繋がり
「では議題は三つかな? 一つ、虎雷雅君達……いやあえてこう言おう。媒体者達について。二つ、藤波家と妖魔との関係。三つ、李殺道との関係。以上にある者はいるかい?」
この場を仕切るのはルッツだ。彼はテキパキとどこから持ち込んだのかホワイトボードに書き込んでいく。そこで手を上げたのは麗奈だった。
「おありでしてよ、蒼主院の方? わたくしの家系についても共有しておいた方がよろしいかと。あ、先に言っておきますわ。わたくしに恥もなにもなくてよ! 堂々と天大路を名乗りますわ!」
「……そうかい。じゃあまずは……君の家について語らせてもらうことにしようか。そうだね……単刀直入に言うと、麗奈君の一族は……現在の妖魔王、"始まりは嘆きから”の人間だった頃の血を引いている一族と言われているんだ」
ルッツの言葉に、何人かが声を上げる。まさかここで妖魔王が出てくるとは思わなかったからだ。その反応を気にすることなく、ルッツは続ける。
「現在の妖魔王と藤波一族については……今は繋がりがわからないから、末裔がいることだけ覚えてくれればいいよ。もちろん、心強い味方として。まぁ妖魔王と藤波一族はなにかしら関わりはあるだろうけどね? あ、ちなみにだけど……五奇君にとっての仇の名前がわかったよ。一すずめというらしい。彼と妖魔王との関係も、調べる必要がありそうだ」
「なっ!?」
唐突に仇の名前がわかり、困惑する五奇にルッツが優しい視線を向ける。
「まぁここら辺はおいおい……ね? さて、議題に入ろうか?」
ルッツはさっさと話題を切り替えてしまう。置いてけぼりにされた五奇はただ困惑するしかなかった。
「さて、媒体者達というのは藤波一族が集めた孤児達の総称のようだね。そして……実験の被検体だった。ここはまぁ彼らの治療と解析でこちらもおいおいかな? で……重要なのは一すずめとその部下と思わしきスカーレットという妖魔との繋がりと、李殺道を藤波一族も探していた理由だね」
「そうねぇ。そこについては疑問しかないわねぇ? 藤波一族は元々蒼主院と対をなす退魔の家系だったはずよぉ? それがどうしたら……こんなことをしでかすのかしらぁ?」
由毬の言葉に皆が考えこむ。言われてみればその通りで、疑問しか浮かんでこない。そこへ、Eチームにとっては聞きなれた声がした。
「ふむ。それについてはわしから説明させてもらおうかのう?」
辰智とともに汀が入って来た。元気そうな様子に、五奇達Eチームがほっと息を吐いた。汀は会議室にいる全員を満遍なく見渡すと、静かな口調で語り始めた。
「まず……わしと藤波家のことを話そうかのう。わしは……人間だった頃があってな? いやもっと簡単に言おうぞ。わしは……人身御供で捧げられ神として人為的に祀られた……藤波家の忌子であった」
そう口にした汀からは、なんの感情も感じられなかった。




