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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第三章 恐るべき一族編
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突入と思惑

「では参りますでございます。"陽曜転換(ようようてんかん)"!」


 空飛(あきひ)が唱え終わるとその姿が変わった。長く伸びた黒髪に金色の瞳、身に纏うは白い着物に"黒曜の羽根衣(こくようのはねごろも)"。


「おぉ~!? 空飛ちゃん、じゃなくて黒曜完全体って感じっスかー?」


 等依(とうい)が訊けば空飛こと黒曜は不敵な笑みを浮かべて答える。


「ふっ……これが(わし)(まこと)の力よ。では鬼憑き、参るぞ!」


「……お前、マジでキャラ変わりすぎだぜ? はっ、まぁいい。俺様達の力、見せてやらぁ!」


 鬼神(おにがみ)も気合が入ったらしい。すぐに百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)を呼び出すと、二人は里へ突入して行く。それを見送ると、五奇(いつき)と等依も行動を開始した。


 ****


 その頃。

 藤波(ふじなみ)一族の里、某所にて。


「ふむ、鬼と(からす)がやって来たか」


 奥座敷で、白髪を一つに束ねた(おきな)が呟く。その声に感情はなく、また、両隣に並ぶ若い藤色の髪と瞳をした男女も動揺する素振りはなく、ただ静かに一点を見つめていた。そこにいたのは……。


「あははは! まさかの真正面からなんて愚策~♪ ま、いいや。ボクの獲物は一匹だけだし……。出るけど文句ない・よ・ね?」


 訊いているようで、ただの宣言だ。だらしなく畳に寝転がる()に翁が冷たく言い放つ。


「好きにするのはかまわんが、里を破壊するのだけは許さぬぞ。(にのまえ)すずめよ」


 名前を呼ばれたことが不服だったのか、ロリータドレスの男、すずめが威圧するような声で翁に反論する。


「ボクの名前を呼んでいいなんて許可、出してないからね? 人間」


 その眼光は鋭く、冷たい。だが、翁は臆することなく答える。


「それは互いであろうよ、妖魔よ」


 下手をすれば一触即発のような雰囲気の中、翁の隣にいた女が口を開いた。


「おじい様、鬼と烏はどういたしましょうか? (わたくし)達で迎撃を?」


「いや、ここは"媒体者(ばいたいしゃ)"どもを使うとしよう。()()()()()()()()()のでな」


 翁の言葉ですずめが大声を上げて笑い出す。その声を聞きながら、翁が男に声をかける。


佐乃助(さのすけ)。行け」


「……はっ」


 佐乃助はゆっくりと立ち上がると、座敷から出て行く。それに続くようにすずめも起き上がり、動き出した。


「ふふふ♪ 待っててね~? い・つ・き・く・ん?」


 ****


「うっ!?」


 突然の寒気に、五奇が身震いをする。そのことに気づいた等依が心配そうに声をかけた。


「んん~? 五奇ちゃん、だいじょーぶ?」


「あ、いやなんか悪寒が……。大丈夫です!」


 五奇の言葉に等依が不思議そうな顔をしながら、


「まぁならいーっスけど……。さて、空飛ちゃんと鬼神ちゃんが正面からやってくれてる間に、行くっしょ?」


「もちろんです!」


 二人が今いるのは、里の裏側にある地下水路だ。ここから、里の中へと入って行くのだ。


(ゆっくり……慎重に……)


 浅く呼吸を繰り返しながら、二人は一歩一歩着実に進むのだった。

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