#12 TS美少女は魔法の箒で空を飛ぶ。
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翌朝。
空が少し白み始める、暁とか曙とかと言われる時間に私は起きる。
私の隣ではまだマーシャちゃんが寝息を立てていた。
寝顔がかわいすぎる。保存しときたい。
……そうだ!
私は思いたって、徐ろにアイテムボックスを開く。
「ええっと……?どこだっけなぁ……あった!!」
てってっれー♪スー↑マー↑ホー↓
そう、私が取り出したのは第5話で回収した私のスマホであった。
「電源、オン……!」
私はスマホを起動すると、マーシャちゃんの寝顔を撮影する。ちなみに起こさないようにシャッター音は切ってある。
ちなみに最近のだと今の私のように盗撮するのを防ぐためにシャッター音が消せないモデルも多いけど、私の使ってる端末はちょっと古いモデルなのでシャッター音は消せる。お陰でマーシャちゃんを盗撮し放題やっほい。
そういえば、もう充電があんま無い。ということで、私は急いで写真を撮って、撮り終わると私はスマホを再びアイテムボックスにしまう。
アイテムボックスには時間停止をつけてあるから、バッテリーが減ることは無い。……まあその代わり時計とかは狂うけど。
久しぶりにスマホを触ったが、やっぱりこれは楽しいものだ。魔法も面白いけど、やっぱり科学も面白い。ここには環境がないからネットが出来ないのが残念だ。今度魔法でネット環境の構築やってみようかな……?
時間があったならもうちょっと触ってたかったけど、今はそれどころじゃないことに気がついたのでベッドから起き上がり支度をする。
私の髪は結構長いけど、梳かすだけでサラサラになってくれるので楽だ。前世は癖毛だったからどれだけ苦労したことか……そんなことを考えながらテキパキと準備を進める。
今日の格好はいつもの魔法っ子スタイルだ。マーシャちゃんの格好を見る限り異世界ものによくあるような洋服だったので、これで浮くようなことはないだろう。多分。
それから、昨日見たマーシャちゃんの村の位置をもう一度確認しておく。マーシャちゃんの村は、私の家からは20キロぐらい西に行ったところにある。
流石に歩いていくのは私でも厳しいから、移動手段には別の方法を使う予定だ。それは後でのお楽しみ。
私の準備が出来たので、マーシャちゃんを起こす。最初は寝ぼけていたようだったけど、だんだんと意識が覚醒するにつれて状況がわかってきたようで、「ユナおねえちゃんおはよう」と言ってくれた。かわいい。
◇
マーシャちゃんの身支度を済ませ、私達はリビングへと移動する。
ちなみに今はマーシャちゃんが昨日着てた服を洗濯して着せてるけど、私特製のパジャマや下着も大層気に入った様子だったのでプレゼントした。
荷物が重くなるので、今は私のアイテムボックスの中に入っている。
朝食は私は簡単なサンドイッチを作り、それを2人で食べる。本当ならもっと色々ちゃんと作るけど、今は時間が無いからこれでいいだろう。
朝食を食べ終わったら、出発前にトイレなどを済ませておく。たとえ私が美少女でも一昔前のアイドルでは無いのでトイレには行く。
女の子の身体になってから初めてトイレに行った時は結構ドキドキしたけど、今は特に何も感じなくなった。
まあ出る位置が変わっただけで、座ってすること自体は別に新鮮でもないから慣れてしまえばそれだけである。
ちなみにマーシャちゃんが我が家のトイレにすごく驚いていた。聞けば家のトイレは所謂汲み取り式であるらしい。
確かに、文明の低い異世界ではありがちだと思う。
……でも私的にはそれはちょっと、いやかなり嫌である。
もし外泊する機会があったらトイレは水洗のところにしよう、密かにそう思ったのだった。
◇
家の外に出てきた私は、歩き出すことなくその場で立ち止まる。
「あるいていくんじゃないの……?」
とマーシャちゃん。まあ見てなって。
「創造魔法!空飛ぶ魔法の箒!」
魔女らしく空を飛んで行こう、そういう訳である。
ドヤ顔をした私がふと見ると、マーシャちゃんが目を輝かせていた。その眼差しは最初は箒に、そして次に私に注がれる。
これは後でわかったことだけど、箒で空を飛ぶというのは物語の中では定番でも、実際にそれができるのは「きゅーてーまどーしさま」ぐらいなんだそうだ。
「きゅーてーまどーし」とうのは多分宮廷魔道士だろう。宮廷魔道士が居るということは、宮廷がある、つまり王政なのだろう。まぁ異世界の定番だよね。
だからそれをいとも容易くやる私はすごいと認識したのだろう。んへへ……もっと褒めてくれていいんだよ??
