#26 TS美少女が1人の少女を幸せにする物語。
マリン達がお風呂に入っている間、ボクはユナと話していた。
ユナとはかなり打ち解けた。ユナはこの短いの間に、ボクの数少ない親友入りを果たしたのだ。なんだかボクとユナは似ている気がするのだ。それがどこなのかはわからないけど、考え方とかが似てる気がする。
ボクは改めて目の前で話しているユナを見る。ユナはボクから見て完璧な美少女だった。一切の非の打ち所のない、聡明で、かつ天真爛漫な天使のような笑顔。羨ましい限りだ。
ボクは外見上なら女の子に見えると思う。
でも、その本質は全く別物だ。我ながら詐欺もいいところだと思う。全くもってこの身体が憎たらしい。
ユナとは仲良くなったけど、ユナはボクのことを完全に女の子として見ていた。それ自体は嬉しいんだけど、ボクの秘密を言ってない以上、騙していることに変わりは無い。
いつか言わないと。またあのときのようになってしまう。
でも怖いんだ。
ボクは相手がそれを知った時に向けられる「幻滅した」というような目線を何度も浴びてきた。
せっかくここまで仲良くなったのに、ユナにまでそんな目で見られたら……。そう考えると、ボクは怖気づき、結局言い出すことは出来なかった。
◇
ボクは順番が来たので、お風呂に入っていた。お風呂はかなり大きくて、洗い場も広くて綺麗だ。
こんなに広いお風呂をボク1人が入るのは気が引けるけど、普段あまりゆっくり入れない分、有難く使わせてもらおう。
それに1人なのはほんとうにありがたい。汚い野郎と風呂に入るぐらいだったらお風呂になんか入らない方がマシとすら思える。
あ、でもアランは別だ。彼がボクと入りたいかは別として、彼ならば一緒に入れる。
ボクは身体を洗い終えると、湯船に浸かる。
「気持ちいい……。」
冒険の疲れが溶け出していくようだった。
◇
ボクがお風呂から上がろうとしていたときに、それは起きた。
ユナがお風呂に入ってきたのだ。
なんで!?と思うよりも先に、ボクは慌てて持っていたタオルで下を隠す。
普段ならパーティー内でも瞬発力と敏捷力で群を抜くとボクでさえ、お風呂ということで油断していたのと、咄嗟のことで頭が回らなかったからか一瞬隠すのが遅れてしまう。
ボクは目もいい。
だからユナの視線がこっちを向いて、ボクのソレを見て目を見開くのも見えてしまった。
あぁ、終わった。
ユナにボクの秘密を知られてしまったのだ……。
ユナはなんと思うだろうか。
「気持ち悪い」と思うだろう。
気持ち悪いボクに幻滅しただろうか。
もう関わりたくないと思っただろうな。
ッ!!
苦しい。なんてことない。ただのパニックだ。
世界が歪む。
……こうなるのは、あのとき以来だな。
ふと、柔らかい手がボクの背中をさする。
ユナがこっちに来たんだろう。
こんな気持ち悪いボクになんの用だろうか。
嘲笑いに来たのだろうか。
「触らっ、ないで!ボクは、ボク、はッ」
ボクはユナを拒絶する。
それでも、ユナは優しくボクに声をかける。
「大丈夫だよ。ノスティはノスティだから。私はノスティの味方だよ?」
ユナのその言葉で、ボクは少し、いやかなり救われたような気がしたんだ。
◆
ノスティが男の娘?だったことは驚いたけど、それだけといえばそれだけだった。なんせ私自身がTSしてる元男だし?
女装や男の娘モノも好きな私にとって女の子にしか見えない男の娘など需要しかない。
むしろノスティの方が取り乱してしまい、落ち着かせるのに時間がかかった。
「クシュッ……」
あ、そう言えば私たち裸だった。
いくらか浴室内は暖かいとはいえ、暖房を入れてるわけじゃないし外は極寒なことを考えると冷えて当然だろう。
私はノスティにもう1回湯船に浸かるよう促すと、ノスティはタオルで前を隠しながら湯船へと向かってく。
私も入ろうとしてまだ体を洗ってなかったことに気づくと、洗い場に行って魔法をフルに使い、文字通り秒で終わらせて湯船に向かうのだった。
◆
「隣失礼〜」
ボクがお風呂で体を温め直していると、ユナが隣に入ってくる。
「さっきはいきなり入ってきてごめんね……」
「……ユナはボクのこと女の子だと思ってたんでしょ?それは言ってなかったボクが悪いんだからユナは悪くないよ。」
ユナに対してボクはそう返す。
「そもそも、ボクが男だと知っても「気持ち悪い」とか思わないの……?」
そう。それが1番不安だったのだ。
しかし、ユナから帰ってきた言葉は意外なものだった。
「うーん。まぁびっくりしたけどそれ以上でもそれ以下でもないよねぇ……。昔私のいた国では「男の娘」っていう文化が神話の時代からあったし……」
なんだそれ。ユナがいた国が何処だかは知らないけど、多分そこは相当におかしい。
でも、ボクみたいなのでも「気持ち悪い」って言われないのか〜。それいいなぁ。
「それにね、うーんとこれ言っていいのかなぁ?秘密にしてくれる?」
ユナがそう言ってくるので、私は頷く。
「じゃあ言うね。
……私も実は昔男だったんだよ」
??
