#18 TS美少女は世界を改変する。
ようつーばーへの道を閉ざされた私は、なんだか無気力になっていた。ソファーにぐでっと横たわり、スマホを見ている。
……やっぱネットはいい。面白いし、いくらでも時間が潰せる。そう思いながら2525を漁っていると、私はある動画を見ると跳ね起きる。その動画は、涼宮ハ○ヒの憂鬱であった。
こ れ だ
これこそが、現状を打破できるものであり、今私が求めていたものだ。……そんな魔法などない?
彼女だって「ないんだったら、作ればいいのよ!」と言っていたじゃないか。
私は魔法創造を使って、久しぶり大掛かりな魔法を創り出そうとする。
然し当然ながら必要とする魔力は大きく、複雑な魔法であるために、転移魔法を創った時よりも大きな疲労感に襲われる。
それでも私の魔力は無尽蔵にある。常人なら発動できない魔法だって発動できるのだ!そう思って、私は更なる魔力を注ぎ込む。
バチッ…バチバチ……
強大な魔力の変換によって、空間が震える。
それでも私は魔力を注ぐのをやめない。
全てはようつべ収益化の為に!!!――――
1時間ほど経過したあるとき、今まで注ぎ込んできた魔力が注ぎ込めなくなったことを知覚する。
魔法が完成したのだ。
「やっ……た……!」
私はそう思うと、疲れに一気に襲われて、そのまま眠ってしまうのだった。
◇
「現実を改変する」
数多あるチートの中でも、群を抜いてチートな能力だ。場合により私が元々持っていた「創造」よりも強い場合がある。
つまり、あったことをなかったことにできたり、なかったことをあったことにできるのだ。
私はこの能力を使って、「私は元々日本に住んでる」というふうに世界の理を改変しようと言う訳だ。
もしかすればこの能力を使えば「私は死ななかったし異世界に転生しなかった」ことにも出来るかもしれない。
だけど、今の生活やこの身体が気に入ってるのでそれはやらないし、やりたくない。
私は、いよいよ改変魔法を使おうとする。
しかし、何故か発動することが出来ない。
私が何回かチャレンジすると、脳内にいきなり無機質な声が響いた。
なんだろう?
きっとあれだ、多分世界の言葉的なやつだ。
「この魔法は世界に干渉するため、発動に使用権限が必要です」
使用権限ってなに?
「使用権限はその魔法を発動するのに必要な権限のことです。神、または神に認められた人間が持ちます。」
そこまで言うと、世界の言葉は聞こえなくなった。
つまり、改変魔法を使う為には神様に権限を認めてもらえばいいんだ!
とはいえ、神様に認めてもらうと言っても、会えなきゃ意味がn……いや、まてよ?
私は既に神様に1度会っている。
そして、会いに行く手段も持っている。転移魔法だ。
私の転移魔法の発動条件は、「1度以上行ったことがあり、自分がよく知っている場所の中から任意で選択」だ。
これは、行ける……!
私はそう思うと、転移魔法を発動させるのだった。
「転移!」
シュパッ
◆
僕はこの間の事故の後処理を行っていた。
居眠り運転をしたのは、下請けの死神運送であるが、僕が雇っていた以上責任は僕にある。
そもそも、元々トラックで飛ばすはずだった男は社会に嫌悪感を抱いているニートであり、ほっとけばもうすぐ大量殺人を起こすはずであった。
そいつはさっさとぶっ飛ばしてここに来させ、適当なチートを与えた上で、また別の異世界に送り出してある。
マッチポンプだけど、彼も喜んでいたからいいだろう。
だけど、この前の彼は別だ。彼は友達は少ないようだったけど、少なくとも普通に学校生活を送っていたのだ。
最高ではなかったかもだけど、幸せな人生。それを僕は奪ってしまったのだ。
「彼には悪いことしたよなぁ……」
いくらチートを授けて異世界に転生させたとはいえ、いきなり生活の全てを奪われたのだから、賠償を請求するのは当然の行為だ。チート能力とはいえ、僕があげた魔法は1つだけだ。もう少しおまけをしても良かったかもしれない。
そんなことを思っていると、目の前の空間が歪む。
そこに現れたのは、僕からしてみればついさっき送り出したばかりの彼、いや今は彼女であったか。
僕は驚いて固まってしまう。ここに来る、ということは彼女は死んだということだ。
いきなり異世界に放り出しておいて、サポート一切なしというのはあまりに酷だったかもしれない。
どんな罵倒が出るだろうか。酷い言われようでも、僕は受け入れなければならない。
僕がそう考えていると、彼女は開口一番こう言ったのだった。
「改変魔法の使用権限を認めて欲しいの!」
……えっ?
◇
どうやら、彼女は僕が与えた魔法を使って新しい魔法を創っていたらしい。人間の考えることはすごく面白い。
僕は彼女の使用権限を、改変魔法が使えるレベルまで引き上げる。その過程で身体にちょっと変化が起こったりもしていたけど、彼女は気づいてなさそうだし問題がある訳じゃないから別にいいだろう。
……そんなに簡単にあげちゃっていいのかって……?
だって数多ある並行世界のうちの1つがちょっと変わったところで別に問題ないし。
……いや、最近は多すぎて管理するのが面倒になってきたので、ちょっとぐらい減らしてもいいかもしれない。
僕はそう思うと、こっそり彼女の使用権限を「彼女が元いた世界」と「彼女が今暮らしてる世界」において神と同レベルまで引き上げておいた。
彼女は「ありがとうございます!」と言うと、また姿を消す。おそらくは転移魔法だろう。
僕はニヤけが止まらない。
ここまで面白い人間を見たのは何年、いや、何十年ぶりか。
面白い……!
そう考えた僕は、彼女をしばらくこっそり見ることにしたのだった。
◆
神様のところから帰ってきた私は、早速改変魔法を試す。
「改変魔法、現実。私の戸籍とかの辻褄を合わせて!」
私がそう言うと、私の頭の中に膨大な情報が流れ込んでくる。
それは改変した結果、世界がどのようになったかのリザルト画面であった。便利。
今回は、私一人の存在をねじ込むだけだったからそこまで大きな改変はなかったが、もっともっと大きな改変をした場合、世界が大きく変わることになるだろう。
最悪、改変後には全く違う世界になることだってあるかもしれない。
この力はそれだけの力を持っているのだよ。
……と神様が言っていた。
怖いからあんまり余計なことには使わないでおこう……。
◇
私が持った戸籍は、次のようだ。
ユナ・N・オーエン。18歳。
明らかに15歳前後の私が18歳になっているのは、ようつーばーで収益化するには18歳以上でないといけないからだ。
ちなみに親も親族もいないが、そこは神様能力で、そこを調べようとした人がいても、思考を誘導してそのことをどうでもよくするんだそうだ。
ちょっと怖いけど、これはすごくありがたい。
なんにせよ、これでようつーばーになれる!
やったね!!
私はそう思うと、今日の動画作成を始めるのだった。
◆
彼女を見ていた僕は、ふと呟く。
「改変使ってお金もってることにすればいいのに……」
と。
でも、またなんだか面白そうなことをしてるから何も言わないで、僕はまた彼女の行動を見守るのだった。
久しぶりに神様出してみました。
これからも出てくるかも知れませんし、出てこないかも知れません。
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