模擬戦闘その一
「それじゃあー五奇ちゃんと麗奈ちゃん、空飛ちゃんと美珠ちゃん、鬼神ちゃんと雅姫ちゃんでワタシと等依ちゃんってゆー感じでどーよ? ワタシちゃん的にはさいっこ~の組み合わせきたー! って感じなんだけどにゃ~?」
演習場に着くなり、そう提案する琴依に誰も反論しなかった。いつもなら真っ先に反論しそうな鬼神は静かで、麗奈も納得したらしく深く頷いていた。
(この感じだと、Cチームもとい緋雲のリーダーは琴依さんなのかな?)
五奇がそう思っていると、等依と目が合った。彼は気まずそうに視線をずらすので五奇は思わず目を瞬かせる。
(こんな等依先輩、はじめて見たな……。お姉さんの前だから? それとも……)
「さぁーて、それぞれでやっりますかにゃー?」
琴依の声で、それぞれがペアになる。結局、彼女達におし切られてともに訓練を行うことになったのだ。教官達にはすでに緋雲達が話をつけていたらしく、齋藤からも許可がすぐにでて、今に至るのだった。
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(等依先輩、心配だなぁ)
五奇が遠くにいる彼らを見ていると、麗奈が頬を膨らませながら、五奇に向かって大声を張り上げた。
「ちょっと!? わたくしを無視しないでくださる!? レディを前にして……無礼でしてよ!?」
「あっ……ご、ごめんなさい! 無視とかじゃないんだけど……」
五奇が謝れば麗奈は鼻をふんと鳴らしながら、少し距離を取り武器を構える。
「さて。五奇さんでしたわね? 貴方、金の術式を扱うとお聞きしましたが、その本質は存じていて?」
鉄扇を口元にあてながら尋ねる彼女に、五奇は困惑する。
「……本質?」
五奇の態度で何かを察したらしい。彼女は盛大にため息を吐くと、額に手を当てた。
「はぁ……これだから蒼主院は! しっかりと説明をなさい! いいですこと!? わたくし達が使う金とは、ズバリ鉱物を表しているのです! それがどういうことかおわかりでして!?」
「えっ……いや? 使う武器に依存するから、金属加工された武器を使った方がいいとは聞いて……ましたが……」
五奇が答えると、麗奈が更に呆れた声を出す。そしてはっきりと告げた。
「いいですこと? 武器に依存するということは……その武器の潜在能力を極限まで解放できるということでしてよ?」
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その頃。
空飛と美珠は、互いに視線を合わせながら武器を各々構えていた。
「では、模擬戦闘と参りましょうでございます! 何卒よろしくお願いたします! はい!」
「わっちこそよろしくでありんす。では、いざ!」
空飛は翅剋と羽刻を、美珠は数珠を構え、動き出した。




