想いと思い
「藤波家だぁ? んなもん聞いたことねーぞ?」
鬼神が訝しげにそう言えば、等依が顔を伏せながら続ける。
「……あんま詳しいわけじゃないっスけど、かなりやばいってのは聞いたことがあるっス。ただ……鬼神ちゃんの"鬼憑き"と、アイツらの妖魔がどう繋がってんのかまではわかんねースけど」
「では……汀様は、その藤波家にいらっしゃるということでございましょうか?」
空飛が訊けば、等依は「おそらく」と小さく答えた。それを受けて、五奇が口を開く。
「……等依先輩。藤波家の場所、わかりますか?」
「……五奇ちゃん、行く気なんしょ? でもめっちゃ危険スよ? 教官に訊かなくていーんスか?」
等依の言葉に、五奇は力を込めて言い返す。
「だけど! 嫌なんだ! 助けられるかもしれないのに、そこに手を伸ばさないなんて! 俺は! 俺は!! もう失いたくないんだよ!!」
五奇の必死さに、鬼神が頬をかきながら言う。
「ったくしょうがねーな、ウチのリーダー様はよぉ。ま、確かに俺様も引っかかってるしな……」
彼女の言葉に、空飛も続く。
「そうでございますね。気になることもたくさんありますし……。はい」
そう言って二人は五奇の近くに寄る。それを受けて、
「二人とも! ありがとう!」
五奇がそうお礼を言えば、黙っていた等依も口を開く。
「しゃーないっス……んじゃま、行くっスかね! 藤波家に!」
「等依先輩……。はい、行きましょう! みんなで!」
四人は頷き合うと、等依の案内で藤波家がある場所を目指し、動き出した。
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「して? 数は四匹で……そのうちの一匹が鬼憑きで、一匹が蒼主院とな?」
報告を聞いてどこか嬉しそうな相手の様子に、虎雷雅は思わず唇を噛みしめる。
「……本当、なんだろうな。アイツらを倒したら……」
絞り出すような彼の声色に、その相手はただ愉しげに、
「あぁもちろん。叶えてやるとも? ただし、倒すのではないな。殺してこい」
「……わかった」
やりとりを終えると、虎雷雅は退室する。その背を見送りながら、ソレは笑う。
「ふむ。やはりたまらぬな……ゾクゾクしてきたわい」
「悪趣味ー。そんなんだから、モテないんだよ♪」
突如として現れた声の主に向かって言葉をかける。
「お主か。何用か?」
「ん~? あのねー? 一つだけ。……あの中の一匹はボクのだ・よ?」
威嚇するようにそれだけ告げると、ロリータドレスの人物は姿を消した。
「……悪趣味なのはどちらであろうな……?」
やれやれと言いながら、彼も準備を始めるのだった。