!?!?!?
どういうこと!?
◆
私が今までの経緯を話終えると、ノスティは下を向いてなにかを考えているようだった。
「よかったらノスティの話も聞かせて欲しいな」
私がそう言うと、ノスティはしばらく迷って、こくりと頷くのであった。
◆◆
ボクは、昔から女の子になりたかった。
村の近所に住んでいる女の子が着ている服や、持っているお人形が羨ましかった。
でもボクの両親は、ボクを強い男にしたかったらしい。
ボクは4歳から近所の剣の道場に通わされた。
最初は行っていたけど、ボクは剣を使いたかったわけじゃなかったし、ボクより先に通っていた男の子たちに
「なよなよすんなよ!」
「こいつ女みてぇだな!」
そう言ってからかわれ続けた。
5歳頃には、ボクの中にうっすらと性の認識というものが生まれた。けれど、ボクは自分を男の子とは到底思えなかった。だから、道着への着替えなども隅や死角になっているところでするようになった。
それが男の子たちをさらに煽ってしまったのかもしれない。それからというもの、男の子たちの無邪気な暴言は更に増した。
翌月にはボクは道場に行かなくなり、近所の女の子達と遊んでいた。ちょうど母が妊娠し、父が遅くまで働くためにバレることはなかった。女の子達と遊んでいたこの時が、今までで1番楽しかった。
けれど、それも長くは続かなかった。
その年の冬にはサボって女の子と遊んでいたことが親にバレた。近所の女の子の家に凸して、リボンをつけてスカートを履きながらおままごとをしていたボクを蹴り出した。
家に帰り「何故男らしくならないんだ!」と怒る両親に、思わず「ボクは男の子じゃなくて女の子だ!」と言った。
そしたら父はボクを殴り、母は理解できないと言った顔でボクを見ていた。
春になり弟が生まれると、両親の愛情は明らかに弟のみに注がれるようになった。
弟は両親の期待通りやんちゃでいかにも男の子らしく成長していった。だからボクはもういらない子だったのだろう。
ボクは10歳のときに村から遠く離れたおじいちゃんの家に預けられた。
ボクは子供ながらに親に見捨てられたことを悟った。
「男の子なのに自分は女の子という異物」
それがボクの周りから見た評価だった。
ボク自身も、自分は変なんだとは思っていたけど、どうしても「男の子として生きる」ことはできなかった。
おじいちゃんはそんなボクに向き合って、普通に接してくれた。女の子の格好をすることも許してくれた。
おじいちゃんは、森の歩き方や、弓を使った獲物のとり方を教えてくれた。おじいちゃんが教えてくれた知識は冒険者になった時にすごく役に立った。
ボクが13歳のとき、ボクは自分の身体に異変を感じた。体毛が僅かながらに濃くなったのだ。
ボクはいつだったか「子供は12-13歳頃から大人の身体になり始め、男だったらがっちりとした体になり、毛や髭が生え、声が低くなり、成人する15歳ぐらいには大人の身体になる」ということを聞いていた。
ボクはそれを思い出して、ボクはおじいちゃんに泣いて訴えた。「このままじゃボクがボクでなくなる!」と。
おじいちゃんは薬師でもあったらしい。
ボクの訴えを聞いたおじいちゃんは、試行錯誤の上、その成長が来るのを遅くする薬を作って、ボクにくれた。
そのおかげで、ボクは今子供がそのまま大きくなったような、比較的女性的な身体つきを保てている。
だけど、それもいつもまで持つかわからないのだけど。
ボクが15歳になり成人してすぐにおじいちゃんはこの世を去った。すごく悲しかったけど、それ以上に感謝の気持ちが大きかった。
おじいちゃんがいなくなってしまったからには1人で生活しなければならない。それでも今更あの家に帰るのも嫌だったので、ボクは街に出て冒険者になった。
元々弓が使えたボクは、すぐにDランクになった。
最初に組んだパーティーで、ボクはオカマ扱いされた。
次に組んだパーティーでは、「気持ち悪い」と出発前に追放された。
だから、ボクは男であると言うのをやめることにした。
その後、単発のパーティーをいくつか回ったあと、アランが新規パーティーを作ろうとしていたパーティーに入った。
自分が男であることを隠して。
◇
アランのパーティーはとても楽しかった。
後から加わった2人と共に、4人で色々な冒険をした。
アランはみんなの様子をよく見てて、とても頼りになる。
ボクはアランのことが好きになった。
だけど、ボクは男だからアランとエッチすることは出来ない。これがすごく悲しかった。
そのうちアランもボクのことを気にし始めたのか、ちょっと思わせぶりなことを言ってくるようになった。
でもボクはそれを聞くたびに嬉しかったけど、胸が締め付けられるような思いだった。
秘密というのは、いつかバレてしまうものなのだろう。
ある時、パーティーメンバーに実は男であること隠していると知られてしまった。
みんなはそれ以降も、ボクに変わらず接してくれたけど、アランとの関係は少しギクシャクしてしまった。
そして、今に至る――――――
◆◆
ノスティの話を聞き終わった私は、開口一番にこう告げる。
「うん。典型的な性別違和だね」
ノスティが???となっているので説明すると、なんだか腑に落ちたと言わんばかりに頷く。
「で、ノスティはどうしたいの?」
私は問いかける。
ノスティは私を真っ直ぐな目で見ると、
「ボクも、女の子になりたいな」
そう言ったのだった。
◇
ということで、シリアス終了!
