共鳴する人造妖魔達
一方。
灰児からの突然の申し出に、等依と鬼神は顔を見合わせていた。
「あのーほんっとに、やるんスか~? 任務は……?」
「……諦めろ、等依。愛原灰児という男は一度言ったら聞かない性質だ……」
等依の問いかけに輝也はそう答えると、愛原に向かって告げる。
「おい、加減はしろよ?」
「うむ! わかっているとも! さぁ、乙女よ! 来るがいい!」
灰児に名前を呼ばれ、鬼神が怒鳴る。
「なんでてめぇに名前呼びされなきゃなんねーんだ! ざっけんな!」
「ではなんと呼べばいいのだ? 鬼神なら柩や由毬様も入ってしまうぞ?」
指摘された鬼神は、灰児を睨みつけながら、
「なら、せめてフルネームで呼べや! てめぇみたいな野郎に名前呼びなんざ、されたくねぇんだよ!」
声を張り上げると鬼神は他の三人から少し距離を取り、百戦獄鬼を呼び出した。
「お~。鬼神ちゃんてば、すっかり仲良しじゃないスかー」
等依が感心した声を上げれば、鬼神は少しだけ嬉しそうな顔をする。それを確認した灰児が、
「うむ! では修行と行こう! 行くぞ! 火の術式! 伍銘! 舞砲烈火!」
炎を纏った妖魔剣でいきなり鬼神に襲いかかった。
「ざっけんな! 大体、百鬼は人間は襲えねぇんだよ! 柩がいるなら知ってんだろう!?」
「案ずるな! この剣であれば鬼憑きも私に対して攻撃できるはずだ! 柩がそうだったからな!」
そう告げると、抗議する鬼神を無視して次の攻撃体勢に入る灰児。二人の様子に、等依が思わず間に入ろうと動く。だが、それを輝也が止めた。
「……やめろ。もう、止められないし……。それに、お前に何ができる?」
「……っ!」
なんの反論もできない等依に、輝也が次の言葉をかけようとした瞬間だった。周囲を霧が包む。
「む?」
「な、なんだってんだ!?」
「……これは……」
「なんか来るっスよ!?」
動きを止め、周囲を警戒する灰児と鬼神、そして輝也と等依の前に、人造妖魔が二体現れた。
「人造妖魔! もしや引き寄せられたか! これは好都合! 鬼神乙女よ! 百戦獄鬼で倒してみるがいい!」
「てめぇに指図される理由なんざねぇよ!」
「……攻撃が来るぞ? 灰児と鬼神乙女」
「……」
四人それぞれ攻撃に備える中、犬型と猫型の人造妖魔は赤と青のオーラのようなものを纏いながら、こちらに接近してきた。
「うむ! 共鳴し合っているようだな! 鬼神乙女よ、頑張れ!!」
「マジかよ!? クソが! やりゃあいいんだろ、やりゃあ! 百戦獄鬼!」
鬼神の指示を受け、百戦獄鬼が二体の人造妖魔達に向かって行く。だが、
「あぁ!? なんだってんだ!?」
百戦獄鬼の攻撃が中々当たらない。いや、当たってはいるのだが、霧のように妖魔達は霧散して行く。それを見た等依はあることに気づいた。戸惑いながら言葉を発する。その声は自信なさげだ。
「もしかして……。アイツら、実体どっか別にあるんじゃ……ないスかね?」




