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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
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勝ったのは?

()の術式! 伍銘(ごめい)! 舞砲烈火(まいほうれっか)!」


 灰児(はいじ)の炎を纏わせた斬撃が巨大鬼に当たる。だが、ダメージが入った様子はない。


「うむ! なかなか手強いな! む? Cチームの者達も来たか! 心強い!!」


「失礼でしてよ、愛原(あいはら)灰児さん? わたくし達は緋雲(あけくも)です! そんな芋臭い呼称はやめて下さいません?」


 麗奈(れいな)が鉄扇を構えながら指摘しているのを、美珠(みしゅ)雅姫(まさき)がめんどくさそうな顔で見つめていた。一方で、琴依(ことえ)はマイペースにあくびをしながら剛徹武流丸(ごうてつぶりゅうまる)の肩に乗っていた。

 鬼神(おにがみ)(ひつぎ)も各々呼び出した百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)無偶羅将鬼(むぐうらしょうき)で巨大鬼に攻撃を仕掛けていた。灰児、緋雲の四人が左後方からで、鬼神と柩と黒曜(こくよう)が右側から攻めている形だ。


 佐乃助(さのすけ)はと言うと、巨大鬼の中心部で倒れこんでいる虎雷雅(こらいが)達の間に陣取って悠々と立っていた。


「さて……。あちらはどうやら撤退したようですね? まぁ構いませんが……所詮は妖魔……使()()()()()()()のものですしね」


 一人呟きながら、監視用の式神ですずめ達が撤退したのを確認した佐乃助は、連絡用の式神から届いた指示に従う。


「……了解しました、お爺様。こちらも撤退しましょう……媒体者達も……回収します」


 佐乃助が撤退することに最初に気づいたのは、黒曜だった。黒い(つた)を巨大鬼の合間をぬって放ち、佐乃助を拘束しようとする。だが、それは佐乃助が繰り出した技によって防がれた。


「くっ。蔦程度では弾かれるか! 鬼憑きの二人よ、急げ!」


「わかっとるわ! 俺様達を舐めんじゃねぇ黒曜!」


「……藤波(ふじなみ)家の人。ワタシ達、鬼憑きとその子達との関係……教えてもらうわ」


 鬼神と柩の言葉を背にし、百戦獄鬼と無偶羅将鬼が同時に佐乃助めがけて拳を振り下ろした。だが……。


「ふむ。片方はともかく、もう片方は未熟ですね? こちらとしては少し失望です」


 二体の鬼の拳を障壁を展開して防ぐと、佐乃助は一礼する。


「……この里での実験も佳境でしたし……時間切れです。それでは蒼主院(そうじゅいん)の皆様、またお会いしましょう」


 佐乃助の周囲が黒い霧に包まれ、突風が吹き出した。その勢いはすさまじく、気を抜くと吹き飛ばされそうだった。


「させはしない! 火の術式! 参銘(さんめい)! 爆炎列弾(ばくえんれつだん)!」


 連続して炎の弾を後方に放つと、その勢いで灰児は佐乃助に急接近して一撃蹴りを入れた。


「ぐっ!?」


 佐乃助が初めて声を上げた。その流れに乗るように、緋雲の四人が倒れている虎雷雅達に接近し、保護した。それを見た佐乃助は、少しだけ苦み虫を潰したような顔をすると、()()()()()()()()()()()()()()空中に浮きながら里の奥へと下がって行く。


「待ちやがれ、イカレ野郎!!」


 鬼神の叫びも虚しく、佐乃助の姿が今度こそ霧となって、姿を──消した。

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