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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
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師弟と

(きん)術式(じゅつしき)! 壱銘(いめい)斬葬(ざんそう)!!」


 輪音(りんね)を構え、技を放つ五奇(いつき)に対し師である()はゆっくりとした動作で左腕を前に出した。


(つち)術式(じゅつしき)壱銘(いめい)……華盾(かしゅん)


 彼の周囲に花びらが舞い、五奇の攻撃はあっさりと防がれてしまう。


「……俺の知らない技、ですね」


 五奇が睨みながら訊けば、男は静かに告げた。


「君が望む力ではなかったからね。それで? 五奇君。これで終わりじゃないだろう?」


「くっ! 当然! 弐銘(にめい)覇斬牙(はざんが)!」


 五奇が次に繰り出したのは、飛ぶ斬撃である覇斬牙だ。男めがけて一直線に向かって行く。だが……。


「金の術式、伍銘(ごめい)封魔刃(ふうまじん)


 懐からナイフを取り出した男は、技を繰りだし()()()()()()()()()()。輪音の刃から色が失われ、代わりに鎖の模様が現れた。


「なっ!?」


「教えたはずだよ? この術は、あらゆるモノを封じる技だ、とね。祓力(ふつりょく)が高ければ高いほど効果も上がるし……こういう使い方もできるんだ。覚えておくといい」


 一端言葉を区切ると、両サイドに控えていた鬼達に指示を出す。


金龍(きんりゅう)銀虎(ぎんこ)。頼んだよ」


 二体の鬼達は静かに頷くと、五奇に向かって行く。五奇は参弥(さんび)を構え、迎撃体勢に入った。まず、金色の金龍が拳を振り上げる。それを五奇はギリギリでかわす。


「くらえ!」


 祓力を乗せて勢いよくワイヤーブレードを金龍に向かって射出する。それを銀虎が割って入り、防御結界を張って防いだ。


「くっ!」


(実力差がありすぎる……! こんなに、強かったのかよ! この人は!!)


 圧倒的な実力差を体感した五奇だったが、それでも意地を張る自分がいることに気づいて思わず苦笑する。


「五奇君?」


 男が不思議そうに声をかければ、五奇の口から本音がこぼれた。


「ははっ……こんなの勝てるわけないじゃないかよ……。こんな! こんな実力差なんてさ……。なぁ、先生……教えてくれよ……強さって……力ってなんだよ……? なぁ!!」


 八つ当たりにもほどがある言葉を、だけれど師匠は優しく受け入れようだった。彼は口をゆっくりと開く。


「そうだね……僕も思うよ。力とは……強さとはなんだろうってね? ……五奇君」


「……なんですか……」


 静かに答える五奇に対し、師匠、蒼主院輝理(そうじゅいんかがり)でありルッツを名乗って来た男が諭すように答える。


「強さというものは、きっと自分自身で決めることなんじゃないかな。なにを、どのように強いと感じるのか、てね。そして力というものは、それに応じたもののことなのだと僕は思うよ。だから……五奇君。君はどうなりたい? いや、どういう自分でありたいかい?」


 その問いに、五奇は即答できなかった。どういう自分でありたいか? その言葉が脳内をループする。


(どうありたい? 俺は……俺が?)


 ふと。在りし日の父の姿が脳裏をよぎった。警察官だった父。人を助け、人を守る。その姿が頼もしくて誇らしくて……。


「なりたかった……。俺も父さんみたいな、人間に……」


 絞り出せた言葉はそれだけだった。

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