緋雲
(上……トクタイの上って一体?)
再び静かになった待機室で、五奇は考えるが思考が上手くまとまらない。教官への不信感、等依の態度、サーシャからもたらされた情報で突如出て来た牙王・售月という謎の存在。
ここのところの情報量の多さに辟易していたのもあるだろうが、とにかく、なにがどう繋がるのかまるでわからない。
黙りこくっていると、右肩を突然小突かれた。驚き、そちらへ視線をやれば鬼神が思ったより近くにいて更に驚いてしまう。
「お、にがみさん……?」
「……五奇。等依のヤツの様子が、どんどんおかしくなってっぞ?」
言われて等依の方を見れば、彼は静かに遠くを見つめていた。その目に、光はない。異様な雰囲気にしり込みしていると空飛が等依に声をかけた。
「等依さん? どうなされたのでございますか? お身体の具合でも?」
「……あ、いや。そーいうわけ、じゃ……」
言い淀む等依に不思議そうな顔をする空飛に、それを見守る五奇と鬼神。その静寂を打ち破ったのは……突然の来訪者達だった。
「やほー? 予想通りだね~等依ちゃん? それからおっひさ~でもないかー? Eチームの諸君、ワタシちゃん達がきったぜい? ドヤ!?」
その声の主は琴依だ。彼女はマイペースに伸びをしながら室内に入るなり、等依の近くに寄って行くと彼を思い切り抱きしめた。突然の出来事に目を見開く等依に対し、彼女は先程とは打って変わり優しく落ち着いた声色で語りかけた。
「……等依ちゃん。ウチらはウチらのやり方で生きてこーよ? 確かにおかーさまの事は辛いし、等依ちゃんの体質も辛い。だっけ~ど、ね? ウチら今、たった二人じゃあないんだよ?」
琴依の言葉に等依がハッとした顔をするのが、五奇達からもわかった。
「等依先輩! 俺達……じゃ、力になれませんか? 役立たずですか? 俺は……俺は! もう等依先輩も鬼神さんも空飛君も! 家族、だから! これからもやって行きませんか!?」
自然と言葉が溢れ、思いの丈を懸命に伝えてくる五奇に等依の目に少しだけ光が宿る。それを黙って見守っていたらしい、緋雲の他の三人も室内へと入って来た。口を開いたのは、麗奈だ。
「……まぁ。同じ天大路の血を引く者としては、貴方達についてはわたしの中では許容範囲ですし? 少しくらいならお力になって差し上げてもよろしくてよ!」
「はっ! えらそーに言いやがって……! 等依はしらねーが、俺様達に力借りる覚えなんてねぇぞ!」
鬼神が反論すれば、喧嘩腰になりそうな麗奈を制止して一歩前に出たのは雅姫だった。
「……理解求む。我ら、補い合う必要有と判断。理由、血と技術也」
言い切ると頭を下げる雅姫の態度に、鬼神は困惑し麗奈が憤慨する。
「どうしてわたくし達が頭を下げなければならなくって!? 確かに、同じ金の術式を扱う者として黙っていられなかったのは事実ですわ? ですけれど!」
声を張り上げる彼女に対し、美珠がなだめながら告げる。
「わっち達も伸び悩んでおりなんし。ここは互いに手を取り合う状況と思うでありんすよ?」
「でーすーかーら! わたくし達の方がランクも上なのです! なぜ頭を垂れたのかと訊いているのですわ!」
賑やかな彼女達に、等依以外の三人は困惑するしかなかった。




