#21 TS美少女は爆裂魔法を放ちたい。
FA頂きましたありがとうございます!
前回も来た岩場に着いた私は、三脚を立てスマホをセットし、魔法の詠唱を始める。
今日再現するのは「爆裂魔法」だ。
言わずと知れた、究極の魔法である。
知ってると思うけど、爆裂魔法の欠点は、消費魔力が多すぎることだ。その点、魔力が無尽蔵な私なら多分発動できるだろう。なんだぁ簡単じゃん!
……そう思っていた時がありました。
「エクスプ○ージョン!」
私は放った魔法は、
カッ…ドォォンッ!
「あ、あれぇ……?」
なんかしょぼかった。
私が打った魔法は、一直線に飛んでちょっと爆発した。到底爆裂魔法とは呼べないような代物だ。この場に爆裂ソムリエが居たならば、多分0点だろう。いやいないけど。
……普通に攻撃魔法として考えればこっちで十分だと思うけど、爆裂魔法はロマンの魔法だ。そんな訳にはいかない。
そこを気にしたら爆裂魔法なんか再現できないし、いち原作ファンとして妥協は許されない。私が許さない。
「なんか違くね?」は絶対ダメなのだ。
とにかく1回作戦を考えねば……。
一時戦略的撤退!
私は回れ右をして一旦家に帰るのだった。
◇
翌日。
私はまた岩場に来ていた。
夜中に少し雪が降ったようで、昨日と変わり辺りは白色の銀世界。とても綺麗。
「へきちっ…」
……ちょっと寒いけど。
という訳で、Let's爆裂!
◇
昨夜一晩研究した結果、昨日の私が悪かった点は
①魔力の練りが足りない
②イメージが足りない
③厨二っぽい詠唱をしていない
主にこの3つだ。
魔力の練りは集中することが大切で、昨日はこれができていなかった。そしてこの世界の魔法はイメージの力と込められた魔力の大きさによってその出来が変わってくる。
そして③は巫山戯てるように見えて、実はこれが1番大切だったりする。さっきも言ったけど、この世界での魔法の発動には、イメージの力が欠かせない。爆裂魔法はいかにかっこよく打てるかが重要だから、爆裂魔法をイメージするためには、厨二心はとても大切なのだ。
私はそれを実行に移すために、昨日寝る前にこの○ばの爆裂魔法のシーンを鬼リピした。
そのお陰で、演出からSE、詠唱まで完璧に覚えることが出来た。おかげで寝不足だけど、深夜テンションじゃないとやってられない。頭空っぽにしてやろう。
「はーはっはっはっ!!!我が名はユナ!!ユナ・ナンシィ・オーエンッ!!異世界に転生せし者にして、数多の魔法を扱いし者!!」
私の中の厨二病が再発する。
後で思い返したら絶対恥ずかしくなるやつだろう。
でも今が楽しいから、OKです!!
深夜テンション最高!!ひゃっほい!!!
「黒より黒く闇より暗き漆黒にーーー」
音魔法を同時に使い、自分でSEを流しながら私は詠唱を続ける。かっこいいので、目の色を真紅に光らせる。なんだか紅○族になった気分だ。楽しい!
魔力が渦を巻いて私の周りを取り囲み、魔力の高まりによって、空間が震動する。私の持つ魔力を全て出し切る勢いで、魔法を練り上げていく。
「これが人類最大威力の攻撃手段!これこそが究極の攻撃魔法 !!
エクスプ○ーーージョンッッ!!!!」
詠唱が終わると同時に、私は魔力を一気に解放し、魔法を放つ。放った魔法は放物線を描きながら飛んで行き―――
爆裂する。
カッ……ドォォォォォォオオオオオオオンンンッッッッ!!!!
ブワッッ…バサバサ……
……これがあの爆裂魔法の威力……!
すごい……
「フッ…闇の炎に抱かれろ……!」
ドサッ
そこまで言うと、私は魔力を使い果たして地面に倒れ込んでしまう。
まあ地面には雪が積もっていたから岩で顔面を強打するということは免れたけど……
「冷たいぃ……」
それでも雪の冷たさによってほでっていた頭が冷やされ、冷静な思考を取り戻していく。
ここで一つ疑問が生まれる。
あれ?私には「無尽蔵の魔力」がある筈では?
