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落としどころ

 "黒曜(こくよう)"の言葉にサーシャが初めて動揺を見せた。そのスキを突いて、動く。


「はっ!」


「平穏を望むなら、くれてやろう。(わし)の……僕が()()()()()()()()()!」


 "彼"はサーシャの首筋に思い切り噛みついた。驚きのあまり動けないサーシャの身体を(つた)で固定する。数分後、黒曜としての"力"ごとサーシャから"彼"は離れた。


「うっ……うぅ……力が! 力が全て持っていかれるだなんて……! いいさ、いいさいいさいいさ! 殺せよ! 殺しておくれよ!」


 わめき散らすと、サーシャは地面に大の字で寝転がる。その様子を見た"黒曜"は、空飛へと戻りながら訪ねる。


「忘れたのか? なぜ、黒曜が妖魔としての生をやめ、転生したのかを。記憶があるのでしたら、おわかりになるでしょう。()()()()()()()()()()()()()()?」


 それは、黒曜なりに選んだ愛の形だ。力が強すぎて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そのことを理解したのか、サーシャは涙を流し、訴える。


「だからこそさ! だからこそ……愛してくれない人間共が許せなかった! 僕はこんなにも愛しているというのに! 報われない! 愛されない! それが辛くて、恨めしくて、悲しくて! だから!」


「だからと言って、殺して良い理由にはならないのでございますよ。……僕は片割れを愛しましょう。魂を別けた家族としてね?」


 空飛の言葉に、サーシャが目を見開いた。


「元が同じなのでございますから、家族と言っても差し支えはないでございましょう? まぁもちろん、罪は償っていただきたくぞんじますが」


 どこまでも優しい声色に、サーシャは今度は別の涙を流す。その様子を見て、空飛はサーシャを強引に抱き上げた。力を奪われたことで、物理的にサーシャが動けないことに気づいたからだ。

 突然のことに、激しく動揺するとサーシャは叫ぶ。


「な、な、な!? 片割れだからって、何してもいいとか思ってるわけ!?」


「えっ? ダメなのでございますか? っていうか、物凄く軽いでございますね……まるで女性のよう……」


「えっ……なんで女ってわかったの……?」


 空飛にとって、今日何度目かわからない衝撃が走った。


 ****


 大人しくトクタイの隊員達に捕まるサーシャを見送りながら、空飛と五奇(いつき)は怪我の手当を受けていた。


「さすがの私も、この展開は予想できなかったぞ? まぁ及第点をやろう。貴様らにしてはだがな……」


 駆けつけた齋藤にそう声をかけられ、どんな顔をしていいのかわからなくなる四人に齋藤は続ける。


「……とにかく! 被害は深刻だ。立て直しを計るためにも、怪我や祓力(ふつりょく)の回復のためにも、貴様ら全員休暇とする! いいか! しっかり休め! や・す・め・よ!」


 鬼の形相で言われた四人は、無言でうなずいた。その様子を確認した齋藤は、


「よし! では全員、家まで送ってやる! 五十土(いかづち)五奇! 病院がこの有り様なのでな、自宅療養とする! 以上! 行くぞ!」


 こうして四人は休暇という名の療養を命じられたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全員とも消耗しちゃったよ...そしてヤンデレの気配が見えるサーシャと、天然が過ぎる空飛くん...黒曜、君の魂キャラ濃すぎだね??
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