来訪者
「ん? なんスか? みんなして見てきて……?」
訝しげに等依が訊けば、空飛が代表して声をかける。
「おかえりなさいませ、等依さん。帰宅された直後に申し訳ないのでございますが、ただいま退魔術式について話しておりまして。その、なぜ等依さんは退魔術式を使えないのでございましょうか?」
空飛を五奇と鬼神が同時に叩いた音が響き渡る。
「空飛君、オブラートって知ってる……?」
「誰がどストレートに訊けっつったよ!? ちったぁ含めや!!」
三人の様子に、なんとなく察したらしい等依が言いにくそうに頬をかきながら言葉を発した。
「あー……。まぁその。オレちゃんが退魔術式使えないのは、なんつーか……。祓力の質と肉体の器としての機能が合ってないっつーか……うーん。ようするに体質っスね! オッケー?」
あまり触れられたくない話題なのだろう。早々に切り上げると、等依は買ってきた荷物を仕舞い始めてしまった。その様子に流石の空飛も察したのか、三人はそれ以上言及することをやめた。
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その日の夜のことだった。
五奇達、Eチームの面々が住まう家に前触れもなく、その人物はやってきた。
「やぁ、Eチームの諸君。久しぶりだね? 僕さ」
そう言ってルッツは、お菓子の袋詰めを持って玄関先で立っていた。
「る、ルッツ先生!?」
驚く五奇に、ルッツはにこやかな笑みを崩すことなく、
「そんなに驚くことかい? ところで、上がってもいいかな?」
「上がる前に、なーんで来たのか、それ、教えてほしーんスけど?」
等依が鋭くそう訊けば、ルッツがあっさりと答える。
「なにって、勿論。君達の力をより引き出すためさ!」
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「んで? 俺様達の力を引き出すってのは、なんだよ?」
リビングに着くなり、乱暴にソファーに座る鬼神に、ルッツが声をかける。
「おやおや、レディがいいのかな? まぁそれよりも、だ。君達は強くなったよね? もっとも、五奇君は"土"の退魔術式を発動させただけだし、空飛君はもう一人の自分と向き合い黒曜になっても自我を失わないだけ」
そこで言葉を区切り、四人を見渡してから再び口を開いた。
「乙女君は百戦獄鬼の制御は出来たけど技を出すまでには至っておらず、等依君に至っては……」
「……オレちゃんは今んとこ、ぜんぜーんっスねー」
等依がそうあっさりと認めると、ルッツは肩を竦める。すると、鬼神がワナワナと震えながらルッツに詰めよる。
「俺様を乙女って呼ぶんじゃねーよ!!」
「そうは言ってもねぇ、僕は君以外の鬼神を二人知っているからねぇ。君だけを鬼神一族の代表みたいに、呼ぶわけにはいかないだろう?」
鬼神が珍しく沈黙した。それを同意と受け取ったのか、ルッツはこう告げた。
「だから、君達には……修行をしてもうらおうかなぁと思っているのさ! 怪我も癒えているわけだしね!」
唐突すぎる提案に、四人は一斉に驚きの声をあげた。




