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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
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思わぬ再会

 その頃。

 里を探索していた等依(とうい)空飛(あきひ)に、残りのAチームと緋雲(あけくも)のメンバーは屋敷の奥、暗く淀んだ空気の中にいた。

 そこは窓もなく照明もなく、真っ暗な大部屋だった。

 先を行く齋藤が、手にしていた懐中電灯を点け辺りを照らす。


「なっ……んでございましょうか……これは……」


 不快さで声が震える空飛の横で、麗奈(れいな)が憤慨しながら声を上げる。


「おそらくは、()()()()()()()()というところかしら? 妖魔を無理矢理結び付けた先……その末路がこれということなのでしょう。全く! 赦せませんわ!」


 目前に広がるのは、苦悶の末であろう歪に折れ曲がった体勢の獣とも人とも取れない骨の山。そのどれもが、錆色に染まっている。


「……つまり……あの虎雷雅(こらいが)とか言ったか? その連中もいずれこうなると言うのか? だが、わからん! この不快極まりない藤波(ふじなみ)一族の所業と蒼主院(そうじゅいん)、どう繋がりがあるというのか!」


 両我(りょうが)の言葉に答えたのは齋藤だった。


「蒼主院両我よ。貴様、次期当主なのであればわかるはずだが?」


「オレちゃんもわかんねースけど……両我。もしかして……まだ()()()()()()()()()()()んスか……?」


 訝しげに訊いたのは等依だ。心なしか声に覇気がない。そんな彼に対し、両我はゆっくりと口を開く。


「……あぁそうだ。だから……知らん。(わたし)は……知るべきなのだろう。いや、知らねばならぬ!」


 両我が意気込んだ時だった。空飛が突然、大声を上げた。


「な、なんということでございましょうか!!」


 その声に驚くその場の全員の視線を無視し、空飛は骨の山をかきわけてひと際大きな骨の前へと向かい、その骨に触れた。


「貴方様は……いやお前は、玉髄(ぎょくずい)ではないか……。その身になにがあったのだ……?」


 玉髄と呼ばれた骨の口がゆっくりと開き、答えた。


【おお……貴殿は、黒曜(こくよう)ではござらんか。見ての通り、拙僧は……か弱き人間を器にし融合させられてしまったのでござるよ……。我が意識こそあれど、器となりし人間の方は……もう……】


 はっきりと聞き取れる声だった。その声色はどこまでも悲しそうで虚しそうだった。そんななれの果てのモノに、空飛が黒曜として尋ねる。


「聞かせてくれるか? ここで起こった悲劇を……全て……」


【勿論。拙僧にわかることであればなんでもだ、我が君よ】


 色々な部分が癒着して身動きが取れないらしい玉髄の前に全員が集合する。それを確認することはできるらしい、玉髄がゆっくりと話し出した。


【ここでは、孤児となりし人間の幼子達を引き取っておったようでな? そこで……おぞましき行為……妖魔融合の儀を執り行っていたようでござる。呼び出される妖魔は知性も位も無関係に……相性すら無視してのようでござった。そして……融合させられし者達は、拙僧達を内側に閉じ込め、必要な時だけ消費したのでござる……。しかし、妖魔とは不可思議なる存在故に……】


 そこで一端区切ると、嘆きを含んだ声色になる。


【故に、人でなくなり……妖魔ですらなくなり……。かように、こうして錆びた骨と化したのでござるよ……。人間は勿論、融合させられた妖魔達もその魂は喪失しておるようでな。拙僧以外に、維持しておる者は感じ取れるな……】


「そうか。我が友よ……そのような姿になりしは辛かろうに。すぐに……すぐになんとかしてみせようぞ」


 空飛と玉髄のやり取りを見つめながら、齋藤が残りの者達に指示を出す。


「……この部屋を探索しつつ……亡骸を埋葬するぞ……。夜明(よあけ)空飛よ、貴様は玉髄だったな? その者からもっと話を。それから、蒼主院両我、等依、琴依(ことえ)。貴様ら三人はそろそろ頃合いだろう……蒼主院輝理(かがり)と合流せよ」


 反論する者は誰もなく。それぞれ動き出したのだった。

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