ちなみに今回使うのが箒なのは、あくまでマーシャちゃんを載せるからであって、別に一人の時は箒を使わなくても飛べる。
……この前初めてそれをやった時、調子に乗ってアクロバティックしてたら、方向感覚を失ってすごい高さから落ちて、いくら「強靭な肉体」を持つ私でもちょっと生命が危なかった。
咄嗟にハイヒールを創って自分に掛けなかったら危なかった。
……もうちょっと慣れるまでは無茶な飛び方は自重しようと思う。
◇
マーシャちゃんを前に乗せると、しっかり捕まってるよう言い、箒をゆっくりと浮かせる。
おぉ……これはなかなか。初めてやったけど意外と直感で操作できるので、思ったよりは難しく無さそう。
木々が見下ろせるぐらいまで上昇すると、ゆっくり加速を始める。……加速すると前から結構風が来るので、目が痛いし風切り音がうるさい。
マーシャちゃんはどうしてるかな……と見ると、目をつぶっているみたい。操縦しないならそれが正解だね。
私は咄嗟に防風結界を前方に張る。すると、今まで吹き付けてきていた風が嘘のように無くなった。
マーシャちゃんはようやく目を開けて、辺りを見回す。
刹那、後ろの方から光が差し込んできた。日の出だ。
日の出を地平線から見る機会はそれほど多くはない。朝焼けの色に染まった空は、言葉にできないほどに美しい。
多分ここが森で、空気が澄んでいる事も関係しているのだろう。
私達は、口を揃え
「「きれい」」
と呟くのだった。
◆
「メリザさんとこのマーシャちゃんが日が暮れても戻らない」
メリザさんに恩がある俺は、それを聞くなり、真っ先に動いた。
マーシャちゃんは人口が少ないこの村の、知らない人はいないであろうアイドル的な存在であったため、この話は瞬く間に広まった。
村の人々が広場に集まり、口々に情報交換する中で、マーシャちゃんと歳が近いアラン君が、朝マーシャちゃんが森の方に歩いていくのを見たという。
その情報により「マーシャちゃんは森に入って、きっとそこで迷ったんだろう」という仮説が立てられた。
そしてその理由も、なんとなくだが予想がつく。
おそらく、マーシャちゃんはお母さんのメリザさんを助けたくて、食べ物か薬草を取ってこようと思ったのだろう。
父親が早くに他界し、母子家庭であるメリザさんのとこはそれでも頑張って生活をしていた。しかし、無理が祟ったのかここ最近母親であるメリザさんが体調を崩していた。
思い返してみれば、昨日会ったマーシャちゃんはどこか思い詰めたような顔をしていたように感じる。
もっと俺が気にかけてやれば……
そう思っても後の祭りだ。
しかし、探しに行こうにも夜の森は非常に危険であるため、捜索隊は明日の朝、朝日が登るまで待機せざるを得なかった。
そう、夜の森は危険だ。それに怪我をしてたり、力尽きて倒れてしまっている可能性だってある。
そう考えると、今すぐに助けに行けないことが悔しくてたまらなかった。
◇
翌朝。
俺は日が昇ると同時に飛び起き、昨夜準備していた装備を身につけて、広場へと向かう。
そこには、マーシャちゃん捜索隊として村のだいたい四半分の人数が集まっていた。
まもなく、出発の時になる。その時だった。
東の空から太陽の光と共に、何かが高速で近づいて来る。敵襲か!?との声も上がるが、俺はどうもそうには思えない。
それは徐々に減速しながら、俺たちの前に降りてくる。そこには、二人の人影があった。そして俺はそれを見て、安堵のため息をついたのだった。
なぜならそこに乗っていたのは、他でもない、マーシャちゃんなのであったから。
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