#27 TS美少女は森を歩いて行く。
街へ歩き始めてから半日。
私は既にちょっと飽きていた。
……いやね?歩いても歩いても森の中、景色も変わらない。だからそれも当然なんじゃないだろうか。
箒に乗ればいいじゃん!と思って試してみたけど、流石に5人乗りは無茶だった。
上がらないことは無いんだけど、歩くのと同じぐらいの速度しか出ない上に、私が一瞬でも気を抜いてしまうと墜落することがわかったので今はみんなで大人しく歩いているという訳だ。
どうやら箒にかかる力がだいたい100キロを超えると負担が一気に増えるみたい。だからマリンかノスティだけだったらギリギリなんとかなったけどね。
そのノスティの方を見ると、なんだか疲れたような顔をしていた。どうしたんだろう?
ノスティは女の子になる前から女の子みたいな身体付きをしていた上に筋肉も多くはなかったから、体力が落ちるってことは多分ないと思ってたけど、骨格のとか肉づきが変わるとやはり勝手が違うから疲れるのかもしれない。
私も最初のうちは身体の動き方が違うのに戸惑ったものだ。すぐ慣れたけど。
ノスティが疲れていることにはマリンも気づいたようで、ノスティに声をかける。
「どうしたの?」
「ノスティどったの?」
「ん?あー……いや……ちょっとね。ほら昨日……」
そう言いながらノスティはアランを見て、顔を赤らめながらそう言う。
「「あ」」
察した。
私がノスティに無言でヒールをかけると、ノスティはさらに顔を赤くする。
さらにはアランまでちょっとバツの悪いような表情を浮かべながら顔をほんのりと赤くしていた。
幸せかよ。
……ちくせう。
ちょっと羨ましいとか思ちゃったじゃん。
◇
昨夜私は自分の部屋に帰るとベッドに入り、少し考え事をしていた。
以前思ったことがある。
私は転生してTSして女の子になった訳だけど、元々は男だったことに変わりはない。
今の私がいくら超絶かわいい美少女だったとしても、その中身はどうだろうか?
十何年間男として育ってきた「僕」は消えてなくなってしまったのか?死んでしまったにしろ、記憶の連続性がある以上存在しているのだろう。そして問いかけてくるのだ。今の「私」は果たして本物の女の子なのだろうか、と。
でも、さっきノスティを見て、話を聞いて、女の子にしてあげて、泣きながら夢が叶った幸せそうな弾けんばかりの笑顔を浮かべたノスティを見て、それは悩む必要もなかったのかもしれないと思った。
結局のところ、そこはあまり関係なかったのだ。
ノスティが男の子としての生を受けながらも女の子としての心を持っていたように。
実際ノスティは女の子にしか見えなかったし、実際に女の子にしてあげたあとはとびきりかわいい女の子になったのだ。
だから「私」は「僕」でもあり、「僕」は「私」であって、今の私は女の子。
私は美少女の身体で、自分を女の子だと思っている以上、誰がなんと言おうと女の子なのだ。
私が女の子だと思っている以上多分恋愛もできるのだろうし、もっと言えば私が好きになった人になら男に抱かれることもやぶさかでは無い。……いや、当分する気ないけど。
そこまで考えた私は目を閉じ、夢の中へと身体を沈めるのだった。
◇
しばらく歩くと、凸凹としていた道が平坦になり、人の手が入ったような場所に出て、なんだか見覚えのある景色が見えてくる。
「あっ、こここの前来たとこだ」
そう、数日ぶりのマーシャちゃんの村であった。
◇
村に着いた。
マーシャちゃんに会いたくなった私は、アランたちに「ちょっと待ってて」と言ってその場を後にする。
村の外れの方にあるマーシャちゃんの家まで文字通り秒で行くと、家の前で遊んでいたマーシャちゃんを見つける。
「あっ!ゆなおねえちゃんだ!!」
マーシャちゃんは私を見ると飛び込んで来る。私はそれを受けとめ……
「ぐへ……」
思ったより勢いが凄かったけど、無事に受けとめ、ぎゅっと抱きしめる。
「あらユナさん!どうも」
声を聞いたのか、家の中からメリザさんも出てきた。どうやら家事をしていたらしい。見たところ元気そうでなによりだ。
◇
少しの間話した後、私はアランたちを待たせていたことを思い出してそれを告げる。
今回マーシャちゃんに会いに来たのはついでだしね。
「えー!ゆなおねえちゃんもういっちゃうのー?」
「うん。また来るからお母さんの言うことをよく聞いていい子にしてるんだよ?」
「わかった!わたしいいこにする!」
「えらいえらい」
私はマーシャちゃんの頭を撫でる。
二へへという笑顔を見せるマーシャちゃんに癒された私は、笑顔でその場を後にするのだった。
◇
今日はこの村で宿に泊まることになった。
村の中心に小さな宿があったので、そこに行くことにする。宿に着くと、アランが代表して受付をしてくれる。
「1泊頼む」
「はーい。何名で何部屋ですか?」
「5人で3部屋頼めるか?」
「はーい大丈夫ですー。1泊朝食付きで1人300Sなので1500Sになりますー。」
へぇ、通貨はスピナって言うんだ。300Sは3000円ぐらいかな?
……ってあれ?そういえば私お金もってなくない?
「これで」
そう言うとアランはカバンの中から硬貨を数枚取り出し、料金を一括で支払う。
どうしよう……私お金もってないのに。
私がそう思っていると、不安な表情を察したのかアランが
「部屋代はパーティーの財布から出すから要らないぞ」
と言ってくれた。ほかのメンバーも頷いているところを見るとそうなのだろう。
ん?つまり私は一応パーティーメンバーとしてカウントされているのか。パーティー、つまり仲間。
前世の私は友達が少ない陰キャぼっちだったので仲間という響きがやけに輝かしく聞こえる。
「はーい。お部屋お2階になりますーどうぞー」
そう言われ我に返った私は、受付のお姉さんのあとに続くアランたちのあとについて行って、指定された部屋に入る。ちなみに当たり前だが構成はハンマリ、アラノス、私だ。
部屋は「ザ・一般的な異世界の旅館」って感じだ。
簡素なベッドとちいさな机。風呂なしトイレは共用。
日本だったら安宿でもこんなことはないだろうが、ここは異世界なのだし仕方ないと割り切る他ないだろう。
それよりも、だ。
「お金がない」非常にピンチである。
ほんとどうしよう……
◇
時刻は現在17時。
マリンが「お腹すいたー」と言い、ノスティも「少し早いけど、夕飯食べに行こうか」
と同意する。
受付のお姉さんに聞いたら、5分ぐらい歩いたところに村の食堂があると言うので、そこに向かうとする。
私たちは宿を出て、村のメインストリートを歩いていく。
……メインストリートと言っても他より少し広くて建物が多いただの道と言った感じだけど。
村にはのんびりとしていて、平和そのもの。
まぁゲームならこんな時に限ってなんかしらのイベントが起きたりするのが定番なんだけどね。
……あれ?これってフラグ……?
そして、私たちが広場を通った時だった。
1人の男の人が、こちらに走ってくる。
「大変だぁーー!!!!」
はいフラグ回収しました本当にありがとうございました!!