そうなのだ。私もそう思ってたんだけど、調べたところそれがそうでも無いみたいで、私の持つ能力「無尽蔵の魔力」は、ひとつ欠点?があることがわかった。
どうやら「無尽蔵の魔力」は、「無制限魔力回復」と言った方が正しいかもしれない。つまり、「絶対量が無尽蔵」なのでは無く、「使ったそばから魔力回復しているので尽きない」ということなのだ。
だから、一気に使うと回復までに若干のタイムラグが発生ようである。
今回は一気に全部放出したから、回復までには15秒ぐらいかかるはずだ……と説明している間にも魔力が回復してきた。
感覚的にはこのぐらいなので、普段使いしてる分には問題ないと思うけど。うん。
最大魔力を使わないといけないようなヤバいことが起こるなんてそうそう滅多に多分絶対無いだろう……あ、これフラグっぽいな……。
……。
私は服に着いた雪を払い落としながら立ち上がる。
目標した目の前の山の斜面を見ると……
そこには巨大なクレーターができていた。
「……うわぁ……」
山肌には、私は本気で引いてしまうぐらいに、すごいクレーターが出来上がっていた。
爆裂魔法、ハンパない。
さすがに究極の攻撃魔法なだけある。
めぐ○んが爆裂狂なのも今ならわかる気がする。だって面白いもん。普段使いには向かないけど、たまにやったらすごく面白い。
だけど私の爆裂魔法はまだ75点ぐらいだ。
空間が振動していたのは魔力の変換の際にロスがあったからだ。まだまだエネルギーならぬ魔力変換効率が低いのであろう。
やっぱりめ○みんは毎日打ってるだけあるんだなぁと思い直す。
……また今度ちゃんと練習するとしよう!
私はそう思ってその場を後にするのだった。
それ後に大変なことになるとも知らずに……。
◇
私は箒に乗ろうとしたところで、私はまだスマホを回収してなかったことに気がつく。
危なかっ……ん?
「どこいった……?」
三脚に固定していた筈のスマホがどこにも見当たらないのだ。
サーチを使って探してみると、三脚は10メートルぐらい後ろに落ちていた。多分さっき爆裂魔法打った時の余波で飛ばされたんだろう。
スマホを拾った私は、画面にキズが付いてないか確認する。今回はどうやら大丈夫だったようだ。
しかし、今後も三脚を使うとなるとまた風で飛ばされてしまうかもしれない。
これは後でなんとかする方法を考えないと……
ちなみに確認したら動画はちゃんと取れていた。よかった。私はスマホを仕舞って、箒を出して跨ると一気に加速する。
「さむ!?」
前から風が吹きつける。
もう寒いを通り越して痛いの域だ。
そもそもうっすら雪が積もるという事は、気温は氷点下なはずだ。
……そりゃ寒いわけだ……
そういえば今日は向こうの世界では冬至だった。
今日の夜ご飯はカボチャ料理にして、温泉に柚でも入れようかな?
そう思いながら、私は家に帰るのだった。
◆
#伝説の動画紹介!!part136
今日紹介する伝説の動画はこちら!
「爆裂魔法を再現してみた!」
3年前 552万回再生 高評価52万 低評価2506
この動画は、現在ではようつべのチャンネル登録者数が100万人を超えた超人気ようつーはー「ユナ」が投稿した7本目の動画であり、最初に大バズりした動画です。
その内容は、「爆裂魔法を再現して放つ」というシンプルなもの。爆裂魔法は皆さん知っていますよね。動画時間は90秒程とかなり短くなっています。
この動画が伝説となったのは、「どう見てもちゃんと魔法を打っている」ということにあります。
この手の動画の場合真っ先に合成が疑われ、大体はどこかにその片鱗が見え隠れするもの。しかし、この動画にはそれが全くありません!
実際に爆裂魔法を打ってるとしか思えない圧倒的な臨場感は人々を困惑させます。
コメント欄では日々活発な議論が繰り広げられていますが、未だ合成であることの証明は出来ておらず、ユナが自称する「本物の異世界人である」に信憑性を増させる結果になっています。
投稿されてから3年、再生回数は未だに増え続けています――――




