対照的な結果
「そろそろ潮時なんじゃないかしら? 両我?」
苦戦する両我の目の前に現れると柩は、共に降りて来た五奇と空飛に向けて声をかける。
「ワタシ達の力を見せてあげるわね? 行って! 無偶羅将鬼!」
彼女の声に答えるように、無偶羅将鬼は突風を切って進んで行く。すると両我が、
「我の邪魔をするでないわ! 鬼ども、行け! 行くのだ!!」
命令を受けた雷狼応鬼と氷狼轟鬼は、無偶羅将鬼と競い合うように、合体した人造妖魔に向かって行く。鬼達同士で殴り合い、邪魔をしながら向かって行く姿は、もはや三つ巴の喧嘩だ。
この状況に、五奇と空飛はどうしたらいいのかわからない。
「ど、どういたしましょうか? 五奇さん。このままですと、ろくなことにならないかと思われます。はい」
空飛が耳元で訊いてくる。五奇は少し考えた後、
「あの鬼達の勢いがね……。生身の俺達が入っていける気がしないし……。うーん……?」
その時、五奇はあることに気が付いた。
「あれ? あの人造妖魔ってもしかして……? 空飛君、行けるかもしれない!」
「……はい?」
話が見えない空飛に耳打ちをすると、二人は頷き合いこっそりと移動する。そのことに気づかない両我と柩は、言い争いをしていた。
「ちょっと、足を引っ張らないでくれる?」
「お前の方こそ! 鬼ども! 鬼憑きごと蹴散らせ!」
両我の命令に健気に従う二体の鬼達。それを見た柩が両我を軽蔑した目で見つめる。
「そうやって、また鬼達を酷使する。だから嫌いなのよ、貴方。無偶羅将鬼、行くわよ。無偶氷雨破砕破」
唱えた瞬間、無偶羅将鬼の両腕から氷の刃が生成され、雷狼応鬼と氷狼轟鬼、両我すらも巻き込んでその刃が振り下ろされた。
「うぉぉぉぉ!? 我ごと巻き込むとは何事だ!」
鬼達により張られた結界の中で両我が咎めれば、柩は冷たく言い放つ。
「あら? 言ったでしょ? 嫌いだって」
「好みで生き死にを決めるな! もういい、遠慮はせん! お前ごと……!」
そう両我が言った瞬間だった。
「せーの、いっけぇぇ! 伍銘、封魔刃!」
「黒曜抜刀術、零閃華!」
五奇と空飛が同時に人造妖魔の背後、死角になっていた木と木の間から出てきて技を放つ。五奇はその名の通り妖魔の力を一時的に封じる技を、空飛は飛ぶ斬撃を。二人の攻撃は見事に当たり、人造妖魔はその場に崩れ落ちた。
「よし! 決まった! 空飛君!」
「はいでございます!」
二人がハイタッチを決めると、両我と柩は言葉を失い、その場に立ち尽くした。
「嘘。倒しちゃった……協力して……?」
「な! 手柄を横取りするとは! Eチームのクセに小癪な!!」
関心したような柩とは対照的な両我の言葉に、五奇と空飛は苦笑いを浮かべる。
「あはは……どうしようか、空飛君」
「どういたしましょうねぇ……五奇さん」
拍手をする柩と無偶羅将鬼、頭を抱えて悔しそうに呻く両我の声が周囲に木霊した。




