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動き出す

「……それで姉さん。私に何を伝えたいんだ……?」


 いつもとは違う、素の口調で尋ねる等依(とうい)琴依(ことえ)が朗らかに答える。


「あんねー? めっちゃいい案浮かんだんよ~! 等依ちゃんの式神、火雀応鬼(かがらのおうき)たんと氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)たんをさ……」


 そこまで区切ると、琴依は等依に耳打ちをする。それを聞き終える頃には、等依は驚きで固まっていた。


「そんな……ことが……? でも、それでも退魔術式が使えないことに変わりは……」


「等依ちゃーん? 忘れてるっしょ。大事なことー」


 琴依に指摘され、等依が首を傾げれば彼女は優しい笑みで一言告げた。


「ワタシちゃん達の生き方は~自分達で切り開く! ってあの時に指切りげんまんしたでしょーが~。だから、ね? ワタシちゃん達なら……いや、姉弟だけじゃなくって、仲間達もいれば……それで御の字じゃね?」


 等依の目に光が宿る。


「……そうっスね……。確かにそうだ。私は……オレちゃんてば大事なこと忘れてたっスよ……。うんと、その……ありがとう姉さん」


 ようやく素直になった等依に、琴依が優しくハグをする。その温もりが嬉しかった。


 ****


 同刻、某所にて。


李殺道(りつーうぇい)藤波(ふじなみ)家の行方は未だつかめず……か。困ったものだ」


「どうなさいますか、市長」


 秘書、百合芽(ゆりめ)に問われた黒樹(くろき)市現市長、彪ヶ崎信護(あやがさきしんご)は市長机に腰掛けながら答える。


「こちらの手札であるトクタイにひとまずは任せようじゃないか。なぁに、今年は鬼憑きに蒼主院(そうじゅいん)と豊作なんだ。上手くいくさ」


 微笑むと信護は静かに百合芽が入れたお茶をすする。


「うむ、やはり美味しいな。君が入れた茶は」


「もったいないお言葉です。では、予定通りに。……いいですね?」


 突然話を振られて、()はいつも周囲に見せる柔和な笑みも優しい声色もなく、ただ冷たく言い放った。


「……借りは必ず返しますよ。市長。蒼主院家の使いとしても……トクタイの人間としても、ね?」


 それだけ言い残すと、ルッツは部屋を後にした。その背中を見送ると、百合芽が静かに口を開く。


「……あの男、好きにさせてよろしいのですか?」


 信護はそんな百合芽に微笑みで返すと、お茶を再度すするのだった。


 ****


 トクタイ、演習場にて。


「貴様ら! そろそろ時間だ!」


 Eチームと緋雲(あけくも)、計八人が齋藤の声で一斉に動きを止めた。そして一通り見渡すと、齋藤が満足げな声を上げる。


「うむ! 得る物は互いにあったようだな? では! 解散し、休め! 良いな!」


 五奇(いつき)麗奈(れいな)のそばにより、彼女に礼を伝える。


「その……ありがとうございました」


「いえいえ。素敵な殿方にならいくらでも! わたくし、こう見えて尽くすタイプでしてよ? その……」


 麗奈が続けようとした時だった。五奇の背後から、怒気を含んだ声がする。


「五奇! なに女口説いてんだ! んな暇あるわけねーだろうが!」


 鬼神(おにがみ)の思ったより近くからの声に、五奇は苦笑しながら振り向く。


「あ、鬼神さん。その、口説いてるとかじゃないからさ……」


「あら? わたくしはそのつもりでしたけれど?」


 あっさりと告げる麗奈に、五奇が目を見開いてなにかを口にしようとした瞬間には、鬼神に襟首をつかまれ引きづられていた。


「ちょ! 鬼神さん、苦し! 歩きづら!?」


 そんな二人の様子を見て、麗奈がボソリと呟いた。


「ぐぬぅ……恋敵現る。ですわね……!」

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