なんで?
「壱銘、斬葬!」
五奇が叫び、技を繰り出す。すずめは軽やかなステップでかわすと、バク転して五奇から距離を取った。
「ふふふ♪ その程度か・な? じゃあ次は、ボクの番だね♪」
すずめは手にしている振り子をゆっくりと見せつけるように揺らす。その揺れは徐々に大きくなっていく。
「いっくよ~♪物理干渉、二の舞! 一夜の悪夢!」
「ぐわ!?」
五奇の身体がふらつく。地面に膝をつきそうになるのを堪えて、武器を構え直す。
「さすが耐性持ち~♪効きづらいね~♪っていうかさ……君、リアクション普通だね? 仇なのになんで?」
すずめの言葉に、五奇は思わず固まる。彼の言っていることが理解できなかったからだ。
「あーそっか。なるほどね? キミ、憎しみを封印されているんだ、蒼主院に。あははは♪相変わらずやることがえげつないな~♪」
「封印……? なに、を、言って……!」
戸惑う五奇に対し、すずめが更なる言葉を投げかける。
「そのまんまの意味だ・け・ど♪いやー昔からあそこは異常なんだよ、い・じょ・う♪だからさぁ……」
一端言葉を区切ると、すずめは目を細めて邪気しかない笑みを浮かべる。
「解放してあげるよ♪……君の、憎しみをさぁ!」
****
一方。
スカーレットと対峙している等依は、身体の不調に気づいていた。
(間違いなく、敵の攻撃っスね~? 気力が……奪われている?)
推測を立てながら、等依は火雀応鬼と氷鶫轟鬼に指示を出す。火雀が前衛でスカーレットに向かって行く。次々と繰り出される拳を、スカーレットは軽やかにかわす。
「デハ、反撃ヲ開始シマス」
スカーレットが両手を合わせ、攻撃体勢に入った。それを察知した等依が氷鶫を前に出したのと同時に、スカーレットの両手が光り出し、そのまま収束して光線を放った。
「マジか!? この状況でビームとかありっスか!?」
慌てて氷鶫に氷円鏡を発動させて、光線を防ぐ。その隙を塗って、スカーレットが等依に接近する。
(コイツ……戦い慣れしまくってるスね……。だけど、感情を感じない!)
殺意も敵意もないスカーレットの攻撃を、等依は簡易式神を駆使しつつ避けながら距離を取る。
「わりーけど、近寄られたら困るんスよね……!」
等依が次の手を繰り出そうとした時だった。五奇の言葉にならない叫び声が……木霊した。
「五奇ちゃん!?」
驚いて等依が声をかければ、そこにはにすずめへの憎悪で理性を失った五奇の姿があった。がむしゃらに技を放ち、すずめに向かって行く。
「あははは!! それだよ、そ・れ♪ やっぱさー親の仇相手にはこうでないと、ね♪」
愉しげなすずめの笑い声が周囲を包む。どこまでも邪気しかない声が五奇の癪に障った。




