翌朝になって
翌朝。
九時前だというのに、すでにEチームの四人は部屋に集まっていた。
「おっは~。五奇ちゃん、空飛ちゃん、鬼神ちゃん、みんな顔色よさそうっスねー。あ、ちな、オレちゃんも元気っスよー?」
すぐに全員の体調を気遣う等依に五奇は、
(この人の方が、リーダー向いてるんじゃ……?)
そんなことを思ったが口に出すのはやめ、そのかわりに等依含めた三人に向かって声をかけた。
「みんな元気ってこと、ですかね?」
「それは何よりだ。初日からバテられていては話にならん。おはよう」
五奇の声とかぶって耳に入ってきた齋藤の声に、全員が驚いた。
「きょ、教官……いつ、その、いらっしゃったのでこざいましょうか?」
空飛が訊けば、齋藤は表情一つ変えずに答える。
「気にするな。 では早速、これからのことを話す! 前に部屋の設営を行う! 全員、協力するように!」
言われてようやく、この部屋にゴミ箱以外なにもなかった理由を理解した四人だった。
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「なんっで、俺様がこんなことを! クソが!」
文句を言う鬼神を見ながら、五奇も荷物を運んでいた。とは言っても、大きかったり重たかったりする机などは、等依が使役する"簡易式神"という術で運んでもらっているのだが。
「等依さんの式神さん達、とても便利でございますね……大変助かります。はい」
素直にお礼を述べる空飛に、等依があっさりとした口調で答えた。
「んん~? べっつに~? そんなことないっスよ! 気楽に気楽に~」
次々と折り紙でできた式神達を操って行き、等依が配置していく。おかげで五奇、空飛、鬼神の三人は小物を配置していくだけでよかった。
入口付近にソファーとローテーブル、壁際と窓際に二つづつ机と椅子のセット、そして間接照明や観葉植物や各々の荷物を置き、設営が終わったのは昼頃だった。
「ふむ、このような配置か。さてと昼だが貴様らはどうする? 食堂や売店があるが?」
設営を見守っていた齋藤が声をかければ、鬼神が真っ先に口を開く。
「あ? 馴れ合うつもりなんざねぇわ! 飯は勝手に食うわボケェ!」
彼女の言葉に等依がなだめるような声色で、
「お~、鬼神ちゃん? オレちゃん達、チームなんスよ~? 協調性、協調性ー」
「るっせぇ! 殺すぞ! イライラすっから行くわ、バカ共が!!」
鬼神は悪態を吐くとさっさと部屋から出て行ってしまった。しばらくして空飛も、
「あの、僕も食事は一人派でございまして……はい。なので、その、失礼いたします。また、のちほどお会いいたしましょう」
丁寧に頭を下げて部屋を出て行く彼に何も返せず、五奇は唯一残った等依と顔を見合わせる。
「どーするよ、リーダー? 今んところバッラバラなんスけどー」
「あははは……どうしますかねぇ? いや、ホントに……はぁ」
今日は二人とも弁当だとわかったため、設営したばかりの部屋で食べることになった。齋藤は十三時から説明すると言い残してどこかへ行ってしまった。
「えっ? 五奇ちゃん……それ……弁当?」
早速ソファーに並んで座り弁当を同時に開けた瞬間、等依が五奇に対して困惑した声で声をかけた。
「そうですけど……どうしたんですか?」
「いやー五奇ちゃんも、なかなかキャラ立ってるなぁーなぁーんつって?」
「は、はぁ?」
不思議そうに首を傾げる五奇の弁当は、焦げた何かにボロボロのおにぎりのような物体が入ったものだった。
「うーん? オレちゃん的には嫌いじゃないっスよ? うん。健康的にどーかわっかんねぇースけど」
「健康的に? よくわかんないですけど、まぁ食べますか?」
「……そうっスね~。んじゃぁ、いっただきまーす!」
「いただきます」
弁当に手を合わせると、二人は食事を開始する。なお、等依の弁当は一回り大きめで、中は梅干しが乗っかった白飯に、ふっくらとした卵焼きと炒めたピーマンとベーコン、そしてプチトマトが添えられていた。
正反対な弁当を食べ出すと、五奇が少し小さめの声でぼやく。
「……ちょっと失敗したなぁ」
等依が口に含んだ水を吹き出しかけていたが、五奇は気にせず食事を続けた。