さっさとやっちゃおう。
さてここに取り出しますは「モディファイ・ハイネス・ヒール」と「改変魔法」。これを使ってノスティちゃんを見事女の子に生まれ変わらせてあげましょう!
「いくよ?」
私がそう言うと、ノスティは頷きこちらを見つめてくる。
それはとても真っ直ぐな目だった。
「モディファイ・ハイネス・ヒールッ!!」
ノスティを女の子にするように指示をした魔法は、荘厳な光と音を伴ってノスティを包み込んでいく。
そして数分後、光が消えたそこには、変わってないようで大きく変わった、普通の女の子が横たわっていた。
「ノスティ、起きて?」
「あれ?ボクどうなったんだっけ……?」
「ほら、自分の身体を見てみて?」
ノスティは自分の身体を触って確かめる。
そして、泣きながら私に抱き着いて来た。
私も、ノスティをぎゅっと抱きしめて、
「もう、大丈夫だよ」
と言うのであった。
◆
「おい!?なんかすげぇ音がしたけど大丈夫か!?」
俺は音のした方に駆けつける。
そこは先程入ったお風呂であった。
俺は何も考えずに扉を開け、戦慄する。
中にはユナとノスティがいた。
「やべっ」っと思って扉を閉めようとした瞬間、俺は信じられないものを目にする。
ノスティの胸があるのだ。
そしてアレがない。
「きゃぁあああああ!?!?」
ノスティが顔を赤くしながら近くにあった風呂桶を投げてくる。俺の目線はノスティの胸に釘付けになっていて、退避行動が遅れた。
クリーンヒット。
俺は風呂桶を顔面にモロに受けてしまったのだった。いや、100%俺が悪いんだけどな?
◆
魔法を使って一瞬で服を着た私は、アランの顔にヒールをかけ、ノスティに起こったことについて説明する。
説明を聞いた彼はそのまま立ち上がると、裸のままのノスティをお姫様抱っこして、じたばたするノスティをよそにそのまま2階へと消えていったのだった。
なにがとは言わないが察した私は、ノスティの服にクリーンをかけ、新しく創った下着と一緒に2人いる部屋の前に置いておく。
中では既に始まっていたようなので、私はそのまま自分の部屋に帰る。
……あんまり汚さないで欲しいんだけど、こればっかりはしょうがないだろう。私がどちらの立場であろうとやると思うし。
ノスティにはしっかり女の子になった実感を味わってもらうとしよう。
◇
翌朝。
朝日と共に気持ちよく目覚めた私は、キッチンで朝ご飯を作る。途中でノスティとやつれた顔のアランが起きてきた。
「おはようノスティ。どうだった?」
「……すごかった。」
「そりゃよかった。お風呂入る?」
「うん。」
そういうので、私は2人をお風呂に送り出す。
程なくしてハンスとマリンも起きてきた。
「昨夜のことって知ってる?」
「なんのこと?ハンス知ってる?」
「いや、眠っちまったからなぁ……」
マリンが「なんかあったの?」と聞いてきたので、私は昨夜あった出来事を話す。
すると、丁度ノスティアランもお風呂から上がって来た。
マリンがノスティに、ハンスがアランにそれぞれ絡んで昨夜の事を聞いている間に、私は朝ごはんの支度を終わらせる。
ちなみに今日の朝食はご飯に味噌汁、魚に肉といった日本式。今日は長距離を移動するのだ。腹持ちのいいご飯の方がいいだろう。そう思って準備した。
「朝食できたよー!」
◇
支度を整え、戸締りをして私は外へと出る。
雲ひとつない快晴。絶好の冒険日和だ。
「よし、出発するぞー」
アランが声をかける。
私たちは歩き始める。
まだ見ぬ街へと。
私たちの冒険は、まだ始まったばかりだ!
ノスティはある意味ではユナちゃんより作者(私)を移していると言っても過言ではないです。
作者受験のため今日の話を持ちまして一旦投稿を2週間程度休止させていただきます。作者の合格発表が出次第執筆を再開しますので気長にお待ちください。
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