揃う顔ぶれ
五奇達がルッツに連れてこられたのは、無知性妖魔達と戦った山岳地帯の更に奥だった。
なお、Eチームの教官である齋藤と祓神の汀も一緒だ。フルメンバーで修行させるつもりらしいルッツが運転する車で、山道を走る。
「おい、貴様。いくら許可が下りたとは言えだな……。責任は持てるのだろうな?」
齋藤が睨むように訊けば、ルッツが微笑みながら答えた。
「勿論だとも。僕はそういうことはできる大人なんだよ? さ、着いたよ!」
ルッツの言葉で、全員で車を降りると、意外なメンツが揃っていた。
「おぉ! 五十土か! 元気になったようだな! うむ!」
五奇に向けてそう声をかけてきたのは、灰児だった。
「愛原君!? それに、神禊君に……鬼神さんの従姉妹の……?」
「ワタシも鬼神よ? 鬼神柩」
柩に指摘され、気まずそうにする五奇の耳に聞きなれない声が響く。
「おいおいおい! そこにいるのは、等依じゃないか!? 我の前によくも現れられたな!」
その声に、珍しく心底嫌そうな顔をすると等依が答える。
「……どーもっス。両我」
「それだけか!? お前と当主の座を争い、見事に勝利したこの我を!」
「べっつにー? そもそも争った記憶ねーっしょ?」
やたらと食ってかかる両我に対し、冷めた態度で接する等依。そんな二人の空気を読まずに、柩が鬼神に声をかけた。
「乙女。百鬼と仲良くなれたそうね? 技を扱えるようにはなったのかしら?」
「お前も人の話聞いてねーよな……。まだだが、文句あんのかよ?」
こちらの二人も微妙な空気で会話をするため、五奇と空飛はどうしたものかと顔を見合わせた。すると灰児が考え深げに声を発する。
「うむ! 親族同士で会話が弾むのは良いことだな!」
そんな彼の様子に五奇と空飛はますます困惑してしまう。しばらくして、齋藤やルッツと同い年くらいの花魁のような桃色の髪の女性が五奇と空飛の横に並んできた。十代くらいの、角の生えたこちらも和装の少年を連れて。
「あらあら、若いっていいわよねぇ? 私は鬼神由毬、Aチームの教官にして、乙女の姉よぉ? よろしくねぇ?」
唐突すぎる情報に思わず声を上げる五奇と空飛の反応を見て、鬼神が珍しく焦った口調で由毬に食って掛かる。
「な、なにばらしてんだよ! 姉貴!」
「姉貴じゃあないでしょう? お姉さま、よぉ? そして、こちらにいらっしゃるのがAチームの祓神、句句能樹埜辰智主様。通称、辰智様よぉ?」
紹介された辰智は、Eチームのメンバーに次々と視線をやる。
「ふむ。素養はあるようだな……」
そう呟くと辰智はしばらく沈黙し汀の方を見て声をかけた。
「きみ、成長できそうだな?」
汀はというと少し驚いた顔をした後、
「光栄じゃの。位の高きお方に言われると」
嬉しそうに答える汀の姿を横目で見ていた齋藤が咳払いをし、
「コホン。顔合わせはもういいだろう? さっさと始めるぞ……合同訓練をな!」
はっきりと聞こえた言葉にAチームとEチーム、双方から困惑の声が上がった。




