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両我と柩

 五奇(いつき)空飛(あきひ)両我(りょうが)(ひつぎ)の四人は逃げ出した人造妖魔のうち、二体の気配を同時に感じ取った。五奇が口を開くより先に、両我が薄く笑い告げる。


「ふっ、妖魔は二体か! この程度、(わたし)退魔術式(たいまじゅつしき)と鬼どもで十分だ!」


「あら、そう? じゃあ見学させてもらうわ。どうせ勝てっこないでしょうけど」


 柩の言葉を両我は鼻で笑い、


「いいだろう! 次期当主の力を見せてやる! 来い! 雷狼応鬼(らいろうのおうき)氷狼轟鬼(ひろうのごうき)!」


 両我が、二体の緑と青の角が生えた鎧を纏った、二メートルはある鬼を呼び出した。


等依(とうい)先輩の火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)に似ている!?」


 驚く五奇に、柩が抑揚のない声で教えてくれた。


「あら? 蒼主院は代々二体の鬼と契約を交わすものよ? そうやって、式神の力と退魔術式を扱うのがあの一族よ。興味ないけれどね」


 最後にそう付け加えると、柩は敵が来ない範囲に陣取り、座ってしまう。本当に、見学するつもりのようだ。


「えっ? あの、柩さん? 本当によろしいのでございましょうか?」


 空飛が恐るおそる訊けば柩は頷き、


「好きにさせればいいのよ。あれだけ大口を叩いたのだもの、見ものだわ」


 冷たく言い放つと、五奇と空飛に向けて手招きをする。


「あなた達もこっちに。攻撃に巻き込まれたら、面倒よ? 両我の使う術式は特にね」


「それはどういう……ってうわっ!?」


「あひゃあ!?」


 突然の浮遊感に、五奇と空飛が声を上げ振りむけば、そこには半透明な黒い鬼がいた。


「ワタシの鬼、無偶羅将鬼(むぐうらしょうき)よ。よろしくね?」


 無偶羅将鬼によって、そのまま柩の元へと連れていかれた二人は、強引に座らせられてしまう。


「さ、始まるわよ。どうなるのかしらね? ふふふ」


 一方、準備万端といった様子の両我は、二体の鬼を連れて取っ組みあっている鳥型と蛇型の人造妖魔達に近づくと、いつの間にやら手にしていた折り畳み式の警棒を取り出した。


「さて、ショーの始まりだ! 食らうがいい! 封呪文(ふうじゅもん)解放! 水の退魔術式! 壱銘(いめい)霧の誘惑(きりのゆうわく)!」


 気付けば人造妖魔達の周囲に、霧が発生し包み込んでいた。


「はははは! さぁ、幻覚の中で踊るがいい! いや、遊んでいては良くないな! 雷狼(らいろう)氷狼(ひろう)! やれ!」


 幻覚を見ているからか、動きが奇妙になっている人造妖魔達を相手に、二体の鬼が拳を振るって行く。一方的な暴力に、五奇は不快さで思わず顔をしかめると、横で柩が声をかけてきた。


「……本当にあなた、乙女が言う通りの人なのね? ちょっと興味がわいてきたけれど……それこそ、乙女に悪いわね」


 意味深な発言をした後、柩は両我を指さした。


「あんなに余裕そうだけれど、そろそろやばそうよ? 人造妖魔って、()()()()()()らしいから」


「えっ? それってどういう……?」


 五奇が訊けば、答えはすぐに現象として現れた。一方的にやられるだけだった人造妖魔達が合体したのだ。


「なに!? まぁいい! おい、鬼ども! やれ!」


 先程までと同様に、人造妖魔に向かって行く二体の鬼達だったが、物凄い風が吹いて吹き飛ばされてしまった。その様子を確認すると、柩がゆっくりと砂埃を叩いて立ち上がった。


「そろそろ行きましょうか」


 その声はどこか弾んでいた。

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