業と二人
その頃。自室で本を読んでいた等依は、ため息を吐いた。あの話をルッツから聞いてから、どうにもいつもの自分になりきれない。
「……蒼主院の業……か」
ルッツから……いや、一番目の兄、輝理から大まかな話を聞いた。鬼神家に先祖がしたことそして……。
だからだろう。嫌でも自分を卑下し……辛くなる。
「……退魔術式を使えない体質である私にできることは……あるのだろうか?」
普段の口調ではない素の自分に、面白みのない自分に……等依は苦笑しながら本を読む手を止め、ベッドへ入った。
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一方。フリーホラーゲームを自室でプレイしていた空飛のスマホに着信があった。
「ん? なんでございましょうか……?」
プレイする手を止め、スマホを手に取り見てみると齋藤からだった。
(教官から直接メッセージなんて……なんだろう?)
不思議に思いながら、メッセージを開くとそこには一言こう書かれていた。
『日暮サーシャが面会を希望しているとのことだ』
その字面を見た空飛は、すぐに返信をする。答えはすでに決まっていた。
『いつ面会に行かせていただけますでしょうか?』
そうメッセージを返すと、空飛は再びゲームに没頭する。
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翌日。他のメンバーに事情を話した空飛は、単身サーシャの元へ向かうことにした。思ったよりも早くの面会に、空飛は驚いたが、急を要するということで特別に許可が下りたのだ。
収監所はトクタイ本部の地下にある。
長いエレベーターに乗り込み、案内役とともにサーシャが収監されている牢まで向かう。無機質な壁に、妙な静けさが辺りを包んでいた。
(ホラーゲームというより、サイコゲームのようでございますね?)
不謹慎ながら、そんなことを考えてしまう。いや、無理矢理にでもそんなくだらないことを考えないと、この空気に飲まれそうだったのだ。
(……ここは、気持ち悪い妖力を多く感じる……不快でございますね)
自身の半身がそんなところに身を置いていると思うと、余計に複雑な心境になる。そう思っているうちに、目的地にたどり着いた。
看守監視の中で、いよいよ自身の半身、サーシャと……対面した。彼女は白い服を着用し、両手に拘束具を着けられた状態で、椅子に座っていた。
「やぁ……僕? 会えてうれしいよ……」
相変わらず空飛をそう呼ぶ彼女を気にすることもなく、空飛はアクリル板ごしに会話を始めた。特殊な術が組まれたこの板が、彼女との距離を示しているようで、空飛の心はざわついた。
「……サーシャ。一応、今の僕には空飛という名前がございましてですね……?」
「知ってる。でも、僕も僕も黒曜なんだからいいだろう?」
嫌味も含んでいるのだろうか。そんなやり取りから、二人の会話は始まった。




