祓神と
伏せていた顔をゆっくりと上げると少年は、穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。
「初めましてじゃな。われが祓神、汀守神という。お主らへ加護を与えようぞ」
声色と見た目からは想像もできない、神聖さを肌で感じ、五奇は彼が人間とは別の存在であるのだと理解した。
日本における数多の神の一柱であり、生まれも理由も様々な超常的存在かつ、トクタイに力を貸す神達のことを祓神と呼び、各チームに一柱がつき、加護を授けるのだ。
「なんとその、お呼びすればよろしいのでしこざいましょうか?」
空飛が遠慮がちに訊くと、齋藤が答えた。
「汀様とお呼びしろ。くれぐれも無礼のないようにな? 特に鬼神乙女、貴様な?」
釘を刺された鬼神は苛立ちげに、齋藤を睨みつけながら近くにあったゴミ箱を蹴った。
「……るっせぇな……わぁってるってんだ、ちきしょーが! 話はもういいだろうが! 帰るわ」
乱暴に手荷物を持つと、鬼神は部屋から出て行った。それを見た齋藤が告げる。
「……いつかはあの態度も矯正せねばならんな。コホン、貴様らも今日は帰っていいぞ。明日は朝九時にこの部屋に集合の後、訓練に入る! また、共同生活に備えて準備をしておけ? では、解散!」
言うだけ言って齋藤は部屋を出て行き、汀もまたもとの部屋へと戻って行った。取り残された五奇、等依、空飛の三人は無言になり、しばらくして五奇が口を開いた。
「あの、それじゃ解散、しますか?」
「そうっスねー。さんせーい」
「僕もでございます。はい」
訊けば二人も同意したため、今日はこれで解散となった。各々手荷物を持って、部屋を後にする。カギはオートロックらしく、最後に五奇が出た途端、自動で閉まった。
(良かった。カギの場所とかわかんなかったからなぁ)
ひとまず安心した五奇は、ビルを後にした。
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「あぁ……疲れた……」
自宅へ戻った五奇は、疲れ果てた身体を休めるべく、風呂に入ることすらせず、寝室に入りベッドにダイブした。日はすっかり昇っているが、急激な眠気でそのまま寝そうになる。
「あっそう、だ。ルッツ先生に、連絡しとかなきゃな……」
今にも閉じそうな目をむりやり開けて、スラックスのポケットからスマホを取り出す。
(毎回思うけど、日本人の顔でルッツって……あきらかに偽名だよなぁ)
出会ってまもなく、何度訊いてははぐらかされてきたルッツの"名前問題"を思い返す。
「まぁいっか。それより、アドレスっと」
すぐにルッツのアドレスを見つけ、メッセージを送る。
「えっと……」
『こんばんわ、五奇です。無事に入隊試験に合格しました。Eチームでしたが……』
すぐに返信が着て、五奇は時計を見る。
(今……朝の五時なんだけど……)
そう思いながら内容を確認すると、
『おめでとう。Eチームとはいえ、入隊出来てなによりさ。それで、今後の事はなんて聞いているんだい?』
ルッツからのメッセージで、そういえば、今後について詳しくは聞いていなかったことに気づく。
(大事なことの大半教えてもらってないぞ!? 大丈夫なのか、この組織!)
急に不安になってきたが、それよりも眠くて仕方がない。五奇はとりあえず、明日の朝に備えて眠ることにした。