#25 TS美少女と冒険者たちはお風呂に入る。
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
私は冒険者たちにお風呂に入るように促す。
「お風呂?家にお風呂があるの!?」
「風呂ったって……そりゃぁ入りてぇが大変じゃねぇのか……?」
マリンとハンスが反応する。聞けば風呂の文化自体はあるものの、風呂があるのは高級宿か日本で言う銭湯のような公衆浴場ぐらいで、一般住宅に風呂があるのは珍しいという。
……確かに、一般家庭でお風呂を作るは大変だ。
私は魔法があるし、お湯は温泉を引いてるから問題ないのだけど、魔法や温泉がなければ自分たちで水を入れ、沸かさなければならない。それはすごい重労働だろう。私はやりたくない。
「お風呂は大きいのがあるよ。うちは地下から電気ポンプでお湯を汲み上げて入れてるから殆ど魔力を使わないんだ」
「そうか、それなら良かった」
ハンスは私の言葉を聞くと安心したように息をつく。
ちなみにあんまり力を使わないと言ったが、お風呂を創ってまもない頃は私の魔力でポンプを動かしていた。私なら魔力の消費を殆ど気にしなくていいとは言え、一般的に見てば相当な魔力消費量だった筈だ。
ちょっと前に電気を作ってからは、ポンプは電気を使うようにしてので私の負担は殆ど無くなった。
……とはいえ家の電気を全て賄おうとした時に電気が足りなくなっていろいろ弄ったせいで余計な配線が増え、結果的にハンスが死にかけたのだけど。そこは申し訳なく思う。だからこそ、ここまでもてなしてる訳なのだけれども。
閑話休題。
「……ということで、今すぐにでも入れるけど……」
「はいはいー!私入る!!」
私がそう言うと、マリンがすぐ入りたいと言うのでお風呂場に案内する。
ふふふ……驚くなよ?
◇
「うわぁあ!すっごーい!!なにこれぇー!」
◇
マリンから100点満点のリアクションを頂いたところで、私はシャワーの使い方や諸注意を伝えると脱衣場から撤収する。そう言えばノスティは一緒に入らないのだろうか。
うちのお風呂はこだわってかなり広く創ってある。無理すれば10人ぐらい一緒に入れるから女の子2人ならば余裕なんだけどなぁ……。
あ、でも広いってこと言ってなかったっけ。じゃあしょうがないか。
そう思いながら、私はリビングに戻るのだった。
◆
「きもちいい……」
今私は魔女の家のお風呂に浸かっていた。
家にお風呂があることすら驚いたのに、こんな広いだなんて。
お風呂に入る前にやるように言われたシャワー?も凄かった。
蛇口をひねるとジョウロの先のような口からお湯が出てくるのだ。最初はびっくりして「きゃっ!?」と声をあげてしまった。まぁ、すぐに慣れたけど。
そして体や髪を洗おうとしても、普段使っている固形の石鹸はなく容器が3-4個置いてあるだけ。
見たこともない文字で、どれを使えばいいのか全くわからなかったから、何となくそれっぽいのを1個だけ使った。多分アタリだったと思う。
◇
「……それにしても、今日はほんとにいろいろあったなぁ……」
湯船に浸かりながら、私は今日の出来事を回想する。
そして出てきた言葉は何度も頭の中で考えていた事だった。
◇
「なんなのよ、あの子……」
アランが魔女が家に呼んでいると伝えに来た時、私はそんなことを考えていた。
東の森の魔女。彼女は最初はやっぱり悪いやつなのかなーと思った。ハンスがトラップ?で死にかけた訳だし。
でも彼女は助けてくれたし、ふかふかのベッドと温かくて美味しいご飯、そしてお風呂まで提供してくれた。
そこまではまぁいい。いや、良くないけど。
問題は彼女の使う魔法が、一般的に中堅と言われるDランクのさらに上のCランク魔法使いの私ですら全く理解できなかったということだ。
彼女がハンスを助けた魔法。
私が何度もヒールをかけても反応がなかったハンスを、一発で回復させた。詠唱をほぼしてなかったのに。
詠唱の大切さはどんな魔法の教本を読んでも、最初に書いてあることだ。教本の詠唱を出来る限り正確に暗記することこそが、魔法使いとしての最も大切なこと……なはずだ。
なのに。
そう思うと、私は悔しくてたまらなかった。
大好きなハンスを私では救えなかった。
私の力不足。そう思うと胸が締め付けられるようで。
その時の私は彼女に羨望と嫉妬の眼差しを向けていた。
彼女は私達を救うと、私たちを家に招き入れた。
話してみると、魔女という言葉には合わないぐらいにかわいい女の子だった。
そして、それは起こる。
私たちの寝る場所がないと聞くと、彼女は一瞬で家を増築した。これはもう意味がわからない。
