潜在解放について
麗奈から金の術式の本質を聞いた五奇は、困惑の色を濃くした。
「武器の潜在解放って……。どうやるんですか?」
訊けば、麗奈は鉄扇を見せつけるように開く。
「見る方がお早いですわね。御覧なさい! 金の術式解放!」
麗奈の鉄扇が分離し、彼女の周囲に浮遊する。
「壱銘、斬葬・乱!」
四方八方に飛びながら、演習場においてある人形に向かって次々と刺さって行く。それを見て、五奇は思わず息を飲んだ。
「これが……解放……!」
「うふふ。そうですわ! もっとも、これはわたくしのこの鉄扇、白金猫においての解放の仕方です。貴方のその独特な武器であれば、また違った潜在解放になるはずでしてよ?」
麗奈の言葉で、五奇は自身の武器である参弥と輪音を見つめる。この二つはルッツからプレゼントされたものだ。
(そういえば、なんで銃と剣が合体している武器なんだろう?)
疑問に思っていると、麗奈が口を開く。
「ご自身の武器がどうかしまして? まぁ特徴的ですが、バランスは良いのがおのれ蒼主院のセンスってところですわね……」
「バランス……ですか?」
五奇が訊けば、麗奈が続ける。
「あら? 退魔術式は陰陽術を独自解釈したものだというのはご存じでしょう? 陰陽とは陰と陽。つまりは二つの属性のバランス、いえ、二対のバランスを保っているとも解釈できるのですわ」
「なる……ほど?」
「わたくしの見立てにはなりますが、銃と剣、短剣と長剣。この相反するものを組み合わせることで二対のバランスを、より効率的にしているものと思われますわ」
麗奈の説明に、五奇は今まで疑問に思っていたことの一つが解決した気がした。
「なんでこんな扱いづらい武器なんだろうって思ってたけど……ちゃんと意味、あったんだな……」
思わず呟けば、麗奈がにこやかに五奇を見つめてくる。
「えっ? なに?」
「いえ、素直な殿方は嫌いじゃありませんわよ? 年も近そうですし……わたくしのことを麗奈さんと呼ぶことを許可します」
突然のことに五奇が言葉を返せずにいると、麗奈が不満そうな顔をする。
「五奇さん? よろしくて?」
「えっあ、はい! て……麗奈さ、ん!」
困惑しながらもそう返せば麗奈は満足げな顔をする。
「では、五奇さん。貴方の武器の潜在解放、やり切りましょう?」
そう声をかけられて、五奇は思わず気合が入る。
「は、はい! よろしくお願いします!」
素直に伝えると、麗奈が更に嬉しそうな顔をする。
「ふふふ。やはり、素直な殿方は素敵でしてよ? 気に入りました。どこまでもお付き合いいたしましょう!」
「あ、いや。どこまでもは……大丈夫です」




