表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
76/113

対峙する者達

「ど、どうするんだよ虎雷雅(こらいが)! ぼく、こんなの聞いてないよ!」


 翡翠色の髪の少年、凰駿(おうしゅん)が叫ぶ。その声色は不安げだ。隣にいた龍の青年、阿龍(ありゅう)が彼の肩を優しく抱いた瞬間だった。

 彼らの身体に異変が起こる。


「な、なんだ!? うぐっ! 身体から! ()()()()()()!? まさか……騙したのか! 藤波(ふじなみ)ぃ!!」


 虎雷雅の叫びと共に、弥隼(みはや)も凰駿も阿龍もその場に崩れ落ち、身体を痙攣させる。その姿は痛々しく、駆けつけた灰児(はいじ)(ひつぎ)緋雲(あけくも)の四人、そして鬼神(おにがみ)も言葉を失う中で黒曜(こくよう)だけが冷静に状況を分析していた。


(ふむ? 妖魔の気配が濃くなった……。そうか! 強制的()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)


「……全く。(まこと)に、人間の業とは深いものよ……! (わし)が愛した人間のためにも、赦すわけにはいかぬ!」


「……そうですか。では、赦されなくてかまいません」


 黒曜の声に反応するように、苦しむ虎雷雅の横に現れたのは藤色の髪をオールバックにした青年が現れた。


「はじめまして、蒼主院(そうじゅいん)の方々? 我が名は藤波佐乃助(ふじなみさのすけ)、覚えなくていいです」


 虚ろな目をした佐乃助に、その場の全員が緊張感に包まれる。


「こいつらで何をする気だ!? いや、そもそも鬼憑きとの関係はなんなんだよ!? 答えろや!」


 鬼神の叫びにも、佐乃助は動じない。そうしている間にも、虎雷雅達の様子が更に悪化して行くのが見えた。


「うむ。なにが起ころうとしているのか、まるでわからないな! とにかく、斬り伏せるのみ!」


 灰児が目にも留まらぬ速さで佐乃助に向かって行くが、斬撃をギリギリでかわされる。だが、灰児は臆することなく、技を放った。


「火の退魔術式(たいまじゅつしき)! 弐銘(にめい)紅蓮剛弾(ぐれんこうだん)!」


 妖魔剣ゼルギウスの刃先から炎が放出され、弾となって放たれた。


「藤波流……雷光の舞(らいこうのぶ)


 灰児が放った弾を、佐乃助が自身の周りに出現させた雷で相殺させ、灰児と距離を取る。


「では、そろそろ儀式を終わらせていただきましょうか。妖魔達よ、踊りなさい」


 虎雷雅、弥隼、凰駿、阿龍が同時に苦しげな声で叫んだと同時に、彼らが呼び出していた妖魔達の姿が更に変異していく。


「なっんだと!?」


「……嘘」


 鬼神と柩が同時に声を上げた。なぜなら、融合した妖魔達の姿が巨人から……巨大な身体に二本の角を生やした……鬼の姿に変わったからだ。大きな口元からは鋭い犬歯がのぞく。


「ふむ。虎と龍と隼と鳳凰……バランスが悪かったわりにはしっかりした鬼になったじゃありませんか。これはお爺様も喜ぶことでしょう……。全ては……我が一族の悲願のために、消えて頂きましょう。蒼主院の方々」


 佐乃助の声色に少しだけ感情が乗った。虎雷雅達は意識を失ったらしくピクリとも動かなくなった。


「呆気にとられている場合ではないな! 皆、行くぞ!!」


 灰児の声で柩と鬼神、そして緋雲の四人も行動に移る。まず動いたのは緋雲だった。


「わたくし達も行きましてよ! 美珠(みしゅ)雅姫(まさき)琴依(ことえ)! 準備はよろしくて!?」


 縦ロールの女性が、緋雲の他の三人に声をかけた。彼女の声は──自信に満ち溢れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