わかれて
「……汀、様……」
五奇が小さく言葉を漏らせば、汀が穏やかに微笑む。そして、話を続けた。
「ありがとう五奇殿。……さて、わしのことはここら辺にしておいてじゃな。退魔師であったはずの藤波一族がなぜ、かようなことをし出したのか? それはのう……鬼神家の存在じゃよ」
ガタリと鬼神と柩が椅子を揺らしたのがわかった。二人とも真剣な眼差しで汀の言葉を待っている様子だった。ゆっくり頷くと、汀がはっきりと告げた。
「鬼神家という……ある意味最強の人造妖魔を創り出されたことで、藤波一族は退魔師として衰退してのう? そして……」
「愚かにも、二番煎じにしかならんにもかかわらず、実験をし出したということか!」
椅子から立ち上がり、大声を上げる両我を等依が空虚な瞳で見つめる。それを煩わしそうに柩が口を開く。
「……うるさいわよ、両我。汀様のお話を区切らないでくれない? ……汀様、続けてくださいな」
そう彼女が言えば、両我が珍しく押し黙る。珍しい光景に思わず灰児が声を発した。
「珍しいな! 柩に負ける両我とは! うむ、よくわからないが、たまには悪くないな! っと失礼した! 続きをどうぞ!」
そんな光景に微笑む汀に変わり、ルッツが話を続ける。
「さて。汀様からの説明はこれでいいかな? 妖魔と藤波一族については今の説明をもとに調べてみよう。次が……おそらく一番の謎だろう。李殺道と藤波一族だね」
「……そうだな。正直言ってまるでわからん……。そこで提案がある。この三つをそれぞれのチームで受け持つというのはどうだ?」
齋藤の提案に、ルッツが頷いた。
「そうだね。そうしようか? じゃあ……」
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「俺達は、李殺道と藤波一族の関係について……か」
里から抜ける道を齋藤の運転する車の中で、五奇が呟いた。その声に反応したのは空飛だった。
「五奇さん、よろしいのでございますか? その、仇の方を追いたいのでは……?」
「はは。正直……あるよ? でもね……俺は……なりたいものが、あったんだ。それは……仇に執着する姿じゃないんだ……。だから……その……」
歯切れの悪い五奇を珍しく鬼神がフォローした。
「空飛、そこらへんにしとけ。……色々あんだろうよ」
珍しい気遣いに、五奇が小さく笑った。すると、今までずっと黙っていた等依が口を開いた。
「……空飛ちゃんこそ、玉髄、置いてきちゃってよかったんスか? お友達なんしょ?」
そう問われた空飛は、少し視線を彷徨わせながら答えた。
「……ああなってしまっては、どうしようもなく……。その、救うためにもまずは敵を知りませんと。はい」
「……そう、っスか」
微妙な空気に包まれながら、彼らを乗せた車は黒樹市内へと入って行った。




