顔合わせを終えて
「では、蒼主院等依、夜明空飛、鬼神乙女、五十土五奇。貴様らをあらためて特殊対妖魔殲滅部隊の九十四期、Eチームとして認めよう! 隊服を支給するから各自、更衣室ですぐに着替えて来い! 今すぐにだ!」
齋藤にせかされ、男女に分かれて更衣室に入る。集合した部屋がEチーム専用で、隣に更衣室やトイレなどがあるようだった。更衣室に入ると、学校で馴染みのあるロッカーが四つ壁に沿って置かれていた。
「さってと~、オレちゃんはどこでもいーけど? お二人さんはどーするっスか?」
等依に促され、五奇は一番奥、空飛が真ん中を選んだ。それを確認した等依はにこやかに、残った扉側のロッカーの前に立った。
(この人、口調とかはアレだけど中身はけっこういい人なのかも?)
そんな感想を抱きながら、五奇はロッカーを開け、隊服が入ったトランクを手に取る。中を確認すると、綺麗にたたまれた襟付きの黒に白いラインが入った上着に黒いスラックス、そして「Team.E」と書かれたバッジが入っていた。
(うん、着心地は悪くないな。見た目のわりに動きやすそうだし)
一人納得しながら着替え終えれば、等依が口笛を吹きながら、
「そーいや、おと……鬼神ちゃんの隊服ってどんなんかな~? スカート? いや、履かなさそーじゃね? どー思うっスか?」
(……やけにフレンドリーだなぁ)
五奇があまりのフレンドリーさに困惑していると、空飛が等依に遠慮がちに声をかけた。
「あの、そんな事を話してなどいないで、さっさと行きませんでしょうか? 着替え終わったのにモタモタしていたら、教官に怒られかねません……と思います。はい」
「確かに~! じゃあ行くっスか!」
等依の言葉に同意し、更衣室から元いた部屋へと戻る。
「おりょ? 教官いなくねー? あと鬼神ちゃんも!」
齋藤と鬼神がいない。困惑して三人で顔を見合わせていると、女子更衣室から小物が次々と飛んできて壁に勢いよくぶつかっていく。
「えっ?」
「は?」
「えぇ……」
等依、五奇、空飛の三人が思わず声を漏らせば、女子更衣室からものすごい怒鳴り声が聞こえてきた。
「ざっけんな! イマドキに、なんでスカートなんざ支給されなきゃなんねーんだ! 俺様に恥かかせようってか!? あぁ!?」
彼女の服装がスカジャンに短パンだったことを思い出し、三人はなんとなく納得した。
しばらくして、五奇達が待機している部屋の扉が開き、女性隊員が慌てて女子更衣室に入って行った。
「ちっ。最初から用意しとけってんだよ……。着るから出てけや!!」
鬼神の言葉が聞こえた後、女子更衣室から齋藤と女性隊員が出てきた。大人しくしている三人を確認すると、
「貴様らは不満もなく、着替え終わったようだな。よろしい。今は鬼神乙女の着替えを待つとしよう」
少し疲れた声で齋藤に言われ、五奇も他の二人も苦笑するしかなかった。
「とっころで~? チームならリーダーとかどーすんスかね? 年齢なら一応オレちゃんだけど~?」
等依が話題を変えた。彼の言う通り、チームならリーダーがいるのが自然だと五奇も思った。少しの沈黙の後、空飛が手をあげ、
「……僕は、リーダーに向いてないと思いますので、はい」
空飛の言葉に等依も深く頷いた。
「オレちゃんも向いてないと思うんスよね~。で、鬼神ちゃんもそうっしょっ? ってなると~」
二人が五奇をまっすぐに見つめてくる。
「えっ……お、俺!?」
思わず自分を指しながら五奇が訊けば、齋藤も頷き、
「貴様らの意見と、バランスを考えても五十土五奇、貴様が適任と考える。やれ」
(選択肢……はなさそうだな)
心の中でぼやきながら、五奇はリーダーになることを渋々受け入れた。
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「……確かに俺様もリーダー向きじゃねぇけどよぉ? なんでよりによって横取り野郎なんだよ……」
着替え終わった鬼神が早速不満を漏らすが、
「着替えごときでダダをこねていた貴様に、選択権などない。大人しく受け入れろ」
齋藤は冷たく言い放ち、話を続けた。
「よし、祓神様である汀守神を紹介しよう」
部屋の奥、閉じられていた重厚な扉を齋藤が明けると、白髪で十代前半くらいの白い着物姿の少年がいた。