疑問
あれから一週間が経った。
その間、Eチームのメンバーは五奇と空飛が療養のため家から出られず、等依と鬼神が交代で買い出しに出る日々が続いていた。
「ホント、申し訳ないな……」
そう五奇が呟けば、隣でソファーに座っていた鬼神が口を開く。
「そう思うんなら、早く治せってんだよ。バーカ」
無愛想に、だけどどこか優しい声色に五奇は困惑してしまう。
(最近、おかしい……。俺のこと嫌いなんじゃなかったのか? なのに、妙に優しくないか?)
「どうした? 五奇?」
(しかも名前呼びまでしてくるし……。いや、嬉しいけど……! けど!)
更に困惑を深めた五奇は、あえて話を逸らすことにした。
「そ、そういえばさ! 等依先輩が退魔術式を使えないのは知ってるけど、鬼神さんや空飛君も使ってないのはなんでなんだ?」
そう話を振れば鬼神はポカンとし、ソファーから少し離れた和室で寝転んでいた空飛が顔を上げた。
「はぁ? てめぇそんなことも知らずに、退魔術式なんて使ってたのかよ?」
「うっ……仕方ないだろ? 知らないんだからさ!」
五奇が反論すると、空飛も会話に参加する。
「そう言われてみれば、不思議でございますね? あ、僕は退魔術式を使わないのではなく、使えないのでございます。はい。その、半妖は妖力を使用するので、祓力とは相性が悪いからでございます」
「えっそうなのか!?」
五奇が驚いて言葉を返せば、鬼神が続ける。
「本当に知らねぇのな……。てめぇの師匠は一体何を教えてたんだよ? まぁいい。俺様は、祓力こそあるがその全てを百戦獄鬼に回してるから、退魔術式なんざに回す余裕がねぇんだよ」
二人の言葉で、このチームで退魔術式を使えるのが自分だけだと五奇は理解した。同時に新たな疑問が湧き上がる。
「あれ、じゃあ……なんで等依先輩は退魔術式を使えないんだろう?」
五奇の疑問に答えられる者など誰もいなかった。全員で首を傾げる。しばらくして鬼神が訝しげな声をあげた。
「つっても、アイツ蒼主院だろ? 名家のボンボンのわりには、確かにそんな雰囲気ねぇな」
「えっ? 蒼主院ってそんなに……? あ、そういえば確か蒼主院流退魔術式が正式名称だから……あ。等依先輩ってその血筋!?」
ようやくそのことに気づいた五奇に、鬼神が思わずつっこみを入れた。
「五奇って、けっこう抜けてるよな……。蒼主院姓なんだから、そこの一族に決まってんだろーが」
「うっ……さすがに返す言葉がない……」
五奇と鬼神のやりとりを見ていた空飛が、話を戻す。
「ですが、確かに不思議でございますね? 僕は蒼主院家に詳しくはないのでございますが……はい」
三人で頭にはてなマークを浮かべていた時だった。タイミング良いか悪いか、玄関が開き等依が帰宅した気配がした。




