窮地
汀の言葉に、四人は動揺を隠せない。
「汀様!? 一体何を!?」
五奇がそう訊けば、彼は目を伏せ、
「お主らを安全な場所まで転移させるのじゃ。なに、われは祓神。人ならざる者。何も出来ぬであろうよ……。特にあやつらの長にはの」
彼らが何者なのかを知っているような口ぶりに五奇が更に言及しようとしたが、その時には身体が宙に浮いていた。
「な、なんだ!?」
五奇が驚くと同時に等依が口を開く。
「これは……、転移術式っスか!? でも、それやるにはかなりの祓力を消費するはずで……」
「はぁ!? んなもん使ったら……どーなるんだよ?」
鬼神が訊けば、汀が優しく答える。
「われはおそらく、力の大半を失いあやつらに捕られるであろうよ。じゃが案ずるな。死ぬことは……もうないのでな?」
その言葉に四人が反論しようとしたが、その時にはすでに暗転し、意識が遠のいていた。
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「ううん……?」
四人が目を覚ますと、そこは小高い丘の上だった。山岳地帯の中ではあろうが、洞窟からはかなり離れてしまったのだと気がついた。
「皆さん、どういたしましょう! 汀様が!」
空飛の言葉で、汀がいないことに気づく。
「おい……マジでいねぇじゃねーか! どーすんだよ!?」
鬼神の言葉に等依と空飛が俯く。だが、五奇だけはまっすぐな目で、
「助けに行こう」
はっきりとそう言い切った。
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「お前がトクタイに飼いならされたという……汀かえ?」
暗い牢の中。捕らえれた汀に、その人物は尋ねる。
「飼いならされた……はちと違うのう。お主こそ、随分じゃな?」
そう言い返せば彼は腹が立ったのか、汀の顔を叩いた。
「ふん。人身御供のなりそこない風情が! ……良かったなぁ? 子孫どもに会えるぞ?」
「……別に会いたくなどなかったがの」
もう一度汀の顔を叩くと、その人物は牢から出て行ってしまった。一人取り残された汀は、
「……愚かな……」
そう一人呟くのだった。
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汀を救出することを決めた五奇達だったが、襲撃してきた彼らのことが何もわからない現状に、どう手を打つべきか頭を悩ませていた。
なにせ情報が少なすぎるのだ。目的はおそらく李殺道だろうが、それにしても気になるのはあの妖魔達の呼び出し方だ。
「……あれじゃまるで……」
五奇が言おうか迷ったタイミングで空飛が口を開く。
「あの方達、まるで鬼神さんのような呼び出し方をしておりましたですね……。何者なのでございましょうか?」
「こっちが訊きてぇわ! クソが!」
キレる鬼神に対し、等依が珍しく真剣な声色でぼそりと呟いた。
「……藤波家」
目線を彷徨わせながら、等依は断言した。
「多分、藤波家だ。蒼主院とかつて肩を並べ、そして袂を分かった一族」




