい。ここはすぐに逃げた方がいいだろう。」
アランがそう説明してくれる。
なるほど。とにかくヤバいってことはわかった。
うん。よし、逃げよう!!!
その時だった。
レッドベアがこっちを向いた。
そして目が合う。私と。
……
………………
…………………………
「ヤバい……」
満場一致でそう思った私たちは、じりじりと後退する。
しかし、クマ……じゃなくてレッドベアはこちらを見たまま動か……あっこっち来た終わった
「逃げろ!!!!」
アランがそうい言うなり、一目散に走り出す私たち。しかし、それでもレッドベアは追ってくる。
このレッドベア、クマにしてはめちゃくちゃ大きい。目算だけど体長5mはあるんじゃないかな……?
「きゃっ!?」
後ろに気を取られすぎた私は道にあった石に気づかずに転んでしまう。
「ユナ!?」
ノスティが私に気づいてと戻ろうとするが、もう遅い。
レッドベアは私の目の前に迫ってきていた。
レッドベアは未だ転んだままの私に立ちはだかると、爪を振り下「防御結界ッ!!」ろす。
バチィッッ!!!
レッドベアが振り下ろした爪は、結界に弾かれて私に届くことは無い。
レッドベアが???となっている隙に私は立ち上がる。
「ウインドカッターッ!」
シャッ…
「嘘でしょ!?硬すぎない!?」
私の両手から放たれた風の刃は、確かにレッドベアの首筋に命中する。しかし少し血が出てるぐらいで、気にした様子もない。例えるならば紙で指の皮膚を切ったぐらいだろうか。
それでも、私はあまり焦ってはいなかった。
「まぁ風だからねぇ……でも水魔法や火魔法だと後処理がめんどくさいし、闇魔法だと存在そのものが消滅しちゃうしなぁ……」
そう。実は、私はその気になれば一瞬で殺すことも出来る。
だけどそれをやると大体の方法で熊……じゃなくてレッドベアの肉体が残らない。
例えばさっき使った消滅魔法を使えば秒で倒せるけどそれ使うと跡形も残さずに消えるから使えない、ということだ。
レッドベアは言ってしまえば熊なので、肉や毛皮が期待できる。売ればそこそこの金額になるだろう。
今私はお金が無い。昨日貰った金貨が尽きればまた1文無しになってしまう。
だから素材を売ろうと思い、そのためにはできるだけ綺麗な状態で倒す必要があるのだった。
……登録してない小娘が素材を売れるのか分からないけど、いざとなったら冒険者達を頼らせてもらおう。
……っ、おっと。
ブォンッ
私が長考している間にもレッドベアは体制を整え直して私に向かって来て、攻撃しようとした。当然避けたけどね。
仕方ない。そろそろ倒してしまおう。
「サンダーボルトッ!!!!」
バリバリッッッ!!!
私が放った雷属性の電気魔法は、レッドベアを電気で麻痺させて動けなくさせた。
私は動かなくなったレッドベアにとどめを刺すため歩み寄る。
「さよなら」
そう言って私は持っていたナイフをレッドベアのこめかみに突き刺す。
少しするとレッドベアは完全に動かなくなった。
「おわった」
そう思うとなんだか一気に疲れて、私は地面に座り込むのだった。
◆
ボクたちはレッドベアとユナの戦いを後ろから見ていた。
……最も、あれが戦いなのかはさておいて。
「ありえん」
ボクの隣にいたアランがそう呟く。
無理もないよね。
だってレッドベアはA級モンスターなのだ。
A級と言えばそれなりに冒険者歴が長いボクやアランでさえ、単独では絶対に倒せず、パーティー4人で挑んでもギリギリ勝てるか死ぬかぐらいの強さなのだ。
それをユナは軽々と倒してしまったのだ。
それに、これはボクの推測だけど多分ユナはなるべく綺麗に倒すために、わざわざ時間をかけたのだと思っている。でなければ一瞬で倒せたはずなのに。
まぁその辺は後で聞くとしよう。
それにしても、ユナが本気を出したら一体どうなってしまうのか。そんなこともつい考えてしまう。ユナにはいっぱい聞きたいことがあるのだ。
まぁ今それを考えても仕方ない。
それらは後ですることにするとして、とりあえずは彼女の元に行こう。
そう思ったボクは、地面に座り込んでいるユナの元へと駆け寄るのだった。
戦闘シーンが書けなさすぎる……。
なにか「こうするといいよ!」みたいなのありましたら是非感想ください……!
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