部屋に行くとそこにはシンプルながらも清潔で機能的な部屋があった。2台置いてあるベッドはふかふかで今まで泊まった、どんな宿屋のものよりも良かった。
彼女が作ってくれたご飯はとても美味しかった。私達は食事の間に彼女と話をしたりした。
嫉妬という色眼鏡で見なければ、彼女は言動こそ大人びているものの年相応のめっちゃくちゃかわいい女の子だった。
私は彼女に魔法について質問した。
彼女は少々不器用ながらも丁寧に答えてくれた。
そこで、私は悟った。
彼女は多分次元が違う。
そもそも魔法の前提条件からして違う。
このまま彼女を魔法使いとして嫉妬するのではなく、彼女の技術を少しでも吸収した方が私にとって良い結果となるはずだ。
つまり結局のところ、私が勝手に妬いていただけだったのだ。
そう思うとなんだか急に気が楽になったような気がした。
◇
ご飯を食べ終わると、彼女はお風呂に入るよう私たちに促す。
「家にお風呂がある」
これは私にとって結構衝撃だった。
私はお風呂が結構好きで、街に行った際などには冒険の汚れを落とすために公衆浴場まで出向いて湯船に浸かる。
なぜ公衆浴場まで行くのかと言えば、私達が泊まるような安宿には風呂などついていないからだ。
風呂を沸かす為にはかなりの手間も時間もかかる。だから、私たちが普段冒険して野宿する時や、魔法が使える町の住民などは魔法で少量のお湯を作って、タオルをそれで濡らして体を拭くぐらいだ。
私の魔力を全部つぎ込めばお風呂1回分のお湯ぐらいは出せると思う。それでもなぜやらないのかといえば、いつ、何が起きるかわからない冒険中にそれをやることなんて出来ないからだ。
私が戦慄していると、彼女は魔力は殆ど使わないという。彼女曰く「電気」という力を使ってるという。どうやらハンスが触って死にかけたのもこれらしい。
確かにお風呂を作る為の魔力量を賄う力なのだとしたら、それはとても大きな力なはずだ。私だって強大な魔法を使ってる最中に下手に干渉されたら暴発して大変なことになるだろう。
そう考えたら、彼女は何も悪くない気がしてきた。不注意なハンスが悪い。うん。
そう考えてると、彼女の説明も終わったようで、「すぐにでも入れる」と告げてくる。
私の答えは決まっていた。
そして今に至るというわけだ。
それにしても、お風呂気持ちいい……
彼女曰く、お風呂にはおんせんを引いているらしい。
おんせんというものはよく知らないんだけど、普通のお湯より、なにかがいいんだろう。
私は気持ちよくて、つい長風呂してしまった。
◆
マリンがお風呂に入っている間、私たちは話に花を咲かせていた。特にノスティと打ち解けて、かなり仲良くなった。
……ノスティと私ってなんだか似ている気がするんだよなぁ。それが何かはわからないんだけどね。
しばらくするとマリンがリビングに戻ってくる。
……結構長かったけど、気持ちよかったのかな?
「マリン上がって来たけど、次誰入る?」
「うーんと、ボクは最後でいいよ」
私がそう言うと、ノスティが譲ったので男衆で入ってもらうことにする。
一緒に入ることを最初は少々戸惑っていたようだけど、風呂が大きいことを説明したら納得してくれた。
◇
15分ぐらいすると風呂から上がる音が聞こえた。
早くない?と思ったけど、男ならそんなもんかと思い直す。
私とマリンとノスティで話していたけど、アランとハンスがリビングに戻ってきたので一旦話を切り上げる。
入れ替わりでノスティはお風呂に向かい、冒険者の残りは2階のそれぞれの部屋に帰る。
……私も最後に入ろうかな。
そう思い、私は着替えを用意するのだった。
◇
私がお風呂まで行くと、まだ中ではノスティが入っているようだった。
まぁ中は広いし、それにノスティとはさっきでかなり仲良くなった。私が入ってってもまぁ怒られはしないハズ。
そう思い私は着ていた服を脱いで裸になる。
「女の子同士、裸の付き合いと行こうじゃないか!」
そんなおっさんくさいことを言って、私は風呂場の扉を開ける。湯気が結構あって見えずらかったけど、扉を開けたことによって湯気が逃げたのか、視界が徐々にクリアになっていく。
そして、目が合った。
「「!?!?!?」」
丁度浴槽から出るとこだったノスティは、私を見ると顔を赤くして凄い勢いで身体を隠す。
しかし、私は見てしまった。
昔見なれていたモノ。
今の私にはないモノ。
女の子にある筈がないモノ。
そう。
ノスティに、アレが付いていたのを。
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