#20 TS美少女は魔法を再現する。
その日私は動画を撮影するため、自宅から離れた森の奥を進んでいた。
今日はこの前リクエストを取った魔法をやるんだけど、多分大変なことになる。
だから普段よりも家から遠い場所を選んだ。
事前にサーチを使って「なるべく広く何もなく人がいない場所」を調べた結果、このあたりが良さげだったのだ。
家から4-5キロほど飛んできて、「そろそろ森を抜けるはずなんだけどなぁ」と思った瞬間、
森が切れて、私の視界に広大な岩場が広がった。
私は思わず箒を上昇させ、高度を取って辺りを見渡す。
「わぁ……すごっ」
私は小さく感嘆の息を漏らす。
あたりを見渡しても、岩ばかりで何も無い。
日本で言えば、嬬恋の鬼押出し園に近い雰囲気だ。
私の正面には山頂付近では既に雪をかぶったかなり大きめの山がそびえ立っていて、私を見下ろしていた。
私はそれを見て綺麗だなぁと一瞬見とれてしまう。
私は箒を岩場に下ろし、地面に足をつけて降り立つと、箒をしまい込む。
少し歩いてみると、岩場らしく少しゴツゴツした感覚が伝わってきた。多分あの山が火山か、元々火山だったんじゃないかな?地面の岩が明らかに黒っぽい。
しばらく周りを歩くと、岩場の中でも少し平らになっている場所を見つけた。
「っと……この辺でいいかな……。」
私はアイテムボックスから杖を取り出すと、魔法を発動させるべく、杖を構える。
ちなみにこの杖はこの間創造魔法でそれっぽいのものを作ってみただけのものだ。
両手持ちの大きめの杖だが、軽く作ったおかげで意外と持ちやすい。
正直杖はなくてもいいんだけど、杖が無いよりもあった方が気分が乗る気がするし、何より厨二心を刺激される。
今日これから私が再現する魔法は、完全にノリと勢いで決めた。だって絶対面白いもん。
私はスマホを三脚に固定すると、カメラを起動してセットする。これで準備は完了。
今回発動する魔法は、ネ○まのエ○ァン○ェリンが使う、大地を凍らせるやつ。この岩場を永遠の氷河にするつもりはないので、今回は少し自制して(?)この魔法を選んだ。
この世界の魔法はイメージがあれば大体発動できるようなので、私はその魔法のイメージをしながら魔力を練り上げていく。
実際には発動にはそれ相応の魔力が必要らしいけど、私には関係ないね。
「来たれ氷精
大気に満ちよ。」
詠唱はしっかり原作通りにやる。あくまでも今回は再現なのだ。
ひんやりしていたのが寒いと感じられるぐらいに気温が下がり、強大な魔力の力によって、空間が振動する。
……ktkr!!!
「白夜の国の凍土と氷河を!!」
魔力の高まりが最高潮に達した時、私は魔法を放つ。
ヒュッ…バリイイイインッッ!!!!!
思わず閉じてしまっていた目を開けると、目の前の岩場からは巨大な鋭い氷柱が突き出していた。
「うわぁ……すっご……」
録画を止めると、私は氷柱に近づいてみる。
今回は目標として私が適当に作った案山子を置いてあるんだけど、それが氷柱に貫かれてちょっと大変なことになっていた。
まぁ、攻撃魔法なんだから当然なんだけどね。
まあ普段使い(?)するにはこの魔法は強すぎるかな……
そう考えた私は、これを参考にして「氷結魔法」を創り登録しておく。
氷結魔法は氷魔法の発展で、その名の通り水を氷結させることで攻撃する魔法だ。決してチューハイが出てくる魔法ではない。
不意に強い風が吹いて、私は思わずくしゃみをしてしまう。
「へくちっ……さむぅ……なんで……?」
私がここに来た時は耐えられないほどの寒さではなかったのにと思ってから、目の前の氷柱を見て納得する。
この寒い中で氷魔法を放ったから、そりゃ冷えて当然であった。……私バカなのかな?
私は案山子を回収すると、一刻も早く自宅の温泉に入るべく、帰路につくのであった。
◇
数日後。
ようつべのチャンネルを確認した私は、めちゃめちゃ驚いていた。
「この前の動画めっちゃ伸びてんだけど!?」
この前私がやったあの動画がかなり伸びていたのだ。
ついたーのフォロワーは一気に倍増し、ようつべのチャンネル登録者数ももう少しで1000人というところまで行っていた。
1000人まで行けば収益化やライブなど、様々な機能が使えるようになる。それがもうすぐなのだ。嬉しくないわけがない。これに気を良くした私は、更にぶっとんだ魔法がやりたくなる。
ちょうどそこに、素晴らしいやつに出てくる、あの魔法をリクエストされる。
乗るしかないでしょ、このビッグウェーブに……!
私は浮かれながら、外出する準備を整えると、動画を撮影しにこの前の岩場へと向かうのだった。




