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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
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変わる状況

 その頃。

 すずめ、スカーレットと対峙している五奇(いつき)等依(とうい)の元に輝也(てるや)とルッツが駆けつけて来た。


「五奇君! 落ち着くんだ!」


 ルッツの声が響く。なぜなら五奇が、がむしゃらにすずめに攻撃をし続けていたからだ。参弥(さんび)輪音(りんね)の特性すら忘れたようにただ武器を振るう。それをすずめが愉しげに笑いながら避けていた。

 一方で、スカーレットと戦っている等依は五奇を気にかけながらも彼女の攻撃に圧されていた。

 その状況を変えるべく最初に動いたのは輝也だった。


「〈我が身は人にして非ず、我、神の一端を担う者。神よ、今こそ呼び降ろさん〉、アメノミナカヌシ」


 途端に、五奇、すずめ、スカーレットに重力の()()がかかる。輝也が呼び降ろした神の再現体の力だ。


「くぅ! 俺は……まだ! ……殺すんだ! コイツを! コイツだけは!!」


 憎しみを込めた五奇の言葉に、すずめは口元を歪ませた。


「大勢来ちゃったみたいだし……愉しみは最後までとっておくタイプなんだよね♪ だ・か・ら♪ スカーレット、帰るよ♪」


「了解シマシタ」


 すずめの言葉を合図に、スカーレットと彼は空間転移の術を発動させその場から消え去った。刃を振るう相手がいなくなった五奇のスキを突いて、ルッツが五奇の首元を手刀で殴り気絶させた。


「五奇ちゃん! あんた、どうするつもりだよ!?」


 珍しく食って掛かる等依に対し、五奇を抱えながらルッツがいつも通りの穏やかさで答える。


「なに、師匠としての落とし前をつけるだけさ……。それよりも、早く(みぎわ)様をお助けしないとね?」


 言われて等依が牢の方を見れば、輝也が鍵を破壊しようとしているところだった。その光景を見て、等依は握りこぶしを作り唇を噛んだ。


(あぁまただ。なんで……オレ……いや、(わたし)は無力なんだろうか……)


 本来の自分が内心で顔を出す。それがたまらなく不愉快で、等依は虚しさでいっぱいになった。


 ****


「行きましてよ!! (きん)の術式、肆銘(しめい)祇刃(しじん)!」


 縦ロールの女性が融合した巨大な鬼に向かって技を放つ。祇刃は、金の退魔術式の中でも特殊で、攻撃を受けた相手に一種のデバフを付与できるのだ。もっとも、十メートルは超えるであろう巨体にどこまで通じるかは不明であるが。

 そんな彼女に緋雲(あけくも)の一人、淡いピンクの着物を纏った黒髪糸目の女性、美珠(みしゅ)が大声を張り上げる。


「ちょ、ちょっと待ちなんし、麗奈(れいな)! あぁもう! 雅姫(まさき)琴依(ことえ)! フォローを!」


 残り二人の内、黒い革ジャンにミニスカートの深翠色の髪をサイドテールにした女性、雅姫が薙刀を構え頷く。


「……御意」


 短く答える雅姫に対し、銀髪に紫色の瞳をした()()()()()()()()()()、琴依が大きく伸びをしながら答えた。


「りょーかいだよ~みしゅみしゅ~! ワタシちゃんもやっちゃるし、みーんなでやればなんとかなるっしょ~! ってわけで、剛徹武流丸(ごうてつぶりゅうまる)! いっくよ~!」


 琴依の声に呼応して、三メートルはあるであろう鎧武者の恰好をした機械仕掛けの()()が現れた。

 戦闘体勢に入った彼女達は、先を行く灰児(はいじ)と合流すべく行動に移る。そんな中で、鬼神(おにがみ)(ひつぎ)は動揺した表情で互いに見つめ合っていた。

 言いたいことは一緒なのだ。


「……乙女」


「柩、あのイカレ野郎から聞き出すぞ。将鬼(しょうき)の準備はいいな?」


「……もちろんよ」


 二人が同時に、鬼に指示を出した。その横で、黒曜も動く。


(このまま放置するわけにはいくまい……(わし)の……僕の想いにかけて……!)

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― 新着の感想 ―
[一言] 鬼は人為的に作れる、鬼憑の鬼とは半身、交わりを禁じた家と、それに肩を並べる家が作る鬼...人の業、とするなら。武器とするには兵士ほど高等な武器はなく... そして、ふと思ってしまったのだが…
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