もう一方では
五奇と空飛が四苦八苦していた頃。
等依と鬼神もまた、困惑していた。
「君達は、両我と柩と違って仲が良いのだな! あの二人を見ていたから、てっきり蒼主院家と鬼神家はそういう、なにか因果関係があるのだろうか!?」
後半、ただの疑問形になっている灰児のペースに、等依がもはや諦めたように答える。
「あー……? オレちゃんはそんなにスけど、代々蒼主院と鬼神は血を交わらせてはいけないとか言うっスねー?」
「そうなのか! 不思議だ! 君は両我と随分と雰囲気が違うが、理由があるのか!?」
「いや……これは、その? べっつにー?」
等依の答えがどんどん適当になっていくので、さすがに輝也が止めに入った。
「……おい。あまり質問しすぎるな……」
「しかし! 気になるものは気になるのだ! 輝也よ、許せ!」
二人のやり取りに、鬼神が口を挟む。
「輝也……? てめぇら、下の名前で呼び合うような仲なのかよ? だったらなんで、柩と蒼主院の野郎を止めねぇんだ!?」
両我と柩についてどこか責めるような彼女の口調にも、灰児はマイペースに見当違いな答えを返す。
「私と輝也は、トクタイ入隊前に妖魔竜ゼルギウス討伐を行った仲ではある! だが、共に競い合うライバルのようなものでな! あ、ちなみにそのゼルギウスを素材に造られたのがこの妖魔剣ゼルギウスさ!」
いきなり背中に背負っていた大剣を抜く灰児に、等依が珍しく苦情を呈す。
「あのー盛り上がってるところ悪いんスけど……さっさと倒しに行かないっスか?」
「つーか、結局俺様の質問に答えてねぇじゃねーか! クソ野郎が! おい、等依! こんなアホ共置いてこうぜ!?」
本当に灰児と輝也を置いて行こうとする鬼神に、輝也が声をかける。
「……君、最近鬼を制御できるようになったばかりで技も奥義も使えないじゃないか……」
「……よく知ってんじゃねぇか……クソが!」
吐き捨てる彼女に向かって、灰児が首を傾げる。
「む? 鬼神家は代々鬼憑きだから、そういう訓練もしていると由毬様から聞いているのだが! 君はなぜそうしない?」
「痛いとこばっか突いてくんじゃねーよ! このボケが! 空飛の方がまだ空気読めるぞ! いいか! 俺様の百戦獄鬼は力極振りで、昔からそれどころじゃなかったんだよ! ちきしょー!!」
「そうなのか! それは失礼した! 詫びと言ってはなんだが、今! ここで! 私の知るかぎりの鬼憑きの技について教えよう! うむ! そうした方が効率的だ!」
あっさりと、とんでもないことを言い出す灰児に輝也は額に手をやり、等依と鬼神は顔を見合わせ同時に声を上げた。
「はぁ!?」
「あ、頭沸いてんのか、てめぇ!」
「む? なにかおかしいか? すまないが私はそういうのに疎いのだ! 赦せ!」
どこまでもマイペースな灰児に、等依と鬼神は今日何度目かわからないため息を吐いた。




