似て非なる
白い虎の威圧する声色に、五奇達は警戒心を上げる。
「……そうか。そういう答えか」
そう呟くと、白い虎は飛び上がり五奇めがけて蹴りをいれようとしてきた。慌てて回避すると、空飛と百戦獄鬼が白い虎に向かって行く。
「阿龍、弥隼、凰駿!」
白い虎が何かを呼んだ。そのタイミングで、等依が珍しく叫ぶ。
「ちょい! みんな! なんかやばい気配するっス!!」
だが、むなしくも周囲にはすでに三人の黒いローブに仮面を着けた者達がいた。その中の一人が声を発する。
「本当にやるのね? 虎雷雅」
声の主は女のようだった。その声に白い虎……虎雷雅は一言「そうだ」と答えると、咆哮を上げた。それを合図に、黒いローブの三人と虎雷雅が、身体からオーラのようなものを放出し始めた。
「な、なにが起こるのでございましょうか!?」
「うろたえんな空飛! 全員ぶっ倒せばいいんだからよ!!」
鬼神がそう言ったと同時に、虎雷雅と黒いローブの三人の身体から何かが現れた。
「……はっ?」
思わず間抜けな声が五奇の口から漏れる。等依、空飛、鬼神も驚き、唖然としてしまった。
そこにいたのは二メトール超の龍、虎、鳳凰、隼の姿をした妖魔。
形こそ違えど、その様はまるで"鬼憑き"のようで。
「お主らよ、動揺しておる場合じゃないであろう! 逃げねば死んでしまうぞ!」
汀の声で、五奇達は動き出す。まず、等依が火雀応鬼と氷鶫轟鬼を呼び出し、結界を張る。そこへ更に、
「封呪文改変解放! 土の退魔術式、肆銘、円盾!」
五奇が防御技である円盾を繰り出し、重ねた。
「なるほど? それで我々の攻撃を防ごうというか。いいだろう、どこまで耐えられるか、見せてみろ! 蒼主院の手先どもよ!」
虎雷雅達が呼び出した妖魔達が一斉に襲いかかって来る。それを防ぎながら、
「どーするっスか? オレちゃんの技、これだーとあんま持たないかも……」
等依の言葉に、五奇も続く。
「俺のも、無理して使っているから……耐久は、キツイ!」
そんな二人の様子に、鬼神と空飛が顔を見合わせ、頷き合う。
「では、彼らの攻撃の隙が生まれた瞬間に、僕達が道を切り開きましょう!」
「俺様の百鬼の力で、ぶっ飛ばしてやるぜ……!」
戦闘体勢に入った二人を、汀が止めた。
「待つのじゃ。隙などおそらく出ないであろうよ」
彼の言葉に鬼神が食って掛かる。
「はぁ!? じゃあどうしろってんだよ! このままじゃ死んじまうんだろうが!」
「わかっておるとも。故に……われに任されよ」
静かに、だが、どこか覚悟を決めた声色で、汀はそう言った